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ナンがないカレー

僕はもうナンにすがっているのかもしれない。

断崖絶壁でずり落ちそうになりなっている絶体絶命のタイミングで、筋骨隆々としたタンクトップの男が「ファイトー!」と差し出す命綱、それ即ちナンである。

カレーを食べる≒ナンが食べられる。そんな方程式をTシャツにプリントし、街へ繰り出すのも時間の問題だ。このような思想の偏りに危機を感じたので、ナンが出ないのかもしれない店でカレーを食べることにした。

地元の小さい店はなるべく応援したい。

そういう店は、「外観がいい感じ、行ってみたいなあ」なんて言ってる間に閉店してしまうかもしれないのだ。ゆけ。今すぐに。ゴーナウ。営業時間を調べてゴーナウ。

ゴーナウと突き進みながらも太陽に焼かれ、汗が噴出してくる。
汗が背中をつたってもカレーを食べるんだと、心の準備を怠らなかったのはナイスプレーだったと思う。
いざ入店し、オーダーするのはもちろんカレー。

おっ、意外と早いな。

たしかに、カレーと一緒になんか頼んだ気がする。

ヴェデットと発音するだけでテンションが上がるし、外国のビールっていいなあ!って初めて「おれもすっかり大人だな」と感じさせてくれたヴェデットが置いてあるのだから仕方ない。この瓶の形、最高ですよね。

10分ほどすると、主役も登場。

看板商品のキーマカレー。やはり、ナンがない。

ナンにカレーをディップさせて食べることに慣れ過ぎた僕は、ライスをスプーンですくってからカレーにディップさせて「食べづらいなあ」とか3口くらいやっていた。発想の転換ができない、頭がただ不器用なだけである。
4口目からはカレーを適宜ライスにかけて、ミニカレーライスを連続的に発生させながら食べていた。これが正解である。美味しい、美味しいです。

テーブルの感じからもお察しの通り、女性の主人がひとりで運営していて、いわゆるアジアンカフェのような店で出てくるキーマカレー。
思い浮かべてください・・はいストップ!十中八九、その味で間違いないです。

やさしいだけではなく、しっかりとした辛さもありながら、どこかセンチメンタルでもある、あの味。
スイスイと箸、否、スプーンが進み、軽快なヴェデットの喉越しも手伝って、踊るように完食。

ナンがなくても満足できた自分にもホッとしながら、灼熱の国道沿いに退出。また来まーす。

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