『日本列島創生論:地方は国家の希望なり』石破茂著、新潮新書712、2017

感想

全体

地方の話で参考になることもあるんだけど、それで国政の政治家としてあなたは何をするんですか? とかいう話がなくなる。ただの地方物知りおじさん。

あと、なんか微妙に横文字が多い…考えたら、この人、ICBMとか大好きな人やった(笑)所信表明演説の「wise spending」も意外と本人発だったのか?


はじめに――革命は地方から起きる

日本はすでに有事/子孫に負債を残すな/

人口減少楽観論の間違い

食料自給率を上げよう、という方針について反対する人はほとんどいません。しかし、そのための目標を本気で設定し、方策を本気で考え、デメリットも含めて皆で共有するといった作業をしてきたのか。答えはノーです。

p. 11

少なくとも経済学者は食料自給率をあげようなんて考えてない。視野が狭い

そして、こうした大きなテーマに関して、「中央政府に任せておけばいいや」と考えているようではもはやどうにもなりません。むしろ、その逆の発想が求められます。

国が地方を変えるのではなく、地方の真摯な取り組みこそが国を変える。そのような考え方を共有すべきである。これが初代の地方創生担当大臣をつとめた私の結論です。別の言い方をすれば、「地方創生」の集積が、日本全体の「創生」になる、ということです。

p. 11

それじゃあ、あなたも地方の政治家になればよいし、地方は地方で都市にたかるだけじゃなくて「自分の財布」でなんとかしてくださいよ。


アベノミクスの先にある処方等

アベノミクスとは何か。一つは大胆な金融緩和政策であり、もう一つは機動的な財政出動でした。その結果、実質GDPの成長、株価の著しい好転など、デフレ脱却に大きく貢献しました。

しかしながら、この二つだけでは限界があることもまた、正視する必要があります。これはある意味では時間稼ぎであって、いつまでも続けることはできません。日銀が無限に国債を買い続けることは出来ませんし、公共事業の財源にも限りがあります。

本来は、三本目の矢である成長戦略の中に、あるいはその延長線上に、地方創生が位置付けられていたのだと思います。つまり、地方創生を中心とした成長戦略も含めての政策こそが、日本復活のための処方箋なのです。

pp. 12-13

嘘です。安部さんの3本目の矢は規制緩和などによる成長戦略であり、「地方」とかいう言葉は全然出てきません。まあ、言われたら取ってつけたように言ったかもしれませんが、彼が積極的に言って来たことに「地方」が出てくるのは災害対策の「国土強靭化」だけです。嘘はダメです。


/地方からの革命を

1 地方創生とは何か

バラマキではない/危機感と日標/二〇六〇年に一億人に/

『地方消滅』の衝撃

この人口問題に関する議論が本格化したのは、「はじめに」でも触れたように増田寛也氏の論文がきっかけでした。『地方消滅』のもとになったのは、「中央公論」2013年十二月号に掲載された「2040年、地方消滅。『極点社会』が到来する」(増田寛也+人口減少問題研究会)というショッキングなタイトルの論文。その中味は、あまりに衝撃的で、私は手にしたその晩のうちに何度も読み返したほどです。

論文の本質、言わんとするところは、二○四○年に、全国のすべての市町村の二十代~三十代の女性がどれだけ減るかを考えないと日本は大変なことになる、ということです。もちろん十代、四十代で出産する方もいますが、出産の主な年齢は二十~三十代です。そうであるならば、このままの推移が続くとどうなるか、ということを調べてみたのが増田レポートでした。

たとえば私の地元、鳥取県で見ると、若桜町という町では二○四○年にその年齢層の女性が二〇一〇年に比べて七二・四パーセント減ることになっている。現在の四分の1に減るのです。その他の市町村も似たようなものです。

それでは市、町、村がもはや持たない、サステナブルではない、と言わざるをえません。そういう自治体を増田氏は「消滅可能性自治体」と呼びました

pp. 29-30

地方に選挙地盤があって、政治家30年ぐらいやって、それでこの程度の事に驚くとか、よっぽど感受性が鈍いか頭が悪いんじゃ…


東京の危険性

なぜ東京がそこまで危険だと見られているか。首都直下型地震という災害発生の可能性が極めて高い。そして、木造密集住宅が多い。これは上空から見れば一目瞭然です。

p. 32

それはあなたがた自民党が地方に金をばらまくから、東京の災害対策とか都市政策が不十分だからですよね?


東京の衰退

しかし、その東京の出生率は現状のままだと日本一低いのですから、結局は地方と同じ状態になります。何のことはない、時間差で東京も衰退するわけです。要は日本が衰退する。

p. 34

人口の一番多い東京で出生率を回復させるという発想はないんでしょうか?


2 補助金と企業誘致の時代は終わった

地方が元気だった時代

新幹線もなく、高速道路網もなく、飛行機も飛んでいない―――それにもかかわらず、あの時代、地方は確かに元気だったのです。

p. 37

新幹線・高速道路・飛行場を作ったせいで田舎から人が都会に逃げたんですよ…都会から田舎に出張やレジャーに来る人も日帰りが可能になって旅館に泊まりにくくなった。全部、土建屋儲けさせるために自民党がやったこと。


/企業誘致型の限界/「夢よもう一度」は無理

3 PDCAとKPIを考えよ

PDCAサイクル/点検の重要性/KPIの設定を

議論のレベルが低すぎる…


4 国は人材とデータで後押しをする

国の役割とは/地方の事情を調べるべき/KKOの弊害/竹下総理の教え/金を有効に使った自治体/意味のある出向を/

官僚をコンシェルジュに

私は地方創生大臣になった時に、「できません。なぜならば」という台詞を口にしないでほしい、と官僚達に言いました。地方からはいろいろな相談が来るだろう、その時に、「できません。なぜならば」と言って、できない理由を並べていては何も始まらな、ということです。

「できるようになるためにはどうすればいいのか」ということを考えるのが、我々の仕事です。

p. 64

本質的に行政が行うべきでない事を言ってくる地方の人もいる。そういう人に、なぜそれは民間に任せて地方政府が行うべきでないかを説明することも重要ではないか?


5 外資アレルギーから脱却を

海外投資は伸びしろである/ニューヨークで売り込みをした首長たち/超高級ホテルの需要/「よそ者」の視点/USJも「よそ者」でよみがえった/敵視からの脱却を

6 観光はA級を目指すべし

労働生産性を上げるという視点/地方の生産性はまだ伸ばせる/古い「代理店お任せモデル」/インバウンド頼みではいけない/「ななつ星」に乗って/A級グルメを目指す町/地域連携によるプラス効果を/休日の分散化の可能性/民泊はリスクも考慮しながら

7 一次産業に戦略を

一次産業で生産性を上げる

そんな国でなぜ農業が衰退産業のようになってしまったのか。

漁業に関しても同様です。排他的経済水域(EEZ)の広さは、世界第六位というのは良く知られておりますが、これはあくまでも面積の話です。実は日本の周りの海は深いので、権利を行使できる「体積」という観点では世界第四位です。

そこまで恵まれた環境を持ちながら、国内の漁獲高はピーク時の半分になってしまっています。それはなぜなのか。

林業も然り。世界中、木の切りすぎで困っていますが、日本だけは木の切らなすぎで困っています。木は成長するので、一年に成長する木材だけで日本国内の需要は賄えるほどです。それなのに林業もこうなってしまった。それはなぜか。

p. 109

「然り」じゃねえわ。漁業は取り過ぎなんだよ。


/農業特区の意義/林業の持つ可能性/土佐の森・救援隊/里山の発電/水産資源の管理には長期的なメリットがある

8 創生の基点はどこにでも作れる

島留学という発想/森林の美術高校/森のようちえん/

中村ブレイス

今では世界中から注文が殺到するようになり、そして「こういう会社で働きたい」という若者が多くやってくる存在になっています。若者たちは土、日返上で働いているそうです。

p. 139

こういう、無自覚にブラック企業かもしれないのを称賛するのは…


/公民館から変わった「やねだん」

9 「おねだり」に未来は無い

離島が生き残った戦略/建設業界からの意外なリクエスト/給与カットの意味/おねだりでは解決にならない/富山市の取り組み/丸亀町商店街の試み/面倒くさいという前に/総論賛成、各論反対/出生率を上げた高齢者たち

10 官僚は現場で発想せよ

本社の地方移転にインセンティブ/官民手を取り合う体制で/

省庁の地方移転

いか、官庁の地方移転の話が続くのだが、そもそもそれでいいなら地方分権すれば済むんじゃないかとか発想が湧かないのが…

「反対に大義なし」とか偉そうだが、大義とかじゃなくて効率で仕事を進めてください…

/文化庁が京都である必然性/官僚たちの抵抗/反対に大義なし/民間の先駆け・コマツ/マスコミと官僚の共同作業?

11 里帰りにどれだけ魅力を付加するか

男は地元に帰りたい/ニンジン作戦ではダメ/東京圏高齢化危機回避戦略/回避戦略の要旨/CCRCの推進/プラチナタウン/いつかは故郷で/Uターン組が活力をもたらす/「花の都で」は古い/メキシコの漁師

12 「お任せ民主主義」との決別を

素朴な疑問に答える/何もない地方なんてない/「お任せ民主主義」からの脱却/ユーカリが丘のヒント/勝ち組と負け組/首長の選び方/議員削減の問題/持続性をどう担保するのか/面倒くさがる人たちの罪/今が最後のチャンス/個人と地方が自信とストーリーを持つ


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