大男

文を書くのが好きです

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最近の記事

Doki Doki Literature Club! についてちょっとだけ話させてほしい

まえがき  ・DDLC本編についてのスポイラーを多分に含みます  ・DDLC+に収録されたサイドストーリーについてのスポイラーも多分に含みます  ・基本的に"口語調である" "ロジックではなくニュアンスや感情で話を進める" という点から評論というより感想文に近いです  ・一度プレイした人向けの文といえます  ・内容が無いよう!   1.はじめに  Doki Doki Literature Club Plus! の国内コンシューマー版発売おめでとうございます。Playismさ

    • コミティアに行ってきました

      コミティア137にサークル出展してきました。 み~んなエネルギッシュで「俺は何をしにここに来たんだろう、ここに出るだけの意味があるものを持ってこれたのだろうか」ってぐったりしてたんですけど、帰って寝て起きた今考えると結構楽しかったです。いくつか本も買ってもらえたので。 本はここから買えます。普段からこっそり運営しているTwitterのBotに関する本で、今回はそのBotの楽しみ方やバックボーンについてのお話をまとめた新刊と既刊のセットって具合です。よろしかったらどうぞ。

      • 即興小説-20210914「犯罪」

        レギュレーションは「構想30分、執筆60分」。 実時間は「構想60分、執筆120分」。 本文 犯罪 -----  行きつけのコンビニで、女子高生が万引きをしているのを見かけた。    僕は少しはっとして彼女の事をじろじろ見つめてしまったけど、何かを咎めるとか店員を呼ぶとかの"社会倫理に沿った行為"はしなかった。僕はこの店の関係者じゃないし、彼女の人生について責任を負うような立場にもないからだ。取るに足らない、とまでは言わないけど、ありふれた行為にいちいち首を突っ込んで

        • 即興小説-20210908「整理」

          レギュレーションは「構想30分、執筆60分」。 実時間は「構想20分、執筆60分」。 本文  整理   ----- 「アカウント消してたけど、なんかあったの?」 「めんどくさくなっちゃった。あの界隈、しつこい人が多くてさ」  喫茶店のテラス席で、俺の目の前に座っている男は垂れた前髪を人差し指で弄びながらそう応えた。オフショルダーのニットの上からショールを肩にかけたそいつは、自分の髪と遊ぶのに飽きたのか今度はくしゃくしゃに丸めたストローの紙袋に水滴を垂らし始めた。縮こま

          20210907-「幻」

          レギュレーションは「構想30分、執筆60分」。 実時間は「構想45分、執筆270分」。 本文   幻   -----  VR――仮想現実。つまり、コンピュータの処理系を用いて現実を再現、もしくは理想の空間を構築したもの。VRという単語はこの数年で一般に浸透し、同時にVRを楽しむための機器も一般人が無理なく買えるような価格になった。かつてはVRコンテンツを楽しむためには大規模な施設や装置が必要だったというのに、こうやって僕のような庶民が専用のHMD――ヘッドマウントディ

          20210907-「幻」

          即興小説-20210906「感動」

          レギュレーションは「構想30分、執筆60分」。 実時間は「構想しつつ執筆、90分」。 本文 感動   ----- 「卒業式で泣いたことって、ある?」  僕の目の前に座った女性はテーブルの脇に置かれたスティックシュガーをどさどさとホットコーヒーに投入しながら、何か深刻なことに向き合っているかのような口調でそう言った。彼女は僕の友人で時折こうしてお気に入りの喫茶店で一緒にコーヒーを飲むような関係なのだけど、未だにこういう会話の切り出し方には慣れない。本気でそのことを気にし

          即興小説-20210906「感動」

          即興小説-20210902「満月」

          レギュレーションは「構想30分、執筆60分」。 実時間は「構想15分、執筆90分」。 本文 満月 -----  秋というのは毎年いきなりやってくる。つい昨日まで暑かったのに急に冷え込んで、急に空が高くなって、月が綺麗に見えるようになる。もう25回目の秋だけど、急にやってきて急にいなくなるこの季節にはいまだに慣れない。俺はその日クローゼットの奥にかけてあったカーディガンを羽織って、住処である部屋のベランダから丸い丸い満月を眺めていた。数年前から手放せなくなったエナジード

          即興小説-20210902「満月」

          即興小説-20210901「錯覚」

          レギュレーションは「構想30分、執筆60分」。 実時間は「構想30分、仕事の合間合間に書いてたので執筆時間は不明(90~120分くらい?)」。 本文 錯覚    行きつけのお店がある街角。自宅へと繋がる帰り道。どこに行こうか迷いつつ乗り込んだ電車の中。そういう場所でふと、昔の知り合いに似ている人を見かけるのはよくある話だ。僕はそういう時、よう、元気か……なんて声をかける性格ではないけど、ちょっと振り向いて目で追いかけるくらいには気になってしまう。ついさっきもそういうことが

          即興小説-20210901「錯覚」

          即興小説-20210830「病院」

          レギュレーションは「構想30分、執筆60分」。 実時間は「構想30分、執筆90分」。 本文 病院 -----  子供の頃から私は病気がちだった。生まれてすぐに酸素テントに入れられるような弱々しい子供だった私は、15歳の誕生日を迎えるまで同じ病院の小児科に通い続けていた。私を診ていたお医者さんは少し不愛想なタイプで、診察に行く度子供心に"またあのしかめっ面を見なきゃいけないのか"と憂鬱な気分になったのを覚えている。それから、頻繁に耳たぶから採血を受けたことも覚えている。な

          即興小説-20210830「病院」

          即興小説-20210829「自動販売機」

          レギュレーションは「構想30分、執筆60分」。 実際にかかった時間は「構想しつつ執筆、100分ほど」。 本文 自動販売機   -----  子供の頃、自動販売機の中には何か不思議な装置が入っていて、小銭さえ入れれば飲み物が無限に出てくるものだと思っていた。そうでないと気づいたのは10歳を過ぎてからだった。家の近所に置いてあった自販機の在庫をチェックして飲み物を補充しているサービスマンの姿を見た時、自販機とはそういう仕組みなのだと感心しつつも心の片隅ではどこか残念な気持ち

          即興小説-20210829「自動販売機」