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【異世界軍記物語】総括のコンジェルトン

第一部 帝国の分裂

第六章 勇者の弟

「夢?」

「その夢に、自然と生命の神マーヴァが出てきたのだ」

「マーヴァ様が!?一体どんなお姿をしていたの?」

「それはゾグラフにしかわからないのだ。マーヴァはゾグラフにあるお告げをしたとされているのだ。そしてゾグラフはそれに従い、次の日の夜中、こっそりテントを抜け出したのだ」

ずんだもんは話を続けた。

「それから10日ほど、砂漠を彷徨い続けたのだ。食べ物も水も底を尽き、ゾグラフの命も尽きようとしていた。そんな時、彼はオアシスと、その中に遺跡を見つけたのだ。それは夢の中のお告げとそっくりだったのだ」

「ゾグラフは遺跡の奥へ奥へと進んでいったのだ。既に夢の中で見た光景だったので、迷うことはなかったのだ。そしてその最深部の宝箱の中にウルティマ・バングルを見つけたのだ!」

「ウルティマ・バングル?」

「宝具の中の宝具、最強の宝具と言われるアイテムなのだ!一見普通の腕輪だけど、通常宝具としての効果の他に、装着者デュナミストの意志に応じてどんな武器にも防具にも、自在に形態を変化させることができるのだ!」

「……ウルティマ・バングルが最強宝具と言われる理由は、それだけではないですわ」

四国めたんが口を挟んだ。

「ウルティマ・バングルの最大の特徴、それは冥界から巨獣マンモゾーアを召喚し、最強魔法メテオ・ストライクを発動させることができるということよ」

「マンモゾーア…メテオストライク……それって一体どんな魔法なの?」

「マンモゾーアは物質界に出現する際、次元と次元に裂け目を作り出す。メテオ・ストライクは冥界に漂う無数の霊魂が裂け目に吸い込まれる時、それを隕石に変換し地上に降り注がせると言われているわ。でも、それを見た者は誰もいない……」

「帝国正規軍が反乱軍を鎮圧できない理由はこのウルティマ・バングルの力が大きいと言われていますわ。現にゾグラフはその後自分のいたキャンプに舞い戻り、そこに駐屯していた一個中隊を一人で全滅させた……」

「……!!パパたち、そんな強い相手と戦っていたの!?」

「そんなゾグラフの強さを聞きつけた人々は次々にその軍門に降っていったのだ!そして今の反乱軍ができあがり、今ではミレーア公国を始め各地を制圧し独立国のように振る舞っているのだ!」

―――数年後。

ワタシは16歳になっていた。前の世界で死んだのが15歳だったから、もう今の世界の方が長い。

ある日、いつものように目を覚ましたワタシは、城の中が妙に騒々しいことに気付いた。

「ねえ、一体どうしたの?」

「アリシャ様、お喜び下さい!ゾグラフが、ゾグラフがついに倒されたのです!東の正帝コーセウス陛下に仕えるオルダ卿の発案した”離間の計”により、内通者を使ってゾグラフを暗殺したのです!」

「まさか!?あのゾグラフを?」

アタシがあっけにとられていると、またも周囲が騒々しくなった。

「大変ですわ!皇帝陛下とフェリオ様が喧嘩を!」

皇帝の間では異母姉であるフェリオと当時副帝だったパパが激しく言い争っていた。

「行かせて下さい!お父様!!」

「駄目じゃフェリオ!」

「私、もう何年も宮殿の外に出ていないんです!私も伯父様と一緒にゾグラフの首を見たいのです!!」

「宮殿の外に出ていないだと!?ワシが知らぬとでも思っているのか?お前が城下で馬にも乗れぬ癖に”騎士”を名乗るうつけ者と逢瀬を重ねているのを!」

「お父様!ヒルメスのことを悪くいうのはおやめ下さい!それにそれは今の話とは関係ありませんわ!私は皇族の一人として帝都アレニアの祝賀会に参加したいのです!」

「馬鹿者!あれは祝賀会などではない。内通者を出迎える道中で、奴等を皆殺しにし、ウルティマ・バングルを奪うための策なのだ!」

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