私の弁理士試験の勉強方法について②(口述試験編)
この記事を書く際の直近の試験が口述試験でした。記憶が新しいうちに、まずは口述試験の勉強方法を書いていきます。
私の学習方法の特徴
私は、短答試験と論文試験は予備校のお世話になりましたが、口述試験だけは「独学で」学習し突破しました。
独学で学習することにした理由は、①すでに短答と論文に重課金していたので、これ以上出費を重ねることは単純に苦しかったこと、②地方在住であったので対策講座を受講しても肝心の模擬試験をすることが物理的に困難と予想されたこと(コロナで首都圏に行くこと自体が私と家族にとってはリスクであり、また、何度も新幹線で行くことになるので費用的にもいと苦し)、③口述試験の合格率は近年90%を超えており論文試験も比較的余裕を持って合格したので何となく独学で突破できる自信があったからです。
独学のデメリット
幸いにも、私は独学でも最終合格できたので、結果オーライですが、独学には次のデメリットがありました。
①「どの条文と趣旨を暗記するべきか」及び「どの程度緻密に暗記していくか」についての不安が、試験が終わるまでついて回ったこと
この点、予備校であれば暗記のターゲット条文をある程度絞り受講生に提供してくれ、この点については受験生は大きな不安はないのではと思います(もっとも私自身対策講座を受講していなかったので、予備校がそのような対策をしているかは不明確です。)。
しかし、私の場合、優先順位付けを自分でする必要がありました。以下に述べるとおり、過去問を中心に自分で優先順位をつけて試験に臨みましたが、自分の考えた優先順位や暗記の精密さの程度が正しいか試験が終わるまでずっと不安でした。
正直、これでメンタルをやられそうになりました。
②有効な模擬試験ができなかったこと
次の理由から口述試験対策のために模擬試験は何度か受験した方がいいと多くの方が仰っていると思います。
・記述と口述は異なるので、論文試験を通過しても、口述を上手くできるとは限らない。だから、模擬試験を何度か受ける必要がある。
・1科目、原則10分以内に回答を終わらせられなければ、当該科目はC評価となってしまう可能性がある。よって、模擬試験を通じて制限時間内に解答できるように訓練するのだ。
・わからない問題に当たった場合の身の振り方を見つける方法や、試験委員が出してくれた助け舟に上手く乗る練習は必要だ。
私としても同感なので、是非、模擬試験を受けたかったのですが、地方在住なので、地理的、時間的、金銭的に模擬試験は受けることは困難でした。
そこで、何もわからない妻にお願いをし、過去問を参考に試験委員役をやってもらうことで模擬試験を1回だけ実施することで、10分という時間枠がどの程度の緊迫感があるか(やってみると時間が2分ほど余ったので、むしろテンションがあがったのですが)何となく体感できましたが、これも試験前日まで「必須と言われている模擬試験をほとんどやらずにここまできてしまった。あーあ。」と負い目に感じることがありました。
これについても明らかに精神衛生上、よくありませんでした。
私が行った口述試験の対策の一覧
①過去問の繰り返し
②重要な条文のメリハリをつけた丸暗記
③制度の趣旨の暗記
①「過去問の繰り返し」について
口述試験は、過去に問われた「分野」が再び問われるといった出題パターンです。全く同じ問題が出題されることもあれば、同じ分野から出題内容を変えて別の新たな問題が出題されていると、過去問を見て思いました。
例えば、特許法の「補正」、意匠法の「登録要件」及び商標法の「地域団体商標」など過去に問われた分野はいつでも出題されることもあり(確か、2年連続で出題された分野もあると思います。)、逆に、特許法の「184条の枝番シリーズ」など過去問で出題されていない分野については、急に出題される可能性は低いと考え、学習の優先順位は下げました(もちろん、出題されない保証はありませんが、学習の優先順位は限りなく下げました。結果、私は過去に出題されていない分野は口述試験本番まで一度も勉強しませんでした。)。
したがって、「まずは過去問を繰り返し学習し、基礎ができた後に、自分で関連する条文や制度趣旨等を広げて学習していくことが有効である」と考え、勉強ました。
使用した過去問集はLECの「弁理士試験口述アドヴァンステキスト」です。このテキストは、過去の試験の再現が精密になされており、さらに解答とその根拠となる条文等の適示が丁寧であると思いました。また、巻頭に、口述試験の試験当日の導線や試験室の状況、受験時のマナーについて解説があり、これも参考になりました。
学習の進捗状況や丸暗記を要する条文か否かを一覧性を持ってわかりやすく整理するためにエクセルで管理表を作成しました(実際に使用した管理表のスクショを添付します。最左の列の数字は、テキストの章番号に対応しています。紫の着色は、試験1週間前に復習したことを表す着色です。)。
②「重要な条文のメリハリをつけた丸暗記」について
論文試験直後の解答速報会(ようつべライブ配信)で、「口述試験の解答は条文の文言に即して行う必要がある」と予備校の講師が仰って、論文試験を終えたばかりの受講生を当てて、いきなり特許法44条柱書きを条文を見ずに言ってみてと回答を求めていた姿を拝聴し、「いやいやっ無理だな」と苦笑いして聞いていたのを覚えています。
※この点、私が口述試験を実際に受験した際にも、私が、少し条文の文言から外れた文言で回答した場面では、試験委員の方から「条文に即して答えてください」と回答のやり直しを指示されました。このことからわかるように、条文に即して回答することが求められているようです
精神衛生的には過去問で出題された分野に関連する条文を全て暗記すれば安心できるのでしょうが、時間的に不可能でしたので以下の方法を取りました。
・過去問で逐語的な回答を求められた条文については丸暗記をする(当たり前)。
・過去問で逐語的な解答が求められたわけではないが、過去問で問われた内容に関係する条文でかつ個人的に重要だろうと考えるものは可能な限り暗記する。
・逐語的な暗記が望ましいが、あまりナーバスになりすぎずにできる限り覚えようくらいにしておく(特に、商標法4条1項10号等の「又は」と「若しくは」の使い分けは最初はスルーしていました。意味がわかった後に結局暗記することはできました。また、試験では法文集が貸与され、試験委員の方の許可を得た上で、参照しつつ解答することができます。ただし、特許法68条のように基本中の基本の条文は試験委員の方の許可がおりず条文の参照できないまま終わるケースもあるとのことなので、その点には要注意。条文の参照すると当該科目はC評価となってしまわないか、漠然として不安が受験前にはありました。しかし、私は本番で1回だけ条文を参照しましたが、合格することができましたので、杞憂だったようです。)
③「制度の趣旨の暗記」について
趣旨は、青本記載の趣旨で回答する必要があります。
私は、過去に出題された分野の青本の趣旨は全て暗記しました。当然ですが、趣旨は貸与される法文集を参照しても載っていないので、覚えていなければ回答できないからしっかり準備しました。ただし、趣旨の暗記は、流石に逐語的な暗記を求められているわけでないと考えた(私見)ため、論文試験の勉強で蓄えた貯金があることも相まって、条文の暗記よりも楽でした。
具体的な暗記方法ですが、ノートに「特許法41条の国内優先権制度の趣旨を説明せよ。」と問題文を自作し、その後自分の回答と青本の記載が正しいかを延々と繰り返して確認していきました。
私は出題される可能性のある条文については、青本記載の趣旨の全てについて問題を自作し、質問→回答の練習ができるように準備しまいたが、合格した今となってはちょっとやりすぎたかなとも思います。青本記載の趣旨にも軽重があると思うので重要なものに絞って学習した方が、より効率が良かったかもしれないと思っています。
最後に
結果として最終合格できたので、今となってはいいのですが、上述したように、口述試験だけは予備校の力を借りずに自力で学習したので、お金等は節約できた反面、精神的に辛いものがありました。合格率9割を超える試験なのに、お金をケチったがために、もし落ちてもう1年でやる羽目になったらどうしようとか、自分の判断で決めた学習範囲に判断ミスがなかったかといった不安を試験前日までもつことになりました。試験前の精神状態の悪さ、緊張状態で言えば、口述前がもっとも最悪でした(もっとも試験会場のホテルまでやってくると細かいできなかったことなんか完全に忘れて、絶対に受かって帰るから、といった気持ちにはなっていましたけどね)。
まとめると、私からすると、口述対策として予備校の講座や模擬試験を受けることは当然有効だけど、独学で勉強しても受かる。ただし。精神的に辛い面もあるので、お金を出すことがきるのであれば、講座等を受けた方がいいと言わせていただきたいです。
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