伝えたいことと伝わること
銀行口座決済の当たり前を変えるPay by BANKを絶賛温め中、BANKEYの阪本です。今回はプレゼンテーションの話。
序章:予備校講師のアルバイト時代
20年ほど前、筆者がまだ大学生の頃の話です(というかもう20年も前になるのね)。身一つで上京してきた筆者は如何に効率良く生活の糧を得るかを考え時給が最も高い大学受験用の予備校の集団授業の講師のアルバイトに辿り着きました。
担当科目は数学と化学。いずれも大学受験時の得意科目だったこともあり受験テクニックも含めてバッチリだろうと思っていました。
が、甘かった。
予備校の授業では大学受験に合格したいというゴールは共有されていますが、当然ながら志望校も違えば合格のために想定している道筋も異なる中で、カリキュラムに沿ってこちらが伝えたいことと生徒の皆さんが学びたいこと、知りたいこと、身につけたいこととの間のギャップが生じます。
幸いにも4年間、今も一線で活躍されている先輩の先生方の方法論をパクリまくる吸収することによって改善は進めていくことが出来ました(合格率100%を達成できなかったことは心残り)
銀行の中のコミュニケーション
さて、社会人になりまして、銀行で働くことになりました。銀行はお客さまへの説明資料は基本的に本部が定めてチェックした資料を加工することなく使うことが必要です。そして何ならプロダクトに差はなくて関係性とプライシング(手数料、金利)で決まったりする世界だったりします。
一方で半沢直樹をご覧になった方は薄々感じているかもしれませんが、とにもかくにも社内コミュニケーションが千差万別非常に難しかったりします。
例えば、最初にお仕えした支店長は形式が整った文章をご提示して(1秒で400文字くらい瞬間で読まれて)数秒後に「で、結論はなんだ?」という問いに答えるというスタイルでした。このときに伝えたいことをもごもごお話すると「お前の話は分からん!やり直し!」と千本ノックが繰り返されます。そして最初の結論を乗り越えると細部のQ&Aがスタートし「〜だと思います」と答えてしまうと「思うではなく実際はどうなんだ」といった追及がスタートします。
この他色々なパターンがありましたが共通して言えることは、まず結論(自分はどうしたいと考えているのか、どう判断するのか)とファクトの積み上げが好まれる傾向がありました。ただ、この「ファクト」が厄介で、本当のファクトもあれば、聞き手が聞きたい「ファクト」もありこの使い分けを出来るかどうかを結構見られていたように思います。
スタートアップとプレゼンテーション
そして更に時は流れて。スタートアップを経営することになりました。カネはない、ヒトもまだいない、モノ(プロダクト)はこれから。あるのはパッションだけ。ひたすらプレゼンテーションで資金調達して採用してプロダクトを作り上げるのです。
さて、1社目もBANKEYもフィンテックスタートアップです。フィンテックの領域は往々にして分かりづらい。なぜなら非常に身近であり過ぎるが故に普段意識されない、ぼやっとは雰囲気は分かるものの、裏側の仕組みや法律、規制が絡んできた瞬間にブラックボックス化してしまう事業だったりします。
予備校講師の経験、銀行内で渡り歩いた経験から割と自信満々にプレゼン資料を用意してコミュニケーションを重ねて来ました。しかし結果として、以下のような反応をいただくことが非常に多かったです(以下は投資家からのフィードバック)。
検討しますので資料送ってください(以降連絡なし)
検討しましたが事業の将来性に確証を持てないので見送ります
情報量が多すぎ
B2Bなの?B2Cなの?
(B2Bなのに)僕は使わないなぁ…
事業の目の付け所は多分良いけどプレゼンが全然ダメ
などなど。半年間で資金調達のための投資家面談数は100件を超えるも投資はなかなか決まらない。
連続して「トラクション見たいんだよねー」と投資家から言われた日には帰り道にAmazonで「とらクッション」買ったりしてました。
ただ、「事業の目の付け所は良い」という言葉と1時間のミーティングの最後の5分は大体盛り上がるという傾向(55分は理解のための時間に使われてしまう)から、とにもかくにも「プレゼン」の問題だと理解して言い聞かせることにしました。
ピッチイベントエントリーのススメ
世は大スタートアップ時代でしてほぼ毎月ピッチイベントが開催されたりしています。基本的に表に出ることが得意ではないので一定の距離を置くようにしていたのですが、背に腹は変えられません。とにかくエントリーできるものにはエントリーするの精神で8月後半からエントリーしてはピッチを作り直しを繰り返してきました。
色々なイベントがありまして、一発勝負のイベントもあれば、複数回のブラッシュアップで実質的にアクセラレーションプログラム的になっているイベントもあります。また、既存の投資家や社員の皆さんにも折に触れ見てもらいながら漸く少し「分かる」プレゼンテーションになってきたかなと。伝えたいことではなく伝わることから考えることが何よりも重要と実感する今日このごろ。
というわけで1つ大きめのイベントの採択結果を待ちながらこの記事を書いています。結果は如何に。ではまた。