【法規】「電線」「ケーブル」「コード」という用語の、定義の有無について
はじめに
法令には上記のように、電気工事において使用すべき電線類を規定しているものがある。しかし、「電線」「ケーブル」「コード」という3種類の用語は一般には同じものを指すことが多く、分類について直感的に理解するのは難しい。これらの用語が法令において実際にどのように定義されていたり、いなかったりするのかについて調べた。
引用する法令の表記
引用する法令は《》内に表す。また、以下の略称を用いる。
電技:『電気設備に関する技術基準を定める省令』
電技解:『電気設備の技術基準の解釈』
電技説:『電気設備に関する技術基準を定める省令の解説』
内:『内線規程』
「電線」は特殊な定義がある
一般には「ある点からある点へ電気を伝えるために線状に作られたもの」全般を表す「電線」という用語について、『電気設備に関する技術基準を定める省令』は強電流電気を伝送するものに特定して定義している。そのうえで、この特定された「電線」と区別して「弱電流電線」という用語を定義している。
これらは伝送する電気の強弱による分類であり、電線類の構造や特性による分類ではない。また、電技説の定義は電技が特定して用いた「電線」という用語を「弱電流電線」の定義に循環させてしまっているので、あまり適切な表現ではないように思う。これはそもそも「電線」という多義的な用語を特定的に用いている電技の定義が混乱を生んでいるとも解釈できる。
先に示したように電技第二十一条においては低圧又は高圧の架空電線に「絶縁電線」「ケーブル」以外の使用を認めていないが、この「絶縁電線」「ケーブル」という用語については、電技のみならず電技解にも電技説にも定義はない。
「ケーブル」は通称
法令には「ケーブル」という用語の定義がないうえ、この用語は「ケーブル」と法令が区別している「絶縁電線」(絶縁被覆された線状の電気導体)をあらわすもの(「エコケーブル」など)や、そもそも電気導体でないもの(「光ファイバケーブル」など)においても広く用いられている。日本電線工業会が「光ファイバケーブル」も「電線」と呼ぶようになったとしているのは、「電線」という言葉が「電柱を伝うもの」全般を指すことに由来するものと思われる。
電気関係法令が想定している「ケーブル」とは慣用的には、絶縁電線を複数束ね、それをシースによって覆ったものであるが、この定義ではまだ、「ケーブル」と「コード」との区別が不明瞭なままである。
「コード」は「移動電線」の一種
コードは、内線規程によって移動電線としての使用に限定されている。ケーブルや絶縁電線よりも可とう性の高いコードはそれゆえに構造的に脆い電線でもあるため、耐久性を必要とする場所(屋外等)では使用できない。
移動電線の定義は電技解にある。
移動電線はさらに、「コード」と「キャブタイヤケーブル」に大別され、種類によって施工可能な場所が定められている《内・3203-1表》。
VCTはキャブタイヤケーブルであるが、記号の似たVCTFは「コード」に分類されるなど、紛らわしいケースもある。
詳細な電線類の分類については下表を参照のこと。
電線・ケーブルの分類と記号・名称(日本電線工業会)
https://jecamec.jp/pdf/densen_kijun.pdf