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Wise全銀システムに参加するってよ

銀行口座決済の当たり前を変えるPay By Bankを磨いている、BANKEYの阪本です。今回は少し前に出た全銀システムに関するお話。


序章:全銀システムと全銀ネット

銀行界隈のニュースを見ている人なら一度は目にしたことのある全銀システムと全銀ネット。違いってわかりますか?
全銀ネットは一般社団法人全国銀行資金決済ネットワークの略称で、この全銀ネットが運営しているシステムが全国銀行データ通信システム、通称全銀システムです。
ところで、ネットワークという言葉を日本語に訳せますか?
直訳するとネット=網、ワーク=仕事、これをいけてる日本語にすると一網打尽。
序章終わり。

本題:Wiseが全銀システムに参加します

さて、2024年の10月17日にグローバル国際決済会社であるWise(旧Transfer Wise、日本法人はワイズ・ペイメント・ジャパン)が日本で全銀システムに参加するというプレスリリースが出ました。

遡ること2022年10月に全銀ネット(一般社団法人)は政治家からの強烈な圧力に屈して銀行と同等の要件を充足した資金移動業者の全銀システムへの参加を許容することを決定しました。その第1号です。

全銀システムに参加するって?

全銀システムは「全国銀行データ通信システム」です、やってることはデータ通信だけだったりします。
では、一体何のデータを通信しているかと言えば「決済」です。

例えば、三菱UFJ銀行に口座を持っている太郎さんが三井住友銀行に口座があるニコニコハウジングという会社に10万円の振込をするとします。

この際の手順は以下の通りです(なんかこの件前も書いたな)。
(1)太郎さんは三菱UFJ銀行に10万円の振込を依頼する
(2)三菱UFJ銀行は振込を受付し太郎さんの口座から10万円を確保(引き落とす)
(3)三菱UFJ銀行は全銀システムに対して太郎さんからの依頼を受けて三井住友銀行にあるニコニコハウジングの口座に10万円振り込みするというデータを渡す
(4)全銀システムを通じて三井住友銀行は振込依頼データを受け取る
(5)三井住友銀行はニコニコハウジングの口座に10万円を入金する(おカネはまだ、三菱UFJ銀行にある、強いて言うなら三菱UFJ銀行+10の預かり、三井住友銀行△10の立替)
(6)カットオフ後、全銀システムに溜まった貸し借りを日銀ネットで清算する。日銀ネット(これは「日本銀行金融ネットワークシステム」というシステムの名前)は三菱UFJ銀行と三井住友銀行が日銀に開設した当座預金口座間で資金の貸借を解消します(今回のケースだと三菱UFJの口座から三井住友の口座に10資金を移動してプラマイゼロにします)

全銀システムは(3)(4)で銀行間のデータ通信を行い、(6)で日銀ネットとの通信を行う銀行間貸借を記帳する仕組みと言えそうです。全銀システムに参加するというのは銀行間貸借と日銀での清算の枠組みに参加するということで良さそうです。

具体的にどうするの?

大きく2つの参加の仕方があると言われています。直接方式と間接方式。直接方式は日銀に当座預金を開設して自ら資金を預かり銀行間貸借に参加するやりかた。間接方式は銀行間の貸借には直接参加しながら、資金清算の部分を既存の銀行に委託するやり方です(おなじみの?「ことら」はこちらの間接方式)。
資金移動業(ウォレット)に預けているおカネは通常、資金移動業者名義の銀行口座に入金されます、Wise(日本)で言えばGMOあおぞらネット銀行に開設されたWise名義の口座に現状は資金が保管されています(資金移動業の供託義務とかの話は一旦今回は横に置いておきます)。Wiseが日銀に当座預金を開設するのか、間接方式でやるのかまだ明らかになっていませんがいずれかの形で参加することになります。

もし直接方式で参加するならば

思考実験として仮にWiseが直接方式すなわち日銀に当座預金を開設して全銀システムに参加したと仮定してみます。
これが何を意味するかというと資金移動業者であるWiseに預けた(チャージした)おカネを現在は銀行が保管管理しているところ、資金移動業者が自ら保管管理(日銀は一応預かってくれる)するということになります。となると資金移動業者であるWiseも預金を預かる銀行同等の体制やリスク管理が必要となることは明らかでしょう。一方でそこまでやれば、資金移動業者は銀行の独占業務であった為替業務を実行できるだけでなく、100万円以下の預金を預かることができる事業者になるということを意味しています。言い換えると資金移動業者のスモール銀行化です。
しかし、体制整備のコストに対して見返りがどうも合いそうにありません。おそらく間接方式での参加となると思われます。

何が良いの?

例えば三菱UFJ銀行に預けてある資金を海外送金しようとしたときに、今はWise名義のGMOあおぞらネット銀行にある口座に振込します。そこで銀行に手数料を取られるわけですが、今後は直接Wiseのアカウントに振込することができるようになります(清算部分は銀行に委託するとしても)。ダイレクト入金されるので手続きが早く、手数料が安くなるという訳です。
ただチャージに関しては結局資金の在処から操作するため大きな変更はなさそう。一方で被仕向は強烈に効率化しそうです。ではまた。

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