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bandshijin Weekly #12 電車、高速道路、ジブリ、短調、甲本ヒロト…


これは私が運営している音楽ブログ『∴bandshijin∵』のここ1週間をざっくりふりかえる記事。

11月22日(日)『となりのトトロ』エンディングテーマ 不思議の森への通行手形

23(月)およげ!たいやきくん 心底、海底、鉄板の底

24(火)学園天国 フィンガー5 心象と現実の僕

25(水)THE BLUE HEARTS 情熱の薔薇 キャッチャーミットで掴んだ響き

26(木)PUFFY『MOTHER』平坦な日常と達観

27(金)深夜高速 フラワーカンパニーズ 平行線の5度

28(土)くるり『赤い電車』 ドレミファインバータの息吹

心に残留する短調の音楽のことばかり考えていた。歌本をめくったら『君をのせて』に出会った。アニメ映画『天空の城ラピュタ』の主題歌。というのが先日の話で、この日はそのジブリバトンを受けて『となりのトトロ』に思いをめぐらせた。同名のアニメ映画のエンディング・テーマ。

誰もが知り過ぎているし、「トトロ」という固有名詞の存在感が強過ぎて、これまでなんとなく取り上げられないでいた。ジブリバトンが生じたことでそれが出来た。機は熟した。おおげさか。

♪トトロ トトロ」のフレーズがなにせ強い(2回目)。トトロというネーミングは、宮崎駿氏の知人の少女が「所沢」をきちんと発音できずに「ととろざわ」と聴こえたことに由来するという説がある。所沢は、作中の舞台のモデルになった実際の土地のひとつである。

井上あずみのボーカルが気持ちいい。『さんぽ』『君をのせて』ともに彼女の歌だ。

ジブリバトンを誰かに渡して、短調ブーム(私の関心事)に戻る。『およげ!たいやきくん』。日本で最も売れたシングルだという。歌い手の子門真人は「歩合がいいか固定がいいか」訊かれて、「固定を選んだ」というこの曲の仕事料金の受け取り方についてのエピソードはあまりにも有名ではないか(違うか)。歩合を選んでいたら相当、なんてもんじゃないくらい身入りがあったろうに…? ということを思わせるエピソードなのだろうけれど、そんなことどうでもいいくらいに子門真人の歌は最高でかっこいい。揺るぎなく、太く、暖かく。私は自分でもこの曲を歌うことにチャレンジしてみたけれど、案外難しいのだ。キーも高い。原曲と同じキーでの歌唱には技術と、その人本来の声域との相性の良さの両方を要すると思う。

先日、「鬼滅」の映画を観てきた。本編上映前のCMで『ジョゼと虎と魚たち』アニメ映画版を知った。私の中で「ジョゼ」といったら、犬童一心監督、妻夫木聡と池脇千鶴ほかが出演した実写映画。そのつながりで、妻夫木聡が出演した私のフェイバリットムービーのひとつ『ウォーターボーイズ』を思い出した。その映画のハイライト、登場人物の高校生たちがシンクロナイズドスイミングの演技を披露するシーンで使われている曲のひとつがフィンガー5の『学園天国』。

♪ヘイヘイヘイヘイヘイ」というコールアンドレスポンスをあなたも思い出すのではないか。なかなかロックンロールしていて楽しい曲である。フィンガー5は本当の兄妹5人組だ(ジャクソン5を意識したともいう)。生バンドのサウンドがかっこいい。中心的なボーカル、玉元晃の歌がたいしたもの。声変わり前の少年なのにうまい。よくコントロールされている。

歌詞をあらためて味わうと、私にはなぜか、あまり自己表現にどん欲でない内気な少年の姿が想像できた。心の中で、席替えの結果に気持ちを揺さぶられている主人公。クラスの美人の隣を狙っている。どれくらい本気の恋なのだろう。恋なのか? 学校時代の小さな共感の種を拡大し、「♪ヘイヘイヘイヘイヘイ」という目立ちたがり屋みたいな表現にまで昇華してしまった佳曲。

先日、甲本ヒロトがテレビに出たという。松本人志と中居正広がゲストを迎えてトークする番組。私は放送がどんなものだったかを伝えるネット記事を読んだ。甲本ヒロトの、最近のリスナーの歌詞の受け取り方に関して思うことが語られたという。私は放送を観ていなかったけれど、ブログに書いたらいろいろ情報提供(録画を送ってくれた人)もあって、だいぶ甲本ヒロトがどんなことを述べたのか知ることができた。

思えば、小学生の頃の私なんて、気に入った音楽の歌詞などたいして気にしていなかった。音、響き。サウンド。ルックスなどのビジュアル。そういうものが占める割合が大きかった。それで、きちんと自分の好きなものをたぐり寄せていたのだ。そこに、ちゃんと意匠は現れる。歌詞に込められる思いや意味は、結局サウンド(音)のもとに結実するのだ。だって、言葉だって歌詞だって、音楽である以上は最後は「音」が出口なのだから。それでいいんだと改めて思わせる甲本ヒロトのトークだったと私は思っている。

情熱の薔薇』はTHE BLUE HEARTSのキャリアの中では脂がのっている頃?(THE BLUE HEARTSに「脂がのっている」なんて表現は陳腐かもしれない。ずっとミサイルみたいだから。)サビが1回しか来ないかっこいい曲だ。そう、かっこいい。それで十分じゃないか。歌詞だなんだってのは、あと二分くらい足して十二分にしたい人のためだ。…なんて言ったら作詞家に怒られるかな。いや、無視されて終わりだろうな。



先に、映画『ウォーターボーイズ』のことを思い出して『学園天国』について触れた。ほかにも同映画で使われた「いい曲」は、PUFFYが歌った『愛のしるし』。曲の提供者はスピッツの草野マサムネ

PUFFYの曲『MOTHER』の歌い出しの歌詞は、『およげ!たいやきくん』に似ている。『MOTHER』の作者は奥田民生。ふしまわしが全然違うから、歌詞が似ているだなんて気が付かなかった。『ウォーターボーイズ』『愛のしるし』『およげ!たいやきくん』のおかげで『MOTHER』に至った。

けだるさと達観を感じさせる、するめいかのように味わい深い曲。サビのⅤmコードがはっとさせて粋。奥田民生の音楽センスを思わせる。「ひけらかさないサレオツ(=オサレ=おしゃれ)」を彼は持っている。

夏に小山田壮平は『HIGH WAY』というタイトルの曲を含んだソロアルバムを出したし、最近ふとしたきっかけで思い出した映画『ジョゼと虎と魚たち』の主題歌はくるり『ハイウェイ』。どちらも私のフェイバリットミュージシャンであり、フェイバリットソング。

で、高速道路で思い出す素晴らしいブルージーなロックアンセムがある。フラワーカンパニーズの『深夜高速』。ずっと前、大宮エリー司会の深夜の音楽番組で観た。フラワーカンパニーズがゲスト出演して、この曲の演奏とトークをしていた。カッコよかった。

カッコ良さのヒミツを、サビの「ベースと歌の音程の関係」に着目して見出してみた。完全5度がポイント。心の底から、感性で「いい」と思える理由を分析と言語化で表す活動が私の関心事である。

くるりの動向は常に私の関心事。私は大ファンなのだ。特に、岸田繁がTwitterをやっていることを知り、フォローを始めてから彼らの情報がよく入ってくるようになった。

くるりは12月25日に新曲を出す。『コトコトことでん』だ。そのカップリング…というか、もう片面が既存曲『赤い電車』(2005年)の新アレンジ。その名も『赤い電車 (ver. 追憶の赤い電車)』。

『赤い電車』は、京急電鉄とのタイアップで生まれた曲。実際の電車の音をサンプリングして曲に用いている。ドレミファインバータの名で鉄道ファンに親しまれる、車両に組み込まれた機構が立てる音だ。その機構がどういう仕組みのどんな役割のものなのか、正直私にはよくわからない。Wikipediaを読んでも分からなかった。それだけマニアックか、それだけ私がアホかのどっちか。どっちでもいい。

でも、その「音」に愛着を感じる。私は特別、自分が鉄道ファンだという認識はない。そんな「浅い通りすがり」の私でも、なんか可愛いなと思えるのだ。

『赤い電車』は愛嬌いっぱい。タイアップというお題にもくるりは見事な純度と技量と愛情で応えた。私が敬愛してやまない理由がそこにある。

むすびに
短調のマイブーム。電車や高速道路。ジブリ。甲本ヒロトの貴重なテレビ出演…などが話題の1週間でした。もう寒い! 冬ですね。

青沼詩郎

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