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【異世界軍記物語】総括のコンジェルトン

第一部 帝国の分裂

第七章 最終決戦 / 闇からの招待

「フェリオ様は…フェリオ様は神殿の巫女パイティアとして勇者たちの戦いを見届け、必勝を祈願すると……」

「何?つまり天空城に……フェリオめ、この期に及んで巫女としての役目を全うすると言い出すとは……ゲフッ!ゲフッ!」

「大丈夫ですか、陛下。ここのところ咳をなさることが多いような……」

身を案じ、駆け寄ってくる宦官たちをパパは静止した。

「心配するな。大したことはない…季節の変わり目に体調を崩しただけじゃ……フェリオよ、お前の覚悟はよく分かった……」

パパはそう言うと、一呼吸間をおいて宣言した。

「皆の者よく聞け!フェリオが神殿の巫女パイティアとしてその身を捧げる以上、ワシもここで座して待つわけにはいかん!これより帝国最高神祇職として、我ファルムス・アレニムス・チルクンダトゥスは”入水の行”に入る!」

「お父様、お止めになってください!今のその体でそんなことをすれば何が起きるかわかりませんわ!」

「言うなアリシャよ!どの道我らの祈願が通じなければ世界は終わる。そうなれば…ゲホォッ、ゲホォ!」

「お父様!」

「そうなれば……アリシャよ、もしフェリオが帰ってこなければ、お前が神殿の巫女パイティアに就任するのだ……世界はほどなく終末神ハーディスの元に落ちるだろう。しかしそれは新たなる始まりでもあるのだ。始原神の五体と心臓から生まれし六正神、即ちファミス、マーヴァ、マイミー、ミャ・ダ、ラーバ、ファーシスがこの物質界に再臨される。そして終末神と六正神との間で戦いになり、そこから飛び散った血と肉片により、世界は再生される……それを見届けるのが、お前の役目じゃ……」

「私が、神殿の巫女パイティアに……」

「ゲフッゲフッ、し、私情を挟むな……アリシャよ、我ら帝室は、あくまで始原神、五正神に仕える身である。そのことを忘れるではない……」

「お父様……」

「脱衣!」

宦官たちはすぐさまパパの衣類を剥ぎ取った。

「ちょんわー、ちょんわー、クエッ!クエッ!」

「クエッ!クエッ!クエッ!クエッ!クエーッ!」

パパは完全なるトランス状態に入り、全裸で踊りながら神殿のプールへと向かっていった。このまま最低限の息継ぎを除き水中で坐禅を組み、決着まで飲まず食わずで過ごすのだ。

パパが渡り廊下を走り去っていく後ろ姿を見送った時、ワタシはバルコニーにレムロスがいるのを見つけた。彼は空を見上げていた。

「レムロス!」

「アリシャ様!御覧ください!空が!」

空は綺麗な赤紫色の夕日に染まっていた。レムロスの指差す方角に目を凝らすと、ワタシはようやく異変に気付いた。

「空が…歪んでいる……もしかして……」

「ゾグラフがメテオストライクを発動させ、冥界からマンモゾーアを呼び出しつつあるのでしょう……マンモゾーアは自らの周囲に亜空間メタフィールドの巣を作り出し、そこから次元の障壁を突破し、物質界にやってくる」

「レムロス……」

「アリシャ様、兄は、ヒルメスは勝てるでしょうか……?」

「わからない……でもアナタは、お兄さんに勝って欲しいと思っているのですか?それとも……」

「俺自身わからないんです…兄が勝利した時……。アリシャ様、唐突ですが”黒魔術衆”という存在を知っていますか?」

「え、ええ……レムロス、あなたまさか……!黒魔術衆を使って、兄を……!」

――そんな二人のやり取りを、物陰からこっそり覗き見る者がいた。

「クックックッ、ガキどもめ、いずれ我ら教団の力を借りるときが来るだろう…。その時を、楽しみにしておくぞ……」

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