琅琊榜 第十八章 覆手为雨
2024年11月4日
「諸行無常」
原題を直訳すると、「雨を手で覆う」
どちらがふさわしい訳なのか…?うーん・・・(~_~;)
ドラマだと 9話 見切り時
10話 次の標的
のそれぞれ一部です。
庭生に会いに行くと伝えてから、
飛流はもらった木彫りの鷹を探しますが、
片付けが苦手な上に引っ越したので、
どこに行ったのやら見つかりません。
その表現が面白いです。
"意識しないまま異空間へ放り捨ててしまったのかもしれない"
◎◎◎◎
「飛流、食事だよ。」
「食べない!」
「飛流、失くしたら失くしたで仕方ない。
食事はしよう。
明日庭生があの鷹の事を
聞くとは限らないんだし、
聞かれた時に正直に
失くしたと言わなくても良いのだから。
蔺晨哥哥が教えたことを忘れたかい?
嘘をつかない子供は良い子じゃない…」
飛流は恨みと恥ずかしさで怒って言った。
「つけない!」
「まだつけないのかい?」
梅長蘇は笑いをこらて、
優しくなだめる声色で
「大丈夫、ゆっくり練習しよう。
僕らの飛流は1番頭が良いからね、
あんな難しい武術の達人にもなったのに、
嘘をつけないなんてことは無いさ。
安心しなさい、蔺晨哥哥が馬鹿にしたら
蘇哥哥が叩いてやるから。」
この場に景睿がいたら、
江左盟の教育方法に異議を唱えただろう。
しかし残念ながら飛流はこの教育方法の
何が悪いのか全く分かって無かった。
ただ、蔺晨哥哥の小馬鹿にした顔を思い出して、
機嫌が悪くなった。
◎◎◎◎
※嘘をつかない子供はいないですよね。
嘘は成長の証だと言うので、景睿は嫌かもですけど、
多少の嘘はつけるようにならないと、って個人的には思います。
せめて、優しい嘘はつけるように・・・
梅長蘇は飛流に、
庭生に何か手土産を持って行こうといいます。
一番の好きなものを。
飛流はそれを拒否します。
なぜならそれは、蘇哥哥だったからです。
「飛流が一番好きなのは蘇哥哥かい?
それは当然無理だよ・・・」
梅長蘇は笑って言いました。
「あの金の鎖帷子を送るのはどうだい?」
飛流はこれも「ダメ!」といいます。
何故なら、自分は必要ないので、
庭生も必要ないと考えたのです。
※この辺りはドラマと一緒ですね^^
そして、この金の鎖帷子を取り出す時に、
庭生からもらった木彫りの鷹も同じ箱から出て来ます。
※どこに仕舞ったか忘れちゃったのね(;^_^A
そして、いよいよ黎綱が来ます!!
家の中が片付いたら、
黎綱おじさんも引っ越してくるよ、
と飛流に言います。
梅長蘇は蜜柑の皮を剥いて、
一房飛流の口に入れてあげます。
※ほんと、可愛がってるなぁ・・・
飛流は黎綱が来て、
襲ってきた相手と戦う機会が減ることに
不満を感じます。
が、梅長蘇は蒙摯に来てもらって、
手合わせしてもらおうと言うと、喜びます。
そして、口を開けて次の蜜柑を待つのでした
梅長蘇は翌日、朝早く出発はせず、
家の中で香を焚いて琴を奏で、
時間を潰します。
靖王が運動を終え、
定例の軍議が終わったと思しきころ、
やっと輿を用意させ飛流を呼んで出発します。
裏壁同士は近いですが、正門へ向かうとなると、
かなり回り込む必要があります。
正門に着くと訪問を伝える紙を渡し
※氏名・住所・用件などを書いた紙(拜帖)を渡し、
訪いを告げる習慣があります。
ドラマではありませんでしたね(^^;)
↓こんな紙です(拜帖)
靖王は門に迎えには来ず、
執務室の虎影堂の前で待っていました。
紙に庭生の事が書いてあったので、
庭生も一緒でした。
少し太って背も伸びています。
出会った時の暗く委縮した様子はなく、
清潔な綿の服を着て、
服は優雅では無かったけれど、
柔らかく暖かそうです。
庭生の眉と目は祁王に似ていませんが、
上唇を下唇に巻き込んで笑う様子は
懐かしさを感じさせます。
梅長蘇と飛流を見た庭生は嬉しそうでしたが、
礼儀について厳しい教育を受けているようで、
子供のように飛び跳ねて喜ぶことはありませんでした。
※靖王きびしーーー!いかにもですね(笑
飛流は江左盟の中でずっと年下だったので、
庭生から「哥哥」と呼ばれることが嬉しいようです。
飛流が金の鎖帷子を庭生に渡すと、
靖王はそんな貴重なものは受け取れないと言いました。
梅長蘇は「飛流の贈り物なので、飛流におっしゃって下さい」
と返します。
靖王は何か言いたげでしたが、結局何も言いませんでした。
※ドラマと一緒ですね^^
ドラマ見たくなっちゃいます(^^;;
梅長蘇が訪れた時には
軍議はもう終わっていたはずですが、
何故か虎影堂に入ります。
中に居た配下達の顔はほとんど知っていましたが、、
幾人かは知らない人でした。
靖王が入室すると、一斉に拱手礼(きょうしゅれい)を行います。
◎◎◎◎
「こちらは蘇先生だ」靖王は簡単に紹介した。
何か一言付け加えようと思い、
ひねり出した一言が
「私の友人だ・・・以後宜しく頼む」
「はっ」みな一斉に答えた。
梅長蘇は淡々と笑って頷き、礼に代えた。
友人?ただ友人としか言えないのか?
まだ配下に’私の謀士’と宣言できないのか?
◎◎◎◎
※ドラマではどんな感じでしたかね?
うっすらとしか覚えがないですTT
林殊の?負けん気の強さが現れてますね^^
靖王は戦英に声を掛け、
書斎で梅長蘇と話をする事を伝えます。
書斎に向かう時、
二人は何故か一言も話しません。
実は書斎に向かうのに、
虎影堂を通る必要は無かったのです。
もちろん、梅長蘇は別の行き方を知っていました。
※昔よく訪れた場所ですもんね。
ドラマでも「遠回り」と言ってた気がしました・・・(^^;)
きっと訪問を告げる紙を見た時、
配下の者は好奇心で
最近話題の蘇哲とはどんな者か
見たかったのではないかと推察します。
◎◎◎◎
猛者ぞろいの配下は、病気で弱弱しい自分を見てどう思っただろうか。
軍には、労苦(ろうく)に耐えられない脆弱な人間を見下す気風がある。
聂叔が赤焰軍に加わったばかりの事を思い出した。
私と景琰の拒絶を受け、
幾つかの激戦に勝利した後、
やっと状況が改善したのではなかったか?
兵営の軍幕で策略を巡らし、兵を鼓舞する。
この赤焰軍の英知は
一旦兵を用いれば百の奇策を生み出したが、
彼が世に残した最期の言葉は
異常なほど簡単な一言だった。
「小殊、生き延びるんだ・・・」
黒煙の登る火柱をあの薄い背中に受け、
彼は全力で私を雪穴に押し込めた。
その時、この言葉を言ったのだ。
あの美しい両目には希望だけが見え、
恨みはの色は無かった。
彼は林殊を生かしたいと思っただけで、
生き延びた後何をするべきか、
聶真は何の言葉も残さなかった。
しかし死者は沈黙したままだが、
生者は忘れる事など出来ないのだ。
「蘇先生、体調が優れませんか?」靖王の声が傍らから聞こえた。
「顔が真っ白です」
「大丈夫です。今日は昨日より幾分寒く感じられます。」
「当然です。今日は冬至ですからね。」靖王は何かを思い出したように
遠くにいた兵士を手招きして命令した。
「書斎に火鉢を運べ」
兵士はすぐに立ち去り、梅長蘇は微笑しながら言った。
「感謝いたします。」
「書斎で火を焚く習慣がないのです。
先生は寒さを避けなければならないのに、
うかつだった。」
靖王の声は静かで凪いでいた。
「先生は最近引っ越しなされたとか。
お祝いに伺えず、申し訳ありません。」
「霓凰郡主が殿下に?」
靖王は淡々と笑っただけで何も答えなかったが、
そこに否定の意味は無かった。
あと一回曲がれば、書斎はすぐそこだ。
火鉢はもう運び込まれていたが、
置かれた時間が短かったため、
部屋の中の寒さはまだ抜けていなかった。
そこで梅長蘇は火鉢に一番近い席に座る。
顔を挙げ、靖王の視線が南側の窓下のあの席を掠めたのを見た時、
突然心に痛みがこみ上げてきた。
あの椅子は自分の指定席だった。
しかし今の自分は別人だ。
座りたくても座ることが出来ない。
もちろん景琰も承諾しないだろう。
◎◎◎◎
※ドラマでの梅嶺では林殊の父が手を放して、
林殊が崖から落としましたが(ですよね?)
原作は聶真が雪穴に押し込めたんですね・・・
そうなると、聶真自身もどこかの雪穴に入ることが出来たのでしょうか?
気になりますね!
かつて、林殊は何度も靖王府を訪れていたので、
思い出が一杯の場所ですよね。
変わってしまった自分が、
無邪気な過去の自分と向き合うなんて
とても辛いことだと思います。
ドラマでも何度も描かれていますが、
小説も良いな・・・と思いました。
梅長蘇は慶国公の事案(土地略奪事案)について、
誉王への遠慮はいらないと言います。
靖王は元々遠慮するつもりは無いと答えました。
懸鏡司が証拠を集めているので、
この事案は難しくないと。
しかし、慶国公は一品の軍侯なので恩赦を受ける権利があります。
靖王は三人も殺しているので、恩赦は受けられないと答えます。
慶国公の密書も証拠としてあるので罪は免れないと。
梅長蘇はこの件を厳しく取り締まると、
今まで勝手な土地の併合のために
何人も亡くなっているのにも関わらず、
無視してきた州府衙門が対応せざるを得なくるが、
この困難を引き受ける自信があるかと靖王に問います。
靖王は「兵によって防ぎ、水によって土を覆う」と答えました。
梅長蘇は、靖王には険しい道も、
何事もない平らな道に見えてしまう気性が
まだ残されていると知り、
激励する必要は無いと考えました。
そして、全ての事案を一律に処理するのではなく、
個々の状況に応じて対応することを勧めます。
靖王はそんな事をしたら効果が出ないのではと返しますが、
梅長蘇は誉王が協力してくれるのだから、
あまり冷たくしない方が良いと伝えます。
何より一番大切なのは、
誉王は陛下に逆らえないという事実。
◎◎◎◎
梅長蘇は手を伸ばして炭火で手を暖め、
目を軽く光らせ、
「慶国公が消え、謝玉が残り、彼(誉王)は慌てざるを得ません。
今の状況下では、彼にとって殿下は非常に重要な存在となります。」
「私を特別な存在にするために、
先生のおかげで慶国公を排除することができ、
謝玉の立場も明確になった。」
靖王は冷淡に「ふん」と声をだし、
「本当にありがたいことだ。」
「どうかなさいましたか?
殿下は私の功績がご不満ですか?」
「私は誉王一派になりたくないのだ・・・
皇太子と誉王、
どちら側にも立ちたくない。」
「少し悔しい思いをいたしましょうが、
度を越した事までして頂く必要はありません。
それに殿下は今まで日の目をみずにおりました。
他の者もみな理解いたしましょう。」
「私は、人になんと見られようと全く気にしない」
靖王は軽く歯を食いしばり、視線は少し定まらぬ様子で
「だが死んだ者たちに顔向けが出来ない。
彼らにこのような所を見られたくは無い。」
梅長蘇は胸中に燃え盛る火が沸き起こるのを感じた。
それが落ち着くのをしばし待ち、言った。
「死んだ者たちは、
ただ上辺だけを見ている訳ではありません。
貴方のお心は十分承知のはずです。
これは全て便宜的な対応です。」
「私も分かっている。
これは私自身の選択だ。
悔しい悔しくないの問題ではない。」
靖王は深呼吸をし、
「全て指示通りに行う。安心してくれ。」
◎◎◎◎
※梅長蘇の抑えきれない熱い気持ちが良く分かりますね・・・
靖王の前では林殊の激しさが垣間見られます^^
表情には出さないようにしていますが。
決して寒さに怯えるだけの謀士では無いのです・・・
靖王の気持ちが定まったところで、
ドラマでもあった三司の人事に話は入ります。
推挙する人物の氏名が書かれた紙を靖王に渡します。
靖王も満足する人選でしたが、
梅長蘇は深く付き合っても良いが、
靖王の手足にはならないだろうと言います。
靖王もその意味を分かっていました。
梅長蘇は、
もしその者たちが靖王の補佐を務めたら、
皇太子や誉王に警戒されてしまう。
それよりも今必要なのは忠実で誠実な臣下だと。
※ドラマでも言っていましたね!
※なんと訳していたかな・・・分かりやすく訳していました
さすがプロは違う(;^_^A
忠実で誠実な臣下が増えると、権力争いは徐々になくなり、
靖王も居心地が良くなると。
そして、靖王は彼らと誠実に付き合うだけで良い、
汚い仕事は全部自分が引き受けると。
そして、実は数日前、梅長蘇は靖王に手紙を出していました。
慶雲楼に半日滞在するように書かれていたようです。
そこで、靖王は沈追に出会います。
彼はその店の仕入れ係に薪、米、油、塩、肉、野菜、卵の
値段を細かく聞いていたので、靖王の目を惹いたそうです。
梅長蘇は、戸部が掌握している国庫の食料は、
国民の為あるべきだが、
楼之敬が腐敗の温床としてしまい、
沈追ただ一人が真剣に国庫の事を考えている人になってしまった。
次の人事では、皇太子と誉王の争いが強まるので、
漁夫の利を狙うと梅長蘇はいいました。
※細かいエピソードは違いますが、結局漁夫の利はおなじですね!
靖王はさすが’麒麟の才子’の名に恥じないと褒めます。
ところが、梅長蘇は渋い表情をして瞼をおろして答えません。
”才気だと?人の上を行こうと思ったのなら、
ただ苦心惨憺(くしんさんたん)あるのみだ。
この件は、当然用意周到に考えていたのだ。”
と、心の中で思います。
※凄いですね、天才とは言え、
やはり用意周到に考えているのですね・・・
’麒麟の才子’を演出しているとも言えますが・・・
でも、林殊は文武両道だったようですし、人の上に立つ才能も
あるので、天才と言えば天才ですけど、努力しているという事を
靖王には分かって貰いたかったのでしょうか???
梅長蘇は今後、礼部、吏部、刑部にも欠員が出るだろうから、
今渡した名簿の人物に実績を作らせ、皇上へ好印象を抱かせるように、
と言いました。そして・・・
◎◎◎◎
「近々では何も起きないでしょうが、
殿下は粛々と土地略奪事案を処理してください。」
梅長蘇は瞳に少し激しさを現し
「年が明けたら、何敬中と斉敏、
そしてその主を共に舞台に引きずり出します。」
簡単な一言だったが、梅長蘇の口から発せられたこの言葉が
まるで雲が沸き起こる雷鳴を思わせたので、疑う余地も無かった。
靖王は端正で優雅、落ち着きのある書生を凝視しながら
彼が入城後、明に暗に様々な変化を起こしていることを思い、
知れず心中に感慨を覚えた。
この向かう所敵なしの江左梅郎がなぜこのように
心に固く私を主として選んだのだろうか?
彼が言ったことが実現したとして、
寵愛を受けていない皇子が重用され、
さらに高い位まで上る事が出来るのだろうか?
◎◎◎◎
※靖王の苦悩と疑念が良く分かる描写でした。
ドラマでは梅長蘇を今一歩信用しきれていないのは、
裏返すと自分自身を疑っていたのかもしれません・・・
何となくそう思いました。
そして靖王は、金陵の東郊外の山に珍獣が現れた事を告げます。
生け捕りにしたいと。
梅長蘇も生け捕りしたら見てみたいと答えます。
靖王は好奇心旺盛な梅長蘇を意外に思います。
そして・・・
◎◎◎◎
「もしや殿下は、蘇の腹は陰謀で一杯だとお思いでしょうか?」
梅長蘇は自嘲しながら立ち上がり、
強張った足を解そうと何歩か歩き、
西側の窓に近づいた。
窓近くの朱赤の鉄弓に触れようとした時・・・
「触れるな!」靖王はすぐに叫び、梅長蘇は驚いて手を止めた。
一瞬の沈黙ののち、手をゆっくりと下し、
振り返らずに低い声で言った。「申し訳ございません。」
靖王も失礼だったと思い、恥じ入りながら言った。
「それは友人の遺品で・・・彼は生前・・・
知らない者が彼の物に触れるのを嫌がったのだ。」
梅長蘇は呆然と頷き、何も言わず、窓の前に立ち、気を取り戻し、
何の前置きも無く突然辞去の意を示した。
靖王は彼が鉄弓に触る事を許さなかったので、気分を害したと思い、
少し申し訳なさを感じた。
しかし申し訳ないが林殊の鉄弓は、他人が気軽に触れて良い物ではない。
が、どうしたら良いか分からず、見送りのために立ち上がった。
肩を並べて書斎を出る。いくらか気まずい雰囲気の中、
梅長蘇は何も話したくない様子で、
靖王も冗談を言うのに長けてはいなかったので、
2人は練兵場近くに到着するまで押し黙り続け、
そこで足を止めた。
実は正門に向かって正式な道はあるのだが、この道は別の道だった。
2人とも暗黙の了解で(正門とは)反対の方向の道を選んで
ここまで歩いてきたのだが、
それはここに飛流がいるだろうと思ったからだった。
◎◎◎◎
※痛い・・・心が痛いですね・・・(´;ω;`)
靖王もまさか梅長蘇が林殊だなんて思っていませんから。
梅長蘇の哀しみを考えると、本当に辛いです・・・
でも、言葉に出さなくても飛流が居ると思われる
練兵場まで同じ道を選んでしまいますよね・・・
道案内しなくても梅長蘇が迷いもなく同じ道を歩いている事に、
靖王は気が付いていない・・・
ドラマでもそうですが、無意識に林殊が出ていて、
靖王も自然過ぎて気が付いていないパターンがあったと思います。
もしくは無理やり誤魔化す笑(霓凰と飛流に責任転嫁する
ただ、九安山ではさすがに色々気が付いていましたけど(^^;)
靖王府は他の皇子府と違い、内庭が遠く、凝っていて、
反対に前庭がとても広く、そこには歩兵の練兵場があるばかりでなく、
乗馬の技術を磨く馬場もあります。
※そして、いよいよクライマックスです!!
ドラマとは違う雰囲気なのでぜひお楽しみください(^▽^)/
飛流がいるために、練兵場中央はとても賑やかです。
飛流は庭生を遠く避難させていました。
靖王が向かってくるのを見た配下たちは、道を開け次々と拱手礼をします。
靖王は梅長蘇が何も言わないので、続けるように言いました。
長槍を持った者が挑みますが、すぐに負けてしまいます。
次は戚将軍が挑みます。
盛り上がる中、靖王は後ろ手に立ち、表情は淡々としています。
戚将軍は曲がった刀(弯刀)を使う為、飛流は興味津々です。
最初は刀をよく見るために軽く攻撃していたのですが、
見飽きると攻撃の速度を上げ、猛烈な勢いで攻め立て始めました。
そして、その刀を弾いたので、刀は木の幹に突き刺さりました。
戚猛はその刀を引き抜きざま、放り投げたのです。
◎◎◎◎
梅長蘇は顔色一つ変えず、
ただ漆黒の瞳孔を瞬間的に
強烈に絞った。
何故なら、その刀は彼の喉元に向かって飛んで来たからだった。
もし以前の林殊だったら、
飛んできた刀をそのままにはしておかない。
しかし、現在はすでにその技術は無く、
普通のたくましい男ですら避けきれぬのに、
この雪のような きっさき を避けることは
絶対に不可能だ。
避けられはしなかったが、
避ける必要など無かった。
梅長蘇はただそこに立ったままで、
一歩も動かなかった。
飛流の影は刀身に変化したかのように、
まっすぐ刀を追ったが、
最初の反応が遅れ、一歩遅かった。
飛んできた刀の柄は、
最終的には靖王により掴み取られた。
きっさきは梅長蘇の喉から
指4本分足らずの距離だった。
ただしその軌道は少し曲がっており、
もし靖王が止めなくとも、
首を掠めて飛んで行くはずだった。
梅長蘇は飛流に向かって軽く手を振った。
誰もその意味は分からなかったが、
飛流はすぐに一切の動作を止め、
静かにその場に立った。
戚猛は頭を掻き掻き、ハハハと笑って言った。
「手が滑りました。学者方は刀など見慣れていないので、
驚きましたかな?」
梅長蘇は深刻な顔をして、
眼光はまるでつららの様に
戚猛の顔に突き刺した。
このような場面は軍の中で少なく無い。
新人に対して、
別の隊から異動して来た者に対して、
好感の待てなかった人物に対して、
往々にしてこの様な脅しを行う。
もし相手の対応が良ければ、
仲間と認められる一歩となる。
林殊にもかつて同じ事をしたことがあった。
その年、父が1人の40才で兵部の閑職にあった、
痩せて弱々しい文士を赤焔軍に入隊させ、
要職に就かせた。
血気盛んな年少の
小将軍は自分の剣を故意に折り、
その刀身の破片をあの薄い体に向かって
飛ばし、彼の胆力を試した。
あの時、父は軍棍で特に重い罰を自分に下し、
3日間は起き上がれなくなるほどの
杖刑を処した。
梅長蘇は、靖王はこの件を必ず覚えており、
また当時父が自分に話した言葉を忘れていない
と信じていた。
杖刑に処する場所で、
当の聶真は一言も情けを乞うことはしなかった。
何故なら林殊が杖刑になった原因は
聶真を挑発した事ではなく、
聶真を挑発した時に、
側に祁王殿下が居たからだった。
※梅嶺で林殊を雪に閉じ込めたのは聶真でした。
聂鋒は前鋒大将なので、たぶん親族かな・・・?
だからさっき、聂叔としか書いていなくて、
フルネームじゃなかったのですね・・・。
しかも林殊、同じことやってたんかーい!笑
そりゃね、まずいよね・・・完全に若気の至り。
今あの刀が飛んできた時、
靖王が自分の側に居た時と同じ様に。
戚猛に悪意が無かったとしても、
目標は靖王で無かったとしても、
刀身のきっさきを
自分の主がいる方向へ飛ばしたのだ。
もし靖王が現在の地位に甘んじ、
将来の最終到達点が大将軍王だと仮定したなら、
一笑に伏す事が出来るだろう。
しかし、現在の状況はすでに変わった。
彼の壮大な志と、
大梁の1番尊い玉座を目指すと決めたからには
意識的に君主に足る気質を育てなければならない。
どんな方法でも、この種の事柄や
礼を失する態度を軽視してはならないのだ。
靖王の重苦しい、まるで鉄の板の様な顔を見た
笑っていたはずの戚猛は
何かいつもと違うと感じ、
慌てた彼は意識せず視線を
自分の左前方へ向けた。
靖王麾下の中でも品級が高い将軍たちが立っている方向で、
みな緊張した面持ちをしており、
その中の1人は
暗に戚猛が跪くよう手で促した。
「失礼を致しました。先生に謝罪致します。
どうか私が粗野であることに免じ、
お咎め下さいませんよう。」
戚猛は靖王が怒ったとしても、
蘇哲を重用しているため、
彼を悩ませるのは失礼と考え、
殿下はすぐに彼の意見に応えると思い、
梅長蘇に向かって拱手礼を行った。
「私への謝罪は不要です。」
梅長蘇は冷たく笑い、
出て来た言葉はまるで毒を塗った刃(やいば)の様だ。
「いずれにせよ、恥をかいたのはは靖王で、
この私ではありません。」
彼はこの言葉がどんな騒動をもたらすか全く気にかけず、
両目の眼光は依然として冷たく、
視線は戚猛から離れ靖王の顔へ移った。
「蘇は殿下の軍の統制力に敬意を持っておりましたが、
まさか本日この様な事態を見るとは思わず、
とても失望いたしました。
軍紀になど目もくれない烏合の衆でございますね。
なるほど、陛下の目に留まるはずもありません。
靖王殿下に向けて刀を飛ばすなどと、
全く良い習慣でございますね。
殿下と配下間の礼儀や振る舞い、威厳は、
私のような江湖の宗主にも及びません。
蘇は本日目が覚めました…失礼致します。」
彼が半分話終わった時、
戚猛の額は冷や汗で満ち、
"ドスン"と音を立てて平伏した。
靖王は冷たく彼を見ながら、
一言も発せず、
顔はまるで氷のように冷たい。
その場に居た全員が口をつぐみ、
季節外れの蝉のように震え、
次々と平伏し、
事情がよく飲み込めない庭生でさえも
この雰囲気に気圧され、静かに平伏した。
梅長蘇が飛流を連れて
まるで周りに人が居ないかのように
真っ直ぐ府門を出て行った時、
敢えて彼を引き止める者は1人もいなかった。
みな蘇哲の言葉は受け入れ難かったが、
一つとして間違った事は
言っていなかった。
力試を通じて外部の人間を試す慣例は、
靖王がその場に居るか居ないかで
大いに違ってくるはずだ。
「殿下」靖王府で品級が1番高い中郎将の戦英は低い声で
「我々は誤りを認めます。
どうかお怒りをお納め下さい。
罰をお受けいたします。」
戚猛は頭を猛烈に打ち付けながら、
震える声で言った。
「殿下、罰をお与え下さい。」
靖王の眼光は冷たく周囲を見渡し、
彼の視線から逃れようとさらに低頭平伏した部下たちを見てから、
戚猛へ戻って来た。
梅長蘇の鋭い言葉は大きな課題を残した。
靖王は…内部を正さなければならない。
あの尊い存在を目指す道を選んだからには、
変えてゆく必要があるものが、
想像以上に多かった。
土地併合事案の拠り所にすると同時に、
梅長蘇は靖王府の隅から隅まで
一つの鉄板として鍛え直さなければならなかった。
靖王は初めて肩の重荷を感じたが、
彼の背はこの事により、更に真っ直ぐに伸びた。
「戚猛は無礼千万、思い上がりも甚だしい。
よって軍棍五十打に処し、百人長へ降格。
戦映、責任を持って刑を実行せよ。」
この一言を残し、靖王は身を翻して
大股でその場を離れ、
どうしたら良いか分からない配下を
練兵場へ残して去った。
◎◎◎◎
※丸々2ページ分を翻訳してしまいました・・・
梅長蘇の瞳孔が縮む辺りから、靖王が練兵場を立ち去るまで。
情報が盛りだくさん、良いシーンの連続で、割愛できなかったのですTT
ドラマでは梅長蘇の後ろに刺さった刀ですが、
実は靖王が掴み取っていたなんて・・・超人ですか?
カッコいいです。
何故か靖王は私の中でずっと王凯のままです。
イメージがドラマとあまり変わらないせいかもしれません。
梅嶺のシーンもドラマと違いました。
お父さんが手を離したと思ってたんですけど(^^;)
まさかの別人。
そして林殊、新人いじめか?
無視したりしてるしな・・・。
若気の至りとは言え、やりすぎーー(;^_^A
今の梅長蘇だったら絶対にしないでしょう・・・
それだけ成長したと言う事ですよね。
もちろん、10代と30代近くは成熟度が違うはずだし、
林殊は過酷な経験をして梅長蘇になってますからね・・・
ちなみに、ドラマオープニングで
蝶々が出て来ますが、
蝶は完全変態をする昆虫なので、
古来から再生と魂、霊魂の象徴とされていたそうです。
やっぱり意味があったのか・・・
調べて良かった。
↓