なまもの、ガラパゴス諸島へ行く8 〜年越しの祈り〜
今日は大晦日。どことなく街もいつもより閑散として、それでいて少し忙しない。
大晦日なので半日ツアーのみらしく、一行はTintoreras島という島へ
ペンギンやサメ、アオアシカツオドリを見に行った。
このペンギンもガラパゴス諸島の固有種らしく、こんなに低緯度に生息するペンギンは他にはいないらしい。
これまでのツアーのガイドさんは大体が陽気で声が大きい人が多かったが、今日のガイドさんは全然陽気じゃないし、声も小さかった。列の後ろの方にいるとあまり聞こえないのでできるだけ近くに行く。すると頻繁に彼は誰かに携帯電話でメールやら電話やらをしていた。
何に追われているのか。その姿は若干哀愁を帯びていた。
島を散策し、泳げるところでエイやサメを見て、お昼過ぎに陸に戻った。
哀愁を帯びたガイドは下半身はウェットスーツを着たまま上半身は裸で我々とバスに乗り、突然何もない住宅エリアでバスを止め、去っていった。
皆、午後からは年越しへ向けてまっしぐらなのだろうか。
街に戻ると今日の年越しライブのステージが組み上げられ、子供運動会のようなものが催され、路上にはみんなの力作の張子人形の作品が並べられていた。
エクアドルでは、張子人形を作って年越しの時にボッコボコに殴って燃やす、という伝統行事があるらしい。ちなみによく見かけたのはマリオ、ピーチ姫、メッシ…。
この島では最も良い作品に賞が贈られ、公衆の面前で盛大に燃やすという名誉?が与えられる、とは島民談。
どんな夜になるのやら…と皆楽しみにしていた。
シャワーを浴びて、遅めのランチをして、とあっという間に夕暮れ時になり
バンビはまだ見ていないイサベラ島のゾウガメを探しにいった。
何人かはゾウガメセンターにて繁殖させたゾウガメを見たらしいが
せっかくなら野生の(繁殖後に野生に還された)ゾウガメを見たいと思いCamino de Tortugas Giantesという場所を目指す。google mapでは徒歩40分の距離にあるという。
ミッシェルとKちゃんも行く、というので3人で海岸沿いをひたすら歩く。
誰もいないし、だんだん暗くなってきたし、ちょっと不安になってくる3人。
心が折れそうな頃に、マングローブ林の隙間に不自然な黒い塊がいた。2頭のゾウガメだった。大喜びする3人!ひとしきり写真を撮ってもう少し先まで、もっとゾウガメがいないか探しにいったが会うことはなかった。
帰ろうとしたその時、後から追いかけてきたりさこちゃんが現れた。
さっき、2頭のゾウガメがいたでしょ?と聞くが気づかなかったという。
戻るとまだ同じ場所にいたので、注意深く歩いていないと見落としてしまうのだろう。
これでサンクリストバル、イサベラのそれぞれのゾウガメを見ることができた。
夜になるとメインストリートはライブとレストランの明かりで賑わっていた。
道中、女装をした男性に絡まれて戸惑ったが、これは「泣き女」という「人形燃やし」と並ぶエクアドル年越し行事の一つらしい。事情を知らないと結構恐怖体験。
ライブ音が爆音すぎるので少しメインから外れたレストランでイサベラ最後のディナーを楽しんだ。
食事が終わってから、カウントダウン、そして人形燃やしを今か今かと待ち続ける。
とはいえ、特にやることもないので屋台でビールを買い、公園のベンチに腰をかける。
突然、りさこちゃんが「これやりたい」と指さしたのはシーソー。おお、いいよ。
2人でシーソーを楽しんでいると5~6歳の現地の女の子が現れバンビに抱きついてきた。
どうした。どうした。お父さんに連れ去られるもすぐに戻ってきて再度ハグ。
バンビは構わないけど、あなたのお父さんは心配でしょうがないだろうから、さあ、おかえり。
ステージ上では何やら表彰されているが、スペイン語なので何かわからない。
もしかして、張子人形の作品のグランプリが発表されたのかもしれない。
そして、カウントダウン。2024年の幕開けだ。
おそらくグランプリだったと思われる作品が最初に燃え上がる。
作者がさらにガソリンらしきものを作品にかけ、より一層燃え上がる。想像以上の激しさだ。グランプリ以外の作品も次々と着火され燃え上がる。
ひごっちの目撃談ではとあるお父さんが女の子に自分の作品を殴るように促し
「もう満足した?」と聞くと少女は頷き、着火されたらしい。
きっと、昨年の悲しみを追い払い、新しい年を清々しく迎える儀式なのだろう。
1時ごろまでライブステージの音楽に合わせて踊り、宿へ帰った。
元旦は午前中はみんな二日酔いで寝ているよ、と聞いていたので
私たちも明日はゆっくりと過ごし、この島を去ろう。おやすみ。
目を覚ますと日本から悲しい報せが届いていた。
元旦の北陸を大きな地震が襲ったらしい。
いつものおばちゃんのカフェで朝食をとった。
このメンバーの家族、親戚は皆無事であることは確認取れた。
今すぐに帰らなければならない、という状況の人はいなかったので
日本のことは心配だけど、予定通り旅を続けることを決めた。
この日の空は本当に青く、浜は真っ白で、海は煌めいていた。
1日中、海を眺め、夕方の船でサンタクルスへと帰った。