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David Blanasi Life Hisotry
Introduction
LPレコード「Arnhem Land Popular Classics」のライナーによると、David Blanasiは1961年の時点で31才なので、1930年生まれということになります。そして、71才の2001年にブッシュで姿を消す。
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Wugularr(Beswick)が輩出したディジュリドゥ・マスターとしてあまりにも有名なDavid Blanasiですが、その来歴を詳細にまとめた書籍やウェブサイトはあまり無いように思います。
彼の死後20年以上の時がたち、オーストラリアのトップエンドという限られたエリアだけで演奏されてきたディジュリドゥを全国区のものとし、そして世界的に広めた人物であるDavid Blanasiのすべての音源と主な活動履歴などを網羅的に見れるようにすることで、彼の功績が輝き続けることを願ってリサーチしました。
1960s
David Blanasiの最古の音源は1961-62年録音のウルトラレアなLPレコード「Arnhem Land Popular Classics」です。この頃の演奏はキレ、即興性ともにすさまじく、同じリズムに留まらないどころか、完全にキメになっているはずのエンディングとブレイクも別のマウスサウンドになっているほどトリッキー!
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トラック1に2曲、トラック10に1曲の合計3曲のDjoli LaiwangaとDavid Blanasiによる演奏が収録されています。トラック7のGoulburn Island GURULA "Ranja-nja:ranja"はGoulburn島のソングマンの伴奏をDavid Blanasiがするというコラボレーションを聞くことができます。
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京都のクリボウさん寄贈の古いマーゴ。Arnhem Land Popular Classicsで使われたマーゴは長さ94cmでマウスピース3.8cmの「E++」なのでもっと空洞が広い楽器だったのかもしれない。
David Blanasiの世界的な活躍は1963年にスタートしたAboriginal Theatre Foundation(以下ATF)がオーガナイズした数々の公演にソングマンDjoli Laiwanga(1925-1998)の一座のメンバーとして参加したことに端を発っします。ATFのサポートをえて彼らの活動はオーストラリア国内の大都市、そして世界へと活躍の場を広げていきました。
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BBCのRolf Harris Showに出演するためにイギリスを訪れたDavid Blanasi。この写真が掲載された新聞には25才と書かれているが、Arnhem Land Popular Classicsのライナーには61年で31才とあるので、この時37才なんだろうか?スーツにコートを来て、ヘッドオーナメントをつけている。持参しているマーゴもスーパークール!
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ジョイント・マウスピースで空洞が大きく丁寧に作り込まれた印象のマーゴです
そして、テレビタレントのRolf Harrisに見出され、1967年にDavid Blanasiはディジュリドゥ奏者としてイギリスのBBCに出演するなど、オーストラリアのトップエンドという限られた地域でしか演奏されていなかった楽器ディジュリドゥが世界中に知られるきっかけを作ったのでした。
1970s
日本ではあまり知られていませんが1970年の大阪万博のお祭り広場ではDjoli Laiwangaと共にパフォーマンスしたという記録が残っています。
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大阪万博のお祭り広場でのパフォーマンス。Wugularr出身と思われる10名以外にも5名の北東アーネム・ランドのヨォルングの名前が表記されていて、もしかしたら当時一緒にパフォーマンスしていたのかもしれません。
EXPO 70のDjoli Laiwangaの一座のパフォーマンスを記録した映像がどこかにあるんじゃないかと探したところ、当時万博協会職員としてお祭り広場の楽屋を担当されていた中川勝弘さんが貴重なお写真を撮影されていて、利用許可をいただきました。この写真はプリントして現地のアートセンターに寄贈予定です。
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中川さんを中心に左にDavid Blanasi、右にDjoli Laiwanga。両サイドのお二人の名前がわからないのが残念です。楽屋でのオフショットということで、非常にリラックスした自然な笑顔での写真がとても珍しい!写真を提供していただいた中川さん、本当にありがとうございます!!!
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樹皮画が展示されているシーンが数秒映っていて、そのBGMにはどの録音でも聞いたことのない謎のマーゴ・ソロの演奏を聴くことができます
中川さんの写真以外にも当時の情報がないか、万博の資料を保管している大阪府に企画書を提出して問い合わせしましたが、新たな映像は出てきませんでした。もし何か当時の情報をお知りの方がいらしたらコメント欄への書き込み、facebook、instagramからDMいただければうれしいです。
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1972年にはFijiで開かれた第一回「South Pacific Festival of Arts」にATF主導で参加します。このフェスティバルはこの後、4年に一回のペースで太平洋の島々で行われていくことになります。
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1972年Fijiで行われた「South Pacific Festival of Arts」の後に録音されたLPレコード。若々しいDjoli LaiwangaとDavid Gulpililが写っています。極端に短く細いマーゴが印象的です。
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アメリカでの万博に出演準備でボディペイントをするDavid Blanasi。
1974年のスポーケン万博(アメリカ)ではソロでのマーゴ演奏を披露しています。
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この時はソロでの出演だったみたいです。比較的長めのおそらく赤1色に塗られたマーゴを使っています。
国内外での演奏活動で広く知られるようになったDjoli LaiwangaとDavid Blanasiはついに1976年録音フルアルバム「Bamyili Corroboree - Songs of Djoli Laiwanga(LP/CASS)」と、1977年録音の「Songs of Bamyili(EP/CASS)」をAboriginal Artists Agencyよりリリースする。
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この2枚は全曲がスタジオ録音されたと思われ、音質も良く、演奏も冴え渡った珠玉の内容で、ディジュリドゥ奏者や民族音楽の愛好家という枠をこえて、世界的に受け入れられ、再プレスも何度もされたレコードです。
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非常に貴重な長尺の映像で、屋外でノビノビとしたパフォーマンスが収録されています。唄をうたうDjoli Laiwanga本人がクラップスティックを手に踊っていますが、彼以外でこのようなパフォーマンスをするソングマンは見たことがありません。
円熟期に達したこの頃のDjoli LaiwangaとDavid Blanasiの音源としては「Les Aborigenes - Chantes & Danses de l'Australie du Nord(LP/CD)」があり、1979年のライヴ録音で音質は悪いものの熱のこもった演奏を聞くことができます。この頃出会いたかったと心底思うが当時のぼくはまだ5才でした。
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ここで使われているマーゴが同年に発売された本「Australian Aboriginal Music」と同じものであることがペイントからわかる。後ろに転がっているマーゴは収録内容から低いキーの曲用のものと思われます。
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ATF主導でDjoli Laiwangaの一座は1970年代に世界各地で公演活動をし、もっとも精力的に活動していたようです。また、活動の場がEXPOやオリンピックや南太平洋フェスティバルなど巨大でパブリックなイベントであったことで、数多くの記録が残されています。
1980s
この頃の映像や音源はなぜかほとんど見つからず、この10年間のDjoliとDavidというタッグでの活動はあまり情報がありませんでした。
1980年にパプアニューギニアで開かれた「South Pacific Festival of Arts」での演奏は映像が残っています。
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イギリスのKPMから1981年にリリースされたLPレコード。B面のみにアボリジナル音楽を収録。ここではDavid Blanasiの演奏は聞くことができませんが、Djoli Laiwangaのマーゴ演奏を聞くことができます。
マーゴ奏者としてあまりに名高いDavid Blanasiですが、Djoli Laiwangaと共に数々の個展をしてきた画家としても有名です。自分が作ったマーゴに自らペイントしていたのはもとより、樹皮画では大きなサイズであるのにクロスハッチは細く繊細ですばらしい。
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その一部はDarwin博物館や現地のアートセンターDjirpin ArtsのGhunmarn Culture Centreに「Blanasi Collection」として収蔵されていて、その全てを一望することができ、圧巻です。「Blanasi Collection」は小冊子にまとめられています。
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1988年、アボリジナルだけで結成されたクリケットのチームがイギリスを訪問しました。そのハーフタイムでデビッド・ブラナシがマーゴを演奏したそうです。上1/3はテープが巻かれ、運びやすいようにヒモがかけてあります。
1990s
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1998年に偉大なるソングマンDjoli Laiwangaが亡くなり(享年72才)、同年に録音されたDavid Blanasi自身の名前を冠したアルバム「Didjeridu Master(CD)」が発売される。Djoliに代わってJack NawilillとDavid Yirindilliがソングマンとして参加しています。
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一座の長として、ソングマンとして、そしてダンサーとして長年共に活動してきたDjoli Laiwangaの死後3年の2001年の8月、David Blanasiはマーゴを作るための木を切りに出かけたブッシュの中で姿を消す。
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2017年に訪れた時にはディジュリドゥ・マスターの名前を冠したストリートと小さい公園ができていました。
Timeline
1961-62 "Arnhem Land Popular Classics" / LP / Tr1 & 10
1965 Sydney, AUSTRALIA / Trade Fair / Live Performance
1967 London, UK / BBC / TV "Rolf Harris Show"
1970 Osaka, JAPAN / Expo / Live Performance
1971 London, UK / BBC / TV documentary "This is your life"
1972 Suva, FIJI / South Pacific Festival of Arts vol.1 / Live Performance
"Music of Aboriginal Australia" / LP & CASS
1974 Spokane, USA / Expo / Mako solo
1976 London, UK / BBC / "Rolf Harris show"
"Bamyili Corroboree - Songs of Djoli Laiwanga" / LP & CASS
Rotorua, NEW ZEALAND / South Pacific Festival of Arts vol.2 /
Live Performance
1977 "Songs of Bamyili" / EP & CASS
1979 Hawaii / Honolulu’s Bishop Museum / Live Performance
FRANCE / Festival des Arts Traditionnnels / Live Performance
"Les Aborigenes - Chants et danses de l'Australie du nord" / LP & CD
Australian Aboriginal Music / Jennifer Isaacs / Book
1980 Port Moresby, PAPUA NEW GUINEA / South Pacific Festival of Arts
vol.3 / Live Performance
1981 "Music of the Nations volume 5 - AUSTRALIA" / LP
1989 USA / White Cockatoo Performing Group / Live Performance
1992 Didjeridu with Charlie McMahon / Movie
1998 "Didjeridu Master" / CD
USA, CANADA, UK / White Cockatoo Performing Group /
Live Performance
1999 US tour / Mako workshop
2000 Europe tour - IRELAND, GREAMANY, DENMARK, SWEDEN, NORWAY,
FINLAND, ENGLAND, HOLLAND/ Live Performance
2001 Adelaide, AUSTRALIA / WOMAD Festival / White Cockatoo Performing
Group / Live Performance
Wugularr / Aboriginal culture & Didjeridu tour
"DAVID BLANASI TRIBUTE ALBUM 1998-2001" / CD
2014 "Kundirri - The Life and Legacy of David Blanasi" / Movie / Djilpin Arts
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