それは勇気とは言わないあの頃と変わらない何か
小学校の登下校は、それは狭い道だった。
下校時間は小学生で道が埋まる。マジ埋まる。一寸の隙もない。
ある日、大きな乗用車がその時間にその道を通ろうとした。
クラクションを鳴らす。
無駄だ。
小学生自身も、よけることなどできないのだ。
車は苛立ってクラクションを鳴らす。何度も鳴らす。
私が叫んだ。
「うるさあああーい!」
「今、うるさいって言ったやつ誰だ!」
怖いおじさん、もしかしたら893さんだったかもしれないしただの強面のおじさんだったかもしれない(推定)が血相変えて車から降りた。
「はい!」
私はまっすぐ手をあげた。
怖いおじさんは、かなり拍子抜けしたようだ。
相手はヒヨコのような黄色い帽子の小学生女子。
澄んだ目。
何か悪いことしました?と、一点の曇りもない目。
説教されたのは覚えている。
「はい!」
小学生特有のいい返事。
あんなことを怒鳴っちゃいけないと言われた気がする。
「はい!」
小学生美少女が答える。
しかし、論拠はグダグダだった。
「はい!」
怖いおじさんは車に乗って、小学生の列の流れに合わせて道を通り抜けて行った。
多分、私は可愛かったと思う。
教室ではいじめられ、ブス・鬼婆と呼ばれたものだが。
♪髪をつかまれ床の上を
引きずられてみたことがありますか
他人事に見るほど級友は
冷たく人好しじゃありません
それは多分、私が勉強ができたからだと思う。
通知表が出たとき級友が隠しながら見せ合うのが嫌で
堂々と机の上に自分の通知表を広げた。
体育以外5の通知表。
そりゃ、敵を作るわ。
しかし、私は泣かなかったし、
それで支持者も出たし、
私が毎日語る空想物語のファンも出来て、
いつの間にかいじめられなくなった。
ターゲットが変わった。
次々変わるのな。
私はいじめ被害者の味方だった時もあるし、
中立で放置していた時もあった。
ただ、担任に「よろしく頼む」と言われた場合は、断った。
俺がいじめられてたとき、よろしくされたかよ。
思えば、私はあの頃のままに生きてババアになった。
やはり、大人にはなっていないな。
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