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「足跡」

先日、三次元の最推しであるBUMP OF CHICKENの新しいアルバム「Iris」がリリースされた。前作のaurora arcから5年ぶりのアルバムである。5年!言葉にしてみると、そんなに間が開いていたんだなぁと不思議な気持ちになるけど、aurora arc発売当時うちの子はまだぱやぱやの赤子だったことを考えれば、確かに5年だ。

aurora arcもそうだったけれど、Irisの収録曲はタイアップ作品が多い。多いというか、「ほとんど」だ。これはもう、私個人としてはとんでもなくすごいことだと思っている。だってそれはつまり、制作側の方から主題歌をぜひBUMP OF CHICKENにとひっきりなしに依頼が来ているということだ。私はただのファンだけど、烏滸がましくも勝手に誇らしく思っている。
色んなSNSで見るに、「BUMP OF CHICKENの主題歌」は、タイアップ先作品のファンの方から基本的に評価が大変高い(と、思っている)。作品タイトルとか、キーワードはほぼ入っていないことが多いのに、ちゃんとその作品のことであると分かるし、逆に、作品に関するキーワードが入っていない(ことがほとんどである)から、その音楽を作品と切り離して聴くこともできる。これは、ソングライターの藤原さんがおっしゃる、「自分たちの音楽と、作品との、円の重なる部分を音楽にしている」というところからだろうと思う。

これを踏まえて、自分の音楽の受け取り方をちょっと思い返して見る。
BUMP OF CHICKENの音楽は、私の場合、耳から入って一番最初に、まず自分の感情・記憶・経験・現在と照合される。で、そこから、タイアップ先作品のことを知ると、おおーなるほどこういうところぴったりじゃん!!!となる。
彼らの音楽について一番はじめに衝撃を受けたのは、ここでも何度かかかせてもらっているが、「3月のライオン」のコミックスコラボである「ファイター」だ。この曲を知った時、今ほどはBUMP OF CHICKENのことを知らないので、当時の私はしっかりと「何これ思いっきり零くんの歌じゃん!!!」と思っていた。もう、歌詞のあらゆるピースがぱちりぱちりと零くんのイメージに当てはまって、「ちょっと待て何だこれ!!?!?」である。
それから少し時間が経って、ファイターも含めて、少しずつ、彼らの音楽は、それが何かの主題歌であれ、"彼らと私の間にあるもの"になった。歌詞で歌われる「僕」「私」は、たびたび音楽を届ける「彼ら」ではなく、受け取る「私」になり、「君」「あなた」はBUMP OF CHICKENになる。何を言ってるかわからねえと思うが、そうとしか言いようがない。伝われ、伝わってくれ。

アルバム「Iris」の話に戻る。
「Iris」は、アーティスト公式ウェブサイトに
"バンドが歩んできた5年間のドキュメンタリーのようなアルバム"
と紹介されている。

前述の通り、「Iris」に収められている音楽たちは、そのほとんどが、何かしらの作品とのタイアップだ。それはそうなんだけど、私にとってはそれ以上に、彼らの活動のドキュメンタリーであり、まるで違うフィールドで歩く、自分の足跡のようにも思っている。だって、どうにもままならない下手くそな毎日に、一緒に歩いてきてくれた音楽たちだから。迷って蛇行して、おんなじところをぐるぐる回っているだけかもしれないけど、自分なりにでも、なんとか踏ん張ってきたじゃないか。

このアルバムを引っ提げてのツアー「Sphery Rendezvous」の大阪京セラドーム公演の2日目に行ってきた。この記事を書いている2日前のことだ。
実は、始まるまで、今回は泣かないでいられるかもしれない、だってIrisどっちかっていうとウキウキで聴けているし、とかぼんやり思っていたのだけど、同じ音楽を会場で受け取ったその瞬間に、いやもうそれどころか照明が落ちたところで、どうしようもなく涙がでて止まらなくなった。泣かないかもの自信の根拠は一体どこからきたのか。いくらなんでも声は出さないけど、延々と子供みたいに泣いて、宿に帰って鏡を見たら、普段から大して大きくもない目が、腫れて2/3くらいになっていた。そりゃこの顔を見れば、友人たちも「泣いたねぇ」と言うわけである。

しあわせな時間は、あっという間にすぎて行ってしまった。日常は容赦なく迎えにきて、またおおよそ繰り返しの毎日が始まる。
ちゃんと、とはとても言い難いけど、似たような毎日の繰り返しでも、歩いている。「うまくいかなかった」も、きっと足跡だ。
幸運なことに、大好きな人たち大好きな音楽に会える待ち合わせの約束がもう一つある。そこまで、いやその先も、なんとか繋いでいこうと思う。

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