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うしくぼの独り言−教養としての落語−

「あの人の話にはオチがない」

 そんなふうに言われる人がいます。一方、笑いが取れたり、感動させたりする話ができる人の多くは絶妙な「オチ」を用意しています。

 それを一連の型にしているのが落語。『ビジネスエリートがなぜか身につけている教養としての落語』より、落語のいくつかの代表的な「オチ」の種類について、ご紹介します。

◎落語の基本構成「枕」「本題」「オチ」についてはこちらをぜひお読みください

目次

  1. 落語の代表的なオチの種類

  2. ①考えオチ

  3. ②逆さオチ

  4. ③ぶっつけオチ

  5. ④間抜けオチ

  6. ⑤見立てオチ

落語の代表的なオチの種類

①考えオチ

……一瞬考えた後、面白さがわかって、ニヤリとさせられるオチのこと。

 噺をきいた直後には意味をとりにくいかもしれませんが、少し考えると、その面白さがじわりと伝わってくるのが特徴です。ただし、聞く側に一定の予備知識が求められることがあります。たとえば、次の例でいうと、「足が出る」が「赤字になる」という意味の慣用句だという知識が聞き手にも必要になってきます。

例‥「へっつい幽霊」

博打に負けてしまった幽霊が、「もう持ち金ないだろう?」と問われて、こう答えます。
「私も幽霊だ。決して足は出しませんから」

(注‥足を出す=予算以上に使って、赤字になること)

落語を聞くことはある程度の教養がないと成立しない、わからないことにつながります。日本語の面白い所で同じ漢字でも読み方や意味が異なる言葉があります。落語はその部分を突いて、面白さを見出すことがあるため、普段から読書や文字に触れていることが必要です。まさに大人の楽しみですね。

②逆さオチ

……登場人物の立場や物事などが、「入れ替わる」オチのこと。

 たとえば、[1]「上下関係の入れ替わりをイメージさせるパターン」、[2]「常識を逆転させるパターン」、[3]「筋書きの流れを逆転させるパターン」などがあります。特に日本人は[1]のパターンを好む傾向があるようです。「弱い立場の人間が、とんちをきかせたり、努力を重ねたりして、目上の人をやりこめる」というスタイルです。次の例も[1]に分類されます。

例‥「初天神」

父親が息子にせがまれて「初天神」(天神を祀る神社で行われる、その年の最初の縁日)に連れていきます。当初は気乗りしない父親でしたが、だんだん楽しくなり、最終的には息子以上に縁日を満喫している父親を見て息子が一言。

「こんなことになるなら、おやじを連れてこなけりゃよかった」

③ぶっつけオチ

……意味の取り違えや「勘違い」などによるおかしさを描いたオチのこと。

「間抜けオチ」とは異なります。「勘違い」が引き出すとんちんかんな状況を描くのが特徴です。

例‥「あくび指南」

ある男が、「あくびの仕方を教える学校」に付き添いで行きます(そもそも、この学校の存在自体がナンセンスで面白いところです)。

そこで展開される授業の退屈さに、付き添いで行った男が思わずあくびをしたところ、講師に感心されてしまいます。

「この人はなんと器用なんだ。手本を見ただけで、いいあくびを覚えてしまった」

(※この講師の勘違いが、オチです。「授業に退屈をしてあくびが出たこと」を「あくびの授業を受けた結果、うまくあくびが出せた」と勘違いしているところに面白みがあります)

現代のお笑いでは「アンジャッシュ」というコンビのネタが勘違いやすれ違いを利用しているので、ぜひオチをつけることが苦手な人はぜひみてください!

④間抜けオチ

……間の抜けた事柄を描き、面白さを引き出すオチのこと。間の抜けたことや様々な失敗談が語られ、最後にダメ押しするかのようなセリフで締めくくるというスタイルです。江戸落語には「与太郎」という名キャラクターがいます。彼が登場する噺の多くは、間抜けオチになっています。

例‥「牛ほめ」

父に言われて、伯父の新築祝いに出かける与太郎。

「とにかくなんでもほめろ」「柱の穴は、『お札ふだを貼るのに好都合』と言っておけばよい」と、出発前に教え込まれます。

 伯父の家で、とんちんかんで失礼な〝ほめ言葉〟を連発する与太郎。最後に、庭の牛が糞をしているのを見てこう言います。

「その穴に、秋葉様のお札をお貼りなさい。穴が隠れて、屁の用心になります」

(※「秋葉様」とは、火防(ひよけ)の神として信仰された秋葉権現のことで、「お札」は秋葉神社のお札のこと。「火」と「屁」を引っ掛けた、駄洒落で落とす「地口オチ」にもなっています)

⑤見立てオチ

……連想ゲームのように話を積み重ね、意表を突く事柄に見立てて、面白さを引き出すオチのこと。

 見立ての意外性が、オチの肝となります。

例‥「熊の皮」

しっかり者の妻から用事を頼まれた男が出かけます。ところが、先方の家で用事の内容を忘れてしまいます。そのとき、熊の皮の敷物を発見しました。「敷物とは、尻に敷くもの」→「尻に敷かれている自分」→「尻に敷いているのは妻」→「妻からのことづけがあった」と連想し、用事の内容を無事に思い出します。

「これ(敷物)は何に使うのですか」

「お尻に敷くのです。熊の皮の敷物です」

「尻に敷く……? そうだ、女房が『よろしく』と言ってました」

 ここまでに見てきたオチの分類は、典型的なものです。この分類にあてはまらないオチも多数存在しています。

まとめ

話のオチのつけ方を何点か紹介させていただきました。オチをつけるためには、様々な教養が必要であり、これは頭の回転が早いと呼ばれる人に共通している点で、ものを知っていることはそれだけ物の見方を様々な視点からみれる目を持っていることになります。なのでオチがないと言われてしまう人は、活字や文章に触れる機会を増やしましょう。そして、常になぜ?なぜ?というような疑問を持って生活してみましょう。そうすることで、話が上手い人、オチがある人と言われるようになります。この機会にぜひ!


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