見出し画像

ディノ・ゴルツィネは、なぜコルシカマフィアなのか

ー写真はコルシカ島の風景。いつか訪れてみたい。

BANANA FISHを読み始めてすぐ気になったのが、ディノ・ゴルツィネのコルシカ人設定。
コルシカって、確かナポレオンの故郷だよな?
てことはフランス人?
そういえば皆「ムシュー」と呼んでいる。

映画「ゴッドファーザー」の影響なのか、ニューヨークのマフィアと聞いて思い浮かべるのはイタリア系マフィア、ぐらいの認識だったから、コルシカマフィアのドンというのは少し意外な感じがした。
なぜ、重要人物をマイナーなマフィアに設定したのだろうか?

BANANA FISH 公式ガイドブックREBIRTHを読むと、その答えはないが作中におけるコルシカマフィアの位置付けが解説されていた。
(P210参照)
・コルシカ系マフィアはシシリアンを筆頭とするイタリア系に比べて(合衆国進出は)出遅れた
・イタリア系は1930年代にはすでにシカゴやニューヨークなどの暗黒街を支配していたゆえに、コルシカ財団の合衆国進出を成功させたゴルツィネの功績は多大であり、彼の影響力も大きかった

そもそもコルシカ人マフィアは実在したのだろうか?
いたとして、どんな存在だったのだろうか?
気になり調べ始めたら、こんなブログ記事にたどり着いた。
コラム 漫画『BANANA FISH』の歴史的背景解説

うーーーむ、やはりインターネットは勉強になる。
私の愛するインターネットはこういうところなんだ。

このブログ記事によると史実として、
・コルシカマフィアはNYどころかアメリカで地盤を築いたことはない。
・1950年代に「フレンチコネクション」と呼ばれる世界最大級のヘロイン密輸ルートが存在し、ルートの中間である「レバノン→マルセイユ→モントリオール」を仕切っていたコルシカマフィアがその中核を担っていた。
・イタリアンマフィアが取引を仕切るニューヨークにコルシカマフィアは出張に来ていただけ。
・1970年代にフランス警察の捜査によってフレンチコネクションは壊滅し、コルシカマフィアはローカルな存在へ落ちぶれていった
ということらしい。

現実に即して考えるなら、ゴルツィネというキャラクターは「強力なマフィア一家のボス」ではなく、「縄張り地域を遠く離れて孤軍奮闘しているギャング」ということになります。

というところで思わず吹き出してしまったのだが、こうなるとゴルツィネにやや同情の念も沸く。

さて、最初の疑問に戻ろう。
なぜゴルツィネはコルシカマフィアでなくてはならなかったのか。

彼がなぜあれほどの執念でBANANA FISHプロジェクトを0から作り上げたのか、その執念に説得力をもたせるためには、
・BANANA FISHで可能になることがあり
・そのことがゴルツィネの強い動機になっていること
が必要だ。

BANANA FISHで可能になることとは、合衆国と直接取引ができ、その援助を後ろ盾に南米からのコカインルートを完全掌握、それによって一気にブラックマーケットのトップに躍り出られることである。

これは人口25万人のコルシカ島出身マフィアにとって、とても数・組織力では太刀打ちできないチャイニーズマフィアやイタリアンマフィアも抑えて勝てる大チャンスであり、BANANA FISHはまさに世界を変える薬だ。

上記ブログの言を借りれば「縄張り地域を遠く離れて孤軍奮闘しているギャング」が世界を覆すためにはどうしてもBANANA FISHが必要なのであり、だからこそゴルツィネがあれだけの執念を燃やすのだ。

なるほど、ゴルツィネはコルシカマフィアでなければならない。

ところで、李大人との会談のこのシーン

200810note_ゴルツィネと李の会談スパゲッティと銃口の時代

BANANA FISH4巻 P52より
「スパゲッティと銃口の時代は終わったのですよ。」
の意味がわからなかったのだが、
「スパゲッティ」とはイタリアンマフィアのことだろうか。
「イタリアンマフィアに支配される時代は終わったのだ。
もうマフィア同士が麻薬取引の縄張り争いで銃口を向けあうのは古臭い、お互いビジネスライクにいきましょう」ということを言っている、と解釈してみた。

「スパゲッティと銃口の時代」という言い回しが存在するのかどうかわからないが、検索してもあまり引っかからない。
日本で「マカロニウエスタン」と呼ばれる映画のジャンルが英語では「Spaghetti Western」と呼ぶらしいことまではわかったので、ここでいうスパゲッティ=イタリア人と見て間違いないと思うのだがどうか。

#BANANAFISH   #漫画 #マフィア #ギャング

いいなと思ったら応援しよう!