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それはまるで蜜のようでも、苦い薬のようでもあり

9/10、BUMP OF CHICKENの新曲「Gravity」がリリースされた。
BUMP OF CHICKENは、こちらでも度々記事を書かせて頂いている私の最推しである。
そして「Gravity」は、同名漫画を原作とする映画「思い、思われ、ふり、ふられ」アニメ版(9/18公開予定)の主題歌でもある。バラード曲で、映画の主題歌らしい華やかさドラマチックさも持ちながら、やさしい、きゅんとするような切ないアコースティックギターのイントロと歌声から始まる。

帰ろうとしない帰り道 いつもどおり
視界の隅っこ ほとんど外 君が鼻をすすった
空を割る夕方のサイレン
給水塔の下 あれは蝙蝠
僕らは時計を見ないようにしていたけど
そんな風にして時間に気付いてしまうから
かき消すように喋ろうとして
なんだかやっぱり黙ってしまう

もう帰らなきゃいけないけど、帰りたくないから、多分お互いの顔を見られていなくて、でもきっと、言いたいことは山ほどあって、そのどれも言葉にならなくて、もしかしたら決して短くない時間そうしているのだろうな。
そうこうしているうちに夕方のサイレンが鳴って、ああそうか、夕方のサイレンって防災スピーカーから流れるから大きな音するもんね。だから、「空が割れる」なんだな。自分だったら思いつかないな。そんなことを考える。
考えながらぼろぼろと泣いた。すぐ隣で子供が眠っていたので、顔を覆って、眼鏡をびしゃびしゃにして、声を殺して泣いた。情景は全く違うのに、彼らのライブの、とてもいとおしい時間の記憶と重なったからだった。

以前、"「イマ」のあなたにBUMP OF CHICKEN"という記事で、「行間のインパクトがすごい」という旨のことを書かせていただいたことがある。

https://note.com/banamaretto_boc/n/ndfbdb0b2e679

この「Gravity」も同じで、形にしない・ならない想いがぎゅーーっと詰まっているように思う。その加減が絶妙で、だからこそ、受け取った自分の記憶や体験や想いに重なって、曲に見つけてもらったように思うのかもしれない。

「見つけてもらった」と感じるのと一緒に、彼らの音楽に対して頻繁に持つのは、「綺麗な水をたっぷり注いでもらっているイメージ」だ。いい具合のガラスのピッチャーに十分な量が入っていて、冷たくて、飲んだらおいしいやつ。
この「水を注いでもらう」イメージは、実は、彼らの音楽に出会う前にも感じたことがあった。すくってもらったというか、視界を晴らしてくれたというか、そういう歌に出会えた時に、あーいまとぷとぷ入れてもらってるなーと思う。パッと思いつくところでいうと、大橋トリオさんと秦基博さんの「モンスター」とか。
その綺麗な水は、音として耳から入って、血に溶けて体をぐるりと回って、ここ傷になってるよーとか教えてくれて、最後涙になって出てくる。
要は"デトックス"というやつだと思うけれど、その一言で片付けてしまうのはあんまりな気がするので、まどろっこしい説明のままで居させてほしい。

新しい音楽も同じだった。
気がつかないうちに閉じ込めていたもの、なんとなく我慢していたこと。そういうものを拾ってくれる。それらは追いやっていたものだから、認識しちゃうと大なり小なり痛い。でもやさしくてあたたかい。傷があるのが分かったら、手当てすることもできるのだから。

「Gravity」は現在各音楽サービスにて配信中で、ファンタジックな雰囲気のMVも公開されている。
気になるよー、という方がいらしたら、視聴していただけたら嬉しいです。​

※記事内の引用は、BUMP OF CHICKEN「Gravity」の歌詞より


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