「子離れしてください。」 できないから苦しいのに・・・

高等部で、受け持っていた子どもの保護者から聞いたこと。
お子さんは、重度の知的障がいのある、自閉症男児。

支援学校の小学部から中学部へ進級してから、しばらく荒れた時期が続いたそう。
環境の変化から情緒が乱れるのはよくあること。
ただ、初めて経験する保護者としては、気持ち穏やかではいられない。
当たり前の話。

当時の担任に色々相談したそうだが、荒れが収まるどころか、激しくなっていく。
保護者の方も疲弊していく。

そんな中、教頭から言われた一言を保護者は、ずっと引きずっている。
お母さん、子離れしてください。
思いもよらない一言にひどく傷つけられたとのこと。
「この子が幼い頃から子ども中心の生活。自分の時間なんて持てやしない。」
私だって、子離れできるものならしたい。できないから苦しいのに。

教頭がどういう意図で言ったかは分からないが、
その後のフォローもなく、保護者は数年経っても引きずっている。

その教頭が校長になったのを、保護者は新聞で知った。
「あんな人が出世する世界なんですね。」


話は変わり
私には全盲の叔父がいる。
祖母に育てられた私。
祖母はもうすぐ90歳。認知症で、私の父親のことも分からなくなってきた。
でも、叔父のことは気になっているようで、
「とみ(叔父)を頼まーよー」と面会に行くと口癖のように言っている。
祖母はボケても、障がい者の親を貫いている。

祖母から聞いた話を紹介させてください。

・叔父が目が見えないことが分かると、母親である祖母が親戚中から責められたこと。
・妊娠中にレントゲンを撮ったことが障がいの原因になったのではないかと自分自身を責めた事。
・代わってやれるなら、私の目なんかくれてやるとずっと本気で思っていること。
・盲学校に通うには寄宿舎に入らなければならず、幼い我が子を泣く泣く預けに行ったこと
を繰り返し何度も聞かされた。

叔父の障がいが、夫婦喧嘩の原因になることも。
祖母「あのおじいさん、足が悪いのに、町内の旅行には行くらしいぞ」
祖父「とみが言われたら、どんだけ辛いんなら。考えてみー」と怒鳴る。
祖母(夫婦の会話なのに・・・)

今よりも障がい者への偏見や差別、風当たりがキツい時代。
辛い思いをして、泣き明かした日も無数にあるんだろう。
祖母の話、つまりは障がい児の親の声を聞きながら育ったこと、自分の土台になっている。


何気ないひとことが人を深く傷つけることがある。
それを頭に入れて、今日も一日、丁寧に人と向き合っていきたい。

最後までお読みくださりありがとうございました。


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