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なまもの、ガラパゴス諸島へ行く3〜アシカと鹿の関係〜

我々は早朝のグアヤキル空港で2つのサンドイッチを5人で分け合っていた。
「明日の朝は朝食の時間より早く出発して空港へ行くよ」と伝えると
Alexが「OK! 代わりにサンドイッチを用意しておくからカフェにとりにきてね!」と言ってくれたのだ。
行くと、知らないカップルがうちらのサンドイッチを3つ食べていたのだった…。

しかし、カップルの過ちを咎められる立場にないほど重大なミスをバンビとミッシェルは起こしていた。
日本で円をドルに変え忘れたのだ。
更にLAでレートが悪いからまた次の場所で、と思いパナマで1$/190円に泡をふき、ここエクアドルで絶望したのだ。空港に限らずどこでも円のレートは変わらず悪い。
本当にしくじったと思った。
現金支払いで入島税100$、TCT(入島出島確認書?)20$が必要なのでりさこちゃんに借金し
ミッシェルは”H岡くん”から借金してなんとか出発の算段を揃え
世界的観光地のガラパゴスでまともなレートで円を変えられるだろう、もしくはATMで出金しよう、と決意と願望でチェックイン。

もう一つ、ガラパゴスへ行くのに重要なステップがある。
正しく観光客向けのチケットを購入していないと罰則として150$追徴されるらしい。
この事実に気付いたのはたまたまガラパゴスへ行った人のTwitter(後のX)を見たからだ。
ガラパゴス諸島行きの航空券にはエクアドル市民権を持つ人が適用される安い航空券と
国外観光客とリッチな人向けのハイグレード航空券があるらしいのだ。
確かに、3社ある航空会社のうちecu air では「国外観光客はこの一番高いチケットを買いなさい」と明記されている。
Avianca航空には何も書かれておらずS, M, Lの3種のうちどこからがセーフなのか不明なトラップ式。あわよくば150$せしめようと思っているのでは?と疑われても仕方がない仕様。
今回使うLATAMは「国外観光客は適切なチケットを買いなさい」とは書かれてはいるものの
航空券種が多様に展開されており、どこからが正解なのかわからなかったのだ。
一番高いのを買えば絶対に正解なんだろうけど、そこはギリギリまで安いところを狙いたいのは言わずもがな。LATAMと我々のチキンレース。
しかし、実はヒントがあったのだ。
LATAMのweb siteは国、言語、通貨を設定してから見られようになっている。
どうやらエクアドル設定にすると超絶安い航空券が表示されるようになるのだ。
つまり、エクアドルでない国設定にして表示されているのが正解なのだろう。おそらく。
ちなみに今回はその予想に従って”Plus”というウルグアイ設定で最安値のグレードで賭けに出た!

特に何も言われずゲートをくぐったので問題なかったのだろう。

搭乗口の近くで搭乗アナウンスを待つ。静かだ。各々トイレに行ったりお店を見たり…
“ボナ”が叫んだ。「あのカップルがいないよ!」
チェックインカウンターから搭乗ゲートまでずっと遠巻きに睨んでいた”サンドイッチカップル”がいないのだ。
よく見ると掲示板は「まもなく出発」になっている。でも何も言わずのんびりしているスタッフ達。
慌てて5人は搭乗した。食べ物の恨みは恐ろしい。その執念のお陰で乗り過ごさずに済んだようだ。いまやサンドイッチを食べてくれてありがとうぐらいの気持ち。

ガラパゴス諸島には4つの有人島がある。
最も栄えているサンタクルス島、こぢんまりとしたサンクリストバル島、多くの活火山がある最も若く大きいイサベラ島、最も人口が少なく小さいフロレアナ島。
空港を有するのはサンタクルス島とサンクリストバル島のみ。
サンタクルス島の空港は市街地から遠いがサンクリストバル空港は徒歩でも行ける距離である。
ガラパゴスへの第一歩はサンクリストバルを選んだ。

大陸と一度も繋がったことがなく、独自の進化を遂げた絶海の孤島、ガラパゴス。
ここは生態系を保つために外来種の侵入阻止を徹底していると言われている。
害虫や繁殖により固有種を脅かす危険のある農作物や生鮮類、動植物は禁止されている。
さぞ、厳重な入島管理なのだろう!と思っていたが
犬が一斉に同じ飛行機で来た人を嗅ぎ回ったのち、カウンターで持ってきた食べ物を一通り見せて終了
という拍子抜けするほどのラフなものだった。

これでよかったのかな!?と小さな空港を出ると「バンビ様」と書かれた紙をもったおじさんが待っていた。
彼の名はAlfredo。今日から4泊する宿のホストだ。
Alfredoの宿は市街地から少し離れた農村地帯にある。
到着してすぐに現金払いで宿代を支払ったのでバンビとミッシェルはまた借金した。
それどころか肩代わりさせられた面々のお財布事情が厳しくなってきたのでしばらくカードで使えるところを中心に買い物することになった。ごめん、みんな。
ガラパゴスのカード手数料はお店にもよるが12~15%割増になるから絶対的に現金払いが良い。
本当にごめんなさい、みんな。

さあ、気を取り直してAlfredoに市街地へ送ってもらう。昼ごはんだ。
街の中心から海へ向かって歩き、港に面した通りへ出るとボナが叫んだ。「みて!!!!」

見ると浜一面にアシカが横たわって「オオゥ!」と鳴いている。
ガラパゴスにおけるアシカはまさに奈良の鹿だった。
ここではアシカは絶対的な地位を築いていた。
いや、他の動物もあらゆる生物は人間から保護の対象とされているのだが
圧倒的に大きく力強いアシカは、時に人間から「ああ、どいてくんないかな…。」という眼差しを向けられてはいた。

浜に、路地裏に、店の前に、港に、と自由に横たわるアシカに圧倒されて
ようやく私たちは

ああ、ガラパゴスに来たんだ!!

と実感したのだった。


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