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【異世界軍記物語】総括のコンジェルトン

第一部 帝国の分裂

第七章 最終決戦 / 闇からの招待

ワタシとレムロスの再会から、早一年が経とうとしていた。その間、帝都アレニアは三度魔王軍の攻撃を受け、レムロスたち四天王はそれを三度退けた。それでも、攻撃を受けるたびに都は荒廃していった。

魔王軍との戦いでワタシが一番困ったのは、大陸各地からの食料の供給が滞るようになったということだ。これまで帝都には陸路、海路で毎日のようにたくさんの物資が供給されていた。魔王軍の出現により、それらは壊滅的なダメージを受けたのだ。

それにより、城内はもちろん、宮殿内でも作物の栽培や牧畜などが行われるようになった。

千年以上にわたって絢爛な姿を保ち続けた宮殿は、いつしか廊下は土埃だらけになり、家畜の糞を踏まずに移動することも困難な有り様となっていった。

帝国各地でも諸侯の軍勢が魔王軍と一進一退の攻防を繰り広げていた、が、次第にその戦力差は埋めがたいものとなっていった。

それでも、人々は希望を失うことはなかった。ヒルメス率いる勇者パーティーは、どこからともなく表れては魔王軍の拠点を撃破し、そしてまた何処へと去っていった。しかしそうした気まぐれな吉報により、人々は心の松明を絶やさずにいることができたのだ。

ある時、ヒルメスは「巨人の洞窟」の最深部にレイガルの剣を見つけ、剣はその持ち主デュナミストに彼自身を選んだ。その報が大陸を駆け巡った時、人々の歓喜はより一層のものとなった。

ワタシはその間、度々レムロスと密会を重ね、そして身体を重ね合った。その時ヒルメスの話題を出すことはなかった。レムロスは少年時代、地質学者を夢見ていた。が、ヒルメスが引き起こすたくさんのトラブルにより、勉学の道を諦め軍に進んだのだ。

自分の人生を破壊した男が、今まさに世界を救おうとしている。そのことをレムロスはどう受け止めているのか、ワタシには皆目見当がつかなかった。そしてただ、ワタシは彼がもたらす快楽に浸り続けた。

――ある日、都の城門を一人の男が叩いた。それは駿馬を駆る伝令兵であった。

「皇女フェリオ奪還さる」

ついにヒルメスたち勇者一行は、姉フェリオを取り戻したのだ。しかしそれは、戦いの終わりを意味しなかった。

死霊島にあるゾグラフの魔王城を急襲したヒルメスたち勇者パーティーは、龍の神官ヴァドルスが自らの寿命を引き換えに発動した龍語魔法「リターンドラゴン」によりゾグラフを討ち取った。

しかしゾグラフは終末神ハーディスの力を以て自らをアンデッド化し、かつて大魔法文明時代の中心地であったフォーオン遺跡の遥か天空に浮かぶ城へと逃げ延びたのだ。そしてそこで、最強魔法メテオストライクを発動させようとしているという。

ゾグラフは、自らの身をも生贄に、この世界そのものを破滅させようとしている。

一方ヒルメスは、ゾグラフ戦においてレイガルの剣をその魔晶石の鞘から抜くことができなかった。もし最後の戦いでその剣を抜くことができれば勇者たちに勝機はあるだろう。でも、それができなかったときには……。

龍語魔法「リターンドラゴン」により完全なるドラゴンの姿へと変身したヴァドルスは、その残り少ない寿命を使い、勇者パーティーたちを天空城へと運ばんとしていた。

リターンドラゴンを使用した術者は、その寿命が尽きた時、卵のような形のミイラに変化するという。そしてその卵が孵化する時、龍族の中でも最強と言われる天空龍が姿を表す。

「それで、フェリオは、フェリオはどうなったのじゃ!?」

パパ、ファルムスは疲労困憊の伝令兵に問うた。

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