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17. あとがき
「ディジュリドゥの選び方」についてアレコレ書いていたら、思いがけず長いコラムになりました。書き終わってみたら、これって今までの自分が受けたショッキングな現地体験や、彼らに譲ってもらったユーズド or プライベートの楽器との悪戦苦闘の歴史そのものだな~、って思いました。
「彼らの演奏とぼくの演奏は決定的に何かが違う!」と一番最初にぼくが感じたのは2002年に北東アーネム・ランドのSki Beachで日がな続くGalpuクランの葬儀に何日も参列し、その時に一人で一日中イダキを演奏し続けていた故N. Yunupinguが使っていたイダキを触らせてもらった時でした。
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その日の儀式が終わって帰路につく彼に声をかけると、日本で一度会っていたこともあって快く対応してくれて、光栄なことに彼の使っていたイダキを鳴らさせてもらいました。テープを巻かれたヨォルングのプライベート・イダキを触ったのはその時が初体験で、当時の自分には驚愕のマウスピースの大きさで、まともに鳴らせませんでした。
サイズを計ったわけではないんですが、内径3.6-3.8cmくらいあったんじゃないかなと思います。ロープレッシャーでマウスピースが大きく、ぼくが鳴らすとガスガスでスカスカ。「コ、コ、コ、コレであんな音を!? しかも一日中!?」
ガツーンとバットで頭を殴られたようなショックで、なんてコメントして彼にイダキを返却したのかさえ覚えていません(恥)。
当時のぼくは「伝統奏法では唇を小さく小さく絞って演奏するものだ」という先入観があって、そのやり方では全く太刀打ちできないイダキを、いとも簡単に自由にのびのびと演奏していた彼の姿にショックを受けたのでした。その後、何度も同じようなことを繰り返し体験しました。
その結果、「彼らの演奏とぼくの演奏は決定的に何かが違う」のは当然のこととして、その前提として「彼らが選ぶ楽器とぼくが選ぶ楽器は違う」ということから、まずは変えてみようと思ったのでした。
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それ以降、それが自分にとっていいと思える楽器じゃなかったとしても、彼らが使っていた楽器を頼み込んで譲ってもらい、収集し続けてきました。そして彼らが選ぶ楽器という鍵穴にフィットする鍵に自分がなろう、という努力をし続けてきた結果、イダキの空洞の中で彼らとグっと握手するような、そんな変化が少しづつ起こってきたように感じます。
当初は「コレぇ~?うーん。」と頭を悩まし、徐々に彼らの好む楽器がニアリーイコール自分の好む楽器になっていき、そしていつしか彼らの選ぶ楽器に触れると「あぁ~、なるほど」と腑に落ちるようになっていきました。
だからこのマガジン「ディジュリドゥの選び方」で書いた内容は、半分はショッキングな現地体験と彼らとのコミュニケーションの中からいただいた金言をベースにしたもの。そしてもう半分が楽器との触れ合いを通じたセルフラーニングから得られたものです。
ですので50%は誰しもができるメソッドとして活用できるんじゃないかと思うんです。そしてそのために彼らのユーズド or プライベートの楽器を集めてきたと言っても過言ではありません。
もちろん自分から生まれた疑問が出発点ですが、彼らの好む楽器の情報をシェアし、どうやったら彼らの感覚に近づけるのか、という手がかりにしてほしいという願いはいつも心の中にあり、Earth Tubeの楽器選びは彼らに譲ってもらった楽器がベースになっています。
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僕自身いまだ学びの最中にあるので、現時点で感じることをまとめたものにすぎませんが、一つの参考にしてもらえたら幸いです。またコンテンポラリーとトラディショナルといったスタイルに関係なく、あらゆるディジュリドゥ奏者に、ディジュリドゥのオリジンであるトップエンドのアボリジナルが作った楽器に触れてもらいたいと願います。最後にGalpuクランの古老の言葉で締めたいと思います。
「Put Happy in the Didjeridu. (B. Gurruwiwi)」
2023 JUN 24 GORI
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