【(ニュー)(ネク)ロマンサー】
Knock,knock
誰だ?
「検察だ!キジマ・オト、お前に令状が出ている。」
来たか!カメラモニターを起動。機動検察官1人、執行官2人、地方兵が5人か。執行官と地方兵は屍機術師だろう。ドローンの向こうには裁判官。
「1分以内に出て来い!」
出て行くものか。準備していたバックパックに加えて詰めるは朝飯のサンドイッチ。2つ並んだアタッシェケースのうち片方を開け、屍機体を起動! 部屋に充満する腐乱臭と光糸。息苦しい。迫り上がる胃液を飲み下す。
「屍力の解放を確認。屍機訴法70条1条4号の『未認可術師が屍機術を使用すると疑うに足りる相当な理由があるとき。』に該当するものと主張し、屍機体使用の許可令状発付を求める。機動検察官 タツミ・アガタ」
「主張を認める。簡易発付。西都特別裁判所裁判官 イヅツシ・ミチ」
屍機体の首の開口部に指を突っ込み、神経ケーブルを引き摺り出す。グチョグチョだ。ケーブルの先端を僕の首の生体デバイス用マルチジャックへ挿入。身体中に流れる電気信号に思わずエレクトする僕自身。二重になった視界。「頼むよ、アンジェ」
アンジェの口角が歪む。彼女の眼球はもうないが、これは笑顔。僕も合わせて二ヤリと笑う。瞬間、飛び上がる。アンジェの手が触れた天井が音もなく割れ、ネオンに染まる夜空が見える。
「上だ、追え!」
一階のドアが破られたようだが、僕とアンジェにはもう追いつけない。密集する屋根を飛ぶように駆ける。
衝撃!
さらに衝撃!
??? 地面に叩き落とされた? 遅れて全身に走る痛み!
「っっ!!!」
「落ち着いて。」
声のする方を見る。屍機体5体と…屍機術師1人? 全ての生体ケーブルが仕立ての良いスーツを着た男につながっている。1人で5体を操作しているのか?
「私は、ヤシマ・シキ。弁護士です。貴方を弁護しに来ました。全て私に任せれば安心です。報酬としてそのアタッシェケースの中の『ドロシー』をいただきますがね」
【続く】
※逆噴射小説大賞2020応募作品
※トップ画は「フリー写真素材ぱくたそ」からお借りしています。
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