1. ディジュリドゥとは - 基本情報
ディジュリドゥが演奏されるようになったのは紀元前1,000年頃
ディジュリドゥはオーストラリア北部のトップエンドと呼ばれるエリアの先住民アボリジナルの伝統楽器です。ディジュリドゥは数万年前から存在するとも言われます。
しかし、岩に描かれたた壁画ロックアートの研究から、ディジュリドゥが壁画に登場するのは「ポスト河口時代(※1.)」、あるいは「後期Mimi時代(※2.)」と呼ばれる時代であることが示唆されるようになりました。その結果、研究者の見解ではディジュリドゥは紀元前1000年頃から使われるようになったとも考えられています。
1800年代までディジュリドゥの素材は竹が中心だった
また、ディジュリドゥはシロアリが食べて空洞になったユーカリで作られるという定説がありますが、1800年代のノーザンテリトリー州北部ではディジュリドゥに使われる素材は「竹」が中心だったと考えられています
おそらくアボリジナルの人々がディジュリドゥ作りに使っていたハンドツールは石斧などの石器でした。それが1600-1700年代頃に始まったとされるインドネシアのスラウェシ島の漁民マカッサンの人々からナイフなどの鉄器が持たらされたと言われています。
少ないハンドツールだけでディジュリドゥを作る場合、ユーカリの木よりも竹の方が簡単に作ることができたと想像されます。1800年代頃までは竹「Bambusa Arnhemica」の生息していた地域とその周辺がディジュリドゥの中心的エリアだったとも考えられます。
現在では竹で作られることはほとんどなく、グラインダーや電動カンナなどの電動工具や、専用の長いノミなど様々なのツールを使って、ユーカリのストリンンギーバーク(Eucalyptus Tetrodonata)、ウーリィバット(E. Miniata)、Katherine付近より南ではレッドリバーガム(E. Cmaldulensis)で作られることが多くなりました。やしの木(Livistona Humilis)やパンダナスで作らることもあるといいます。
現代のユーカリの木を使ったディジュリドゥ作り
現代のアボリジナルのディジュリドゥ作りでは、シロアリがユーカリの中心部分を食べて空洞になった木を切り倒し、一般的に1m~1.8m前後の長さにカットし、樹皮をはいで余分な部分を削り、唇をあてるマウスピースの部分と一番下のボトムの部分をノミで調整して作らるのが一般的です。
マウスピースの大きさは内径25~40mm前後の大きさになるように作られるのが一般的ですが、大きすぎる場合にはシュガーバグと呼ばれるオーストラリア固有種の蜂の黒い蜜蝋(プロポリス)を使って、前述のサイズになるように成形されます。
グラインダーで削ったあとにサンドペーパーで磨いて木工用ボンドで塗装します。乾燥させた後に岩絵具であるオーカ、あるいはアクリル絵の具でそれぞれの作者のトーテムや氏族(※3.)特有のデザイン(ヘビ、魚、水、雲、など)が赤白黒黄の4色で楽器の表面に描かれます。
ディジュリドゥの演奏について
リコーダーのように指で押さえる穴はなく、伝統的には「B~G#」ほどの音程になるように調整され、ワンノートの持続低音のドローン、裏声を使ったコール、トランペットのようなトゥーツの3種類の音が循環呼吸で途切れることなく鳴らされます。
ディジュリドゥは伝統的にソロ楽器として演奏されることはありません。両手にクラップスティックを持った一人以上のソングマン、複数のダンサーたちに加えて、一人のディジュリドゥ奏者が伴奏するという楽団という形でパフォームされます。二人以上のディジュリドゥ奏者が同時に演奏するということはされありません。
※1. ポスト河口時代
Chaloupkaによる造語。海面上昇により、沿岸部の住民が内陸へ移動していく「河口状況」が現在から約7000年から9000年前に常態化しました。その内陸部が河口化した「ポスト河口時代」は紀元前1000年頃、あるいはそれ以前から始まります。この時期アーネム・ランドの高地にバラマンディやイリエワニなど河口部の生き物たちがロックペイントに登場し、内陸部まで沿岸部が押し寄せてきていたことを物語っているとする見解。
※2. 後期Mimi時代
Eric Brandlはロックアートに描かれるMimiスピリットの構図と武器の相違から、ロックアートに描かれるMimiの特徴によって「初期Mimi」と「後期Mimi」に分類した時代区分を考案しました。
※3. 氏族(クラン)
同じ名字と同じ言語を持つ父系の親族集団を指す。各氏族は共通の祖先とトーテムにまつわる神話を共有して儀式を執り行います。氏族同士の親族システムによって互いに高度に関係しあっています。
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