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【異世界軍記物語】総括のコンジェルトン

第一部 帝国の分裂

第八章 邪悪なる前奏曲プレリュード

その日、パルムスは皇帝エリチャルドスによって玉座の前に跪かされていた。

「パルムスよ、なぜお前がここに呼ばれているか、承知しているか」

「は、はあ……」

「我が兄グレイムス、先帝リヴィアタイザーの暗殺、財務卿ウェド・カークの出奔、愚弟にして謀反人ガルフリードによる宮殿内での放火、帝都破壊……いずれもお前の目の前で起きたことだ。違うか?」

「仰せの通りでございます……」

「お前はその時、何をしていたのだ?ただ事の成り行きをボケっと見ていたのか?お前の対応は常に後手後手ではないか。帝国の歴史の汚点ともいうべき事態を前に、お前は何一つやるべきことを果たせていないではないか。どうだ?反論があるなら述べてみよ」

「いえ…とんでもございません……」

「やれ魔王を倒した勇者パーティーの一員ということで取り立ててみたものの、こればかりは父上の見込み違いだったとしか言いようがないな……」

「……期待に沿えず、申し訳ございません……」

「もうよい!お前は今日を以て宮殿での任を解く。爵位と禄はそのままにしてやろう。どうだ、オリファルオンの地にでも戻り、隠居生活でも始めたらよかろう?ただし、くれぐれも以前のような愚連隊の生活に戻るではないぞ。それこそ恥晒しも良いところだ……」

「ははーっ」

パルムスはその場にいた宦官に腕章を手渡すと、大内裏を後にしようとした。

「おい、ちょっと待てや」
パルムスにそう呼びかけたのはエリチャルドス四天王の一人、黒衣のゴッツであった。

「隠居暮らしにその仰々しい剣は必要あるめぇ。ここに置いてけや……」

「承知した……」

パルムスはそう言うと、腰に差した剣をその場に置いた。

「フン、ったく……」
ゴッツは面倒くさそうに巨体を折り曲げ、その剣を拾おうとする。

「んっ…?」

ゴッツが握ろうとした瞬間、剣はするりとその手をすり抜けて行ってしまう。

「くそッ、なんだこれは!」

「ゴッツどの、失礼いたした。その剣は宝具の一つ、バスタルドゥス・ブレード。どうやら宝具は貴殿を持ち主として認めなかったらしい」

パルムスはバスタルドゥス・ブレードを拾い上げ、腰に差し直すとその場を後にした。

「クソ!あの野郎!どこまでも舐め腐りやがって!!」

「フッ、まあ良いではないかゴッツよ。邪魔な虫ケラはいなくなった。これで宮殿内はお前ら四天王の思うがままよ。魔法の剣だかなんだか知らんが、そんなものが一つ二つあったところで、もはや大勢は覆らぬ……」

「なるほど、これで我らも、より一層陛下の覇業のため邁進できますな」

「それにしても、四天王といえばラウィネとカルネの姿が見当たらんが……」

「それなのですが、陛下……」
大内裏の奥、隠し扉からレムロスが姿を表した。

「あの二人、どうやら昨日のおやつの取り合いで喧嘩をしたらしくて…お互いもう二度と顔も見たくないと……特にカルネは、今日中に荷物をまとめて都を出ていくと言っています」

「チッ!あいつら……この戦力が乏しい時に仲間割れなどしている場合か……」
ゴッツは愚痴をこぼす。

「フム、確かに我が方は今、軍馬や戦闘車両を焼かれ、衛兵たちは多数殺され戦力に乏しいな……だが…」

エリチャルドスには何か腹案があるようだった。しかし、レムロスとゴッツはそれを掴みかね、お互いの顔を見合わせるばかりであった。

「カルネはまだ都を出ていないのだな?」

「はあ……」

「よろしい!ならばレムロスよ、至急カルネをこの場に呼び出すのだ!彼女にはワシの命で直ちに都を発ってもらう!」

「ははっ!」

「ククク……確かに戦力は不足しておる。だがならばこそ、この都に四天王を四人とも温存しておく道理はあるまい……!」

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