坂道を歩く
陽の傾きを感じるのは、いつ頃なのだろうか。
ピーク?
折り返し地点?
多くは、たぶん、下っているときに気づくのだろう。
ああ、もう、陽は傾いているんだな、と。
休日の夕方の、混雑した商店街で、少し前を歩く彼女の背中を見ながら、ふと、そんなことを思う。
この最愛の人との下り坂は、幸せな坂なのだろうか。
「ねぇね」
「ん?」
「ごはん、炊いてきちゃったけどさ」
「うん。」
「この先のラーメン屋さん、行きたくない?」
同じことを考えていたよ。
そういうところなんだよね。
上りでも下りでも、一緒に坂を歩きたい。
「いいんじゃない?ご飯は冷凍しておこうよ」
「やったぁ!じゃぁ、私はタンメン!」
「え。いつもの辛味噌じゃなく?」
「今日はタンメン!」
「じゃぁ、俺もタンメンにしようかな」
「えー。ダメ。辛味噌にして!一口ちょうだい!」
あれ?大丈夫かな、この坂道。小石多めかも。