バナナフィッシュにうってつけの2020夏
これほどまでに動揺した作品があったろうか。
何も手につかず、思い出しては涙が止まらない、
それが何日も続く。
気が付くとアッシュのことばかり考えてる。
どんな逆境でも絶対にあきらめず
押し流されそうな過酷な運命に懸命に逆らい続けたアッシュ
何度読んでも必ず泣いてしまうシーンがいくつかある。
1つは、国立精神医療センターから脱出に成功したシーン。
それまでも、何度も何度もピンチが訪れる。
それをはねのけてはねのけてここまで来るのだが、
国立精神医療センターに監禁されたのはこれまでのピンチとはレベルが違う。
見てるほうも「もはやこれまでか」「一体どうするんだ」
と「漫画」であることをすっかり忘れている。
脱出に成功したときには
「なんという子だろう!!」と溢れる涙をこらえることができなかった。
そして私はどうしても重ねてしまう。
自分の人生にも「なんという子だろう!!」という出会いがあった。
過酷な運命に必死に抵抗して
懸命に生きた人を知っている。
そしてその彼女も天に召された。
だから、BANANA FISHの7年後を描いた「光の庭」のこのシーンを
泣かずに読むことができない。
(BANANA FISH コミック19巻p176 光の庭より)
彼女は一生懸命に生きた。
それはわたしが一番よく知っていることだ。
あの奇跡のような「生」を
短い時間でも一緒に過ごすことができて誇りに思う。
もう、この言葉に尽きる。
この漫画が完結してからすでに26年が経っている。
でも、わたしはこのタイミングで読むことになっていたのだろうと思う。
あの子を亡くして5年経った今の自分。
英二のように写真を見返すことはまだできないけれど
おそらく夜明けは来るんだろうし、もうすぐそこなんだろう。
今もニューヨークのどこかで英二が写真を撮っていて
朝日の中アッシュのことを想っているだろうことが
ごく自然に信じられる。
ずっと手元において一生読む漫画。