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「損する考え方」は、損をする

 
 いやー、お恥ずかしい。また長いことnoteを更新していませんでしたね。
 というのも以前から書いていたように帰宅してからも育児で忙しいのと、ここ3ヶ月ほど群発頭痛に悩まされておりました。長かった、今回。帯状疱疹ワクチンを2回も接種したはずなのに。
 なのでそのあたりのことやら何やら、書こうと思っていることはちらほらあるのですが、何より群発のせいで気力も体力もなくって。やっと寛解期に入りそうなので、ようやく少しは書けるようになってきたのですよ。
 というわけで準備体操がてら、サラッと書いてみますね。

 人によって考え方や価値観はさまざまですが、大きく二分できることがあります。それは「得をする」考え方と、「損をする」考え方。
 僕は現在は足を洗ったものの、長いこと買取の仕事をしてきて、さまざまな人間を見てきた。クズみたいな人から神様みたいな人まで、数知れず。
 その中で、たとえば「この1,000円の金券って買取率はいくら?」と聞かれた場合。それに「95%ですよ」とでも答えたとします。
 ある人は「じゃあ950円で買い取ってくれるんだね」と返します。これは違和感なく、むしろ好印象。
 しかしある人は「じゃあ5%『取られる』んだね」と返すのです。これには「取られる?」と大きな違和感。こっちは買取なのに、まるで「かすめ取っている」ような言い草に感じてしまう。
 もちろん、当人にはそんなつもりはないのでしょう。しかし印象はまったく違う。そしてその印象は、その言葉を放った人の「価値観」が出ている。
 そのため他の買取でも「1万円で買ったけど、売っても1,000円になるんだね」と「買ったときは1万円したのに、1,000円にしかならないの?」では天地ほどの差がある。しかし、怖いことに発言している当人は「その言い方が相手に不快感を与えている」ことに気づいていない。
 そこにあるのは間違いなく「主観」。ありがたいお客さんは「お金になればいいや」と思っているのが出るし、そうでない方からは「もっと価値があるはずなのに!」という思いが感じられる。
 こういう場合、もう僕は戦いませんでした。むしろ「じゃあ、使えば満額になりますから、売っていただかないほうがいいですよ」と言って返します。
 そういう言い方をするお客さんからは、無理に買い取らない。なぜなら経験上、値上げを要求される確率が高く、もし買取が成立しても何かしかの不快感(買取証書に書くのを面倒臭がる、現物もないのに買取価格だけ聞きたがる、など)があり、もしリピーターになってくれても「これもそんなもんにしかならないの?」などと言われるんです。
 概して自己評価が高く、価値観が購入時のままで、中古そのものや中古相場というものに理解がない人がほとんど。なのですが、実はこの「価値観」って、買取だけでなくすべての言動に表れているんです。

 一時期バズッた「今日は簡単に冷やし中華でいいよ!」というフレーズがあります。
 これは冷やし中華の食材を切る面倒さをまったく知らない夫が放った言葉で、それを知らず「麺を煮てスープをかけるだけ」だと思ってしまってのこと。同様のフレーズに「ポテトサラダぐらい自分で作ったらどうだ」もあります。
 ディテールを知らない人ほど、一部を見て全部を理解したつもりになりやすい。
 実はこれ、前述の買取も同じです。特に金券買取に多いのですが、やたら「取られる」「~しか」を使う人は、買取の先に「店の利益があって、業者買取価格があって、その業者の販売価格もある」ことを知らない。または、見ていない。
 自分が売却したものを、次に買う人がいるのか?
 これを考えたこともなく「買った時に1万円したんだから、半分ぐらいになるだろう」という根拠のない期待を「自分の中のボーダー」として持ってしまっている。だから牛丼の原価を知っただけで「ボッタクリだ」とか言い出す人もいます。働く人の賃金も光熱費も家賃もフランチャイズ料も、その人にとっては存在しない。「目の前の完成した牛丼しか見えない」のに「自分の中の揺るぎない事実」として固まってしまっている。
 ひるがえってみれば、冷やし中華もポテサラも「作ったこともないのに、簡単そうだという自分のイメージで発言している」わけです。

 そのうえで「『損をする』という考え方」について。
 先の「5%取られる」が顕著なわけですが、根底に「損をしたくない」という思いがあります。実はこれが、すべてのもと。これが見えないところで、実際には損させている。
 そうした思いは、必ず言動に出ます。

 飲み会などに「行けたら行く」という人。
 これは「都合が合ってお金があって気分が乗ったら行ってもいい。でも面白くないなら行きたくない。だからキープで」というニュアンスを感じてしまいます。
 うがった見解ではありますが、こう言う人はほぼ来ませんから、僕は頭数に入れません。なのにもし本当に来られたら「行けたら行くって言ったじゃん!」などと吠えるので、困りますから。
 おそらく、飲み会の幹事をしたことがないのでしょう。でも参加者として損はしたくないから、そういう言動になってしまうのでしょう。
 言い詰めると「参加して『あー楽しかった』と思えるなら行く」ということでしょうか。
 自分を楽しくするのは周囲ではなく、自分です。

 待ち合わせで「開始5分前には必ず来ていてくださいね」とお願いすると「5分前に来ればいいんだね」と解釈してしまう人。
 そういう人は、多くが時間に遅れる。そして「邪魔なヤツがいたんだよ」などの言い訳や「ていうか、5分前じゃなくても間に合うじゃん」という自分の責任を棚上げする文句を言う。
 その人と、次に会う時はどうしますか?
 僕なら「10分前に来てください」と言います。それでも遅れたりブチブチ言い続けるなら、もう呼びません。時間を損したくない人に気を遣う、こっちの時間を損したくないから。

 出かけ先でもし、バスを乗り過ごして降りた場合。そんなちょっとの余計な出費で「これだけ損をした」と言う人。
 同行しているこっちまで悪いことをしたように感じてしまう。気付かなかった僕のせい? なんて。
 それを「でも、このぐらいで済んだね」と言えれば「前向きな人だなぁ」と感じますし、逆に申し訳ないと感じて何かしらで取り返してあげたくなる。
 これはスーパー数店舗で価格だけ比較して「30円損した」という発言と同じですね。実際には野菜の鮮度や大きさ、店舗の距離や利便性に所要時間などが異なるのに。だから「まぁ30円ならいいか」や「あっちより高いのが、これだけでよかったー」なら、聞いているほうも救われます。それに「損した」もの以外、逆に「得した」ものが少なからずあるはず。それが見えなくなるのはもったいない。
「コンビニは高い」と文句つける人の思考回路も、これですね。見えない部分に発生しているお金が、理解できていない。あ、これ牛丼のボッタクリ発言と同じだ。

 せっかく作ってくれた料理の味に、ねっとりと文句つける人。
「おいしいけど、もうちょっと味が濃いほうが好きかなぁ」
 じゃあおまえが作れよ、と言いたくなりますよね。味は主観ですから、自分の主観と相手の主観が違うように、味の好みも違う。誰にもジャストなものは、ほぼ存在しない。
 そうしてネットのレビューに「まずい」とか「味が薄い」とか書いてしまうのです。自分の味=主観が正しいと思っているから。そんな人がイヤそうに食べていたら、店員だってイヤになります。すると「接客が悪い」とまで書かれます。
 そして不思議なことに、そのほとんどは「料理しない人」なんです。
 だから具体的な「塩味が少し足りないけど、強くならないように醤油を数滴たらしてみたら?」という構築的な話ができない。それができる人は、たぶん言い方も変わっています。
 あ、これも冷やし中華やポテサラと同じか。

 こうして、「損をしたくない人」からは「人そのもの」が離れていきます。前述の「リピートしてほしくないから買取を断る」と同じですね。
「損をしたくない人のせいで、自分が損をしたくない」
 これに尽きます。
 その「損」は多くがお金のような実害よりも、むしろ時間や感情、そういった「見えないもの」。お金で買えない部分にこそ、人は満足と不満を感じます。
 だから僕は「悪い」という言葉をなるべく、意識して使わないようにしています。それを「よくない」と言い換えています。
 なぜならそれは「よい」が前提にあるので、打ち消しの「ない」がついても「ベースは『よい』」という前向きな印象。でも一方の「悪い」はどんなに装飾しても「悪い」にしかなりません。
 話す順も、最後に悪いことを持ってくるのではなく、悪いことを最初に持ってきます。そのほうが「ヘコんで、最後に盛り上がって、前向きに終わる」という印象を作れるから。自分がそうされたほうが、モチベーションも上がりますもんね。
 これはひょっとして「最後に好きなおかずを食べる」のに近い感覚かもしれません。でも満腹でおいしく食べられなかったら意味がないのと同じで、悪い言葉が多すぎるとせっかく最後に持ってきたいいことも力不足です。
 だから「さんざんネガティヴなことを言い続けて、最後に『まぁ○○だから』という言い方」も、まったく救いにはなりませんね。

 いかがでしょうか?(←まとめブログ記事みたいだな)
 価値観は必ず言動に出ますし、言葉選びの些細な部分にまで影響します。
 少なくとも、「よいこと」を前提に考えれば精神的に健全。「悪いこと」を前提にしていると自分が疲れるだけでなく、周囲も疲れてしまう。なんだか性善説と性悪説のようですが。
 言葉を大切にすることは、自分を大切にすることでもあるんですよ。

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