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SION『螢』より「トタン屋根の小屋に住む老人」
バスが三時間に一本という、とある辺鄙な田舎町。そこからまた随分と離れた、殆ど山麓に近い場所に、白髭の老人は住んでいた。
いつから彼がいたのかは、誰も知らない。気が付いた頃には、老人は小さな小屋を建てていた。建材は近くの倒産したスクラップ工場から持ち込んだトタンやベニヤの類だった。その小屋の体裁や、白髭を蓄えた老人の風貌から、近隣の住人は彼を一種の浮浪者だと風潮した。
老人は、焦げ茶色の犬を飼
フォー・ユア・プレジャー
エミは、散歩が好きだった。大学を辞め、決心して現在の仕事に就いてからは、殆ど毎晩散歩を欠かしていない。
その散歩は夜が中心になるものの、最近では昼間から公園をうろつくこともある。だがエミは、意図して人込みにはなるべく行かない。ナンパや勧誘の類を嫌い、その後を考えると面倒なことになる。そして何より、散歩の末の「ある行い」がやめられずにいた。
主に仕事の帰りに、散歩は行われる。そのまま「ある行い
すべての若き野郎ども
そりゃあ最初は驚いたよ。
だってよ、あいつはあの頃俺が働いてた現場で暮らしてたんだ。現場っつったって、家の建築現場だぜ? コンクリ敷いて柱が組んであるだけの家ん中でよ、施工主より先に寝てやがった。俺下っぱだったから一番に行って準備しなきゃいけねえからさ、皆より早く現場行ったんだけど、準備するのも忘れちまったね。考えてみなよ、夏、柱だけの中で冷てえコンクリの上に貧弱なガキがボロい服着て寝転んでん