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「2先」はどれくらい運ゲーなのか?

SF6は運ゲー?

巷では、「スト6で2先(※)は運ゲーだ!!」という声がちらほら聞こえてきますね。
※ "2先"とは2本先取の意味

確かに、前作スト5(の最終調整版)と比べてスト6は一発一発のダメージが高く、大味な感じがあります。
でかい択を1つ読み負けたらその時点でラウンドは決着・・・みたいな。

とは言え、プロは2先のトーナメントをキッチリと勝ち上がってきます。
ってことは、2先でもちゃんと実力は反映される、ってことでしょうか?

さらに、強い弱いをハッキリさせたいなら「魂の10先!!」、というのが格ゲー界の文化です。
試合数を増やせば実力の影響が増え、運要素が減る・・・
まあ感覚的にはそんな気もしますが、とは言え10先ってどれくらい信用できるのでしょうか?

この疑問にこたえるべく、今回は勝敗を単純に確率の話として、2先、3先・・・10先における実力と運について考えてみましょう。

モデルケース

Aさんの勝率

仮にAさんとBさんが10000先して、10000-7000でAさんが勝ったとします。
まあまあいい勝負するが、「実力的には明らかにAさんの方が強い」ということになりますね。

では、この時のAさんの1試合当たりの勝率を超単純に確率だけで計算してみましょう。
「後半は人読み能力が物を言うから、試合数が多いほどオジが有利だ」とか「キンバリーは荒らし性能が高いから2先で有利だ」とか、今回はそんなんは考えません。

17000戦やって10000勝ですから、Aさんの1試合当たりの勝率は、
  (10000 ÷ 17000) × 100  = 58.8 %
です。

さて、この1試合当たりの勝率を元に、次にAさんとBさんが「2先」したときにAさんが勝つ確率を計算してみましょう。

2先の勝率

では計算します。数学嫌いな人は読み飛ばして下さい。

2先とは「とにかく3試合やって2勝以上したら勝ち」と言うこと。
Aさんが勝った場合を"〇"、Bさんが負けた場合を"×"として、とにかく3試合やった場合の勝敗組み合わせは2の3乗、つまり 8 通りです。
それぞれの確率は、

① 〇〇〇 0.588×0.588×0.588 = 0.204 (20.4%)
② 〇〇× 0.588×0.588×0.412 = 0.142  (14.2%)
③ 〇×〇 0.588×0.412×0.588 = 0.142  (14.2%)
④ ×〇〇 0.412×0.588×0.588 = 0.142  (14.2%)
⑤ 〇×× 0.588×0.412×0.412 = 0.100  (10.0%)
⑥ ×〇× 0.412×0.588×0.412 = 0.100  (10.0%)
⑦ ××〇 0.412×0.412×0.588 = 0.100  (10.0%)
⑧ ××× 0.412×0.412×0.412 = 0.070  (7.0%)

2先で勝つ、つまり2勝以上しているのは①、②、③、④の4つ。それらを足し合わせれば2先で勝つ確率になります。

よって、Aさんが2先で勝つ確率は63.0 %です。

どうですか?

1先の58.8 %よりは「AさんはBさんより強い」という実力が反映されやすいと言えますが、その差は微々たるもの、という感じですね。

3先の勝率

では、3先した場合の勝率はどうでしょうか?
プロからも「3先にして欲しい」という声が出ています。
勝率はどのくらい変わるのでしょうか?

2先と同じように3先も計算できます。
ただ、5試合やった場合の勝敗組み合わせは2の5乗、つまり 32通りです。
ちょっと面倒なので、工夫したほうがイイですね。
工夫法を書くのはもっと面倒なので、書きません。結果だけ書きます。

結果は66.2 %です。

2先の63.0 %より更に実力が出やすくなっていますね。

10先の勝率

じゃあ、10先はどうなんだい、と思いますよね?
先に書いた通り、白黒はっきりさせたいなら10先です。

結果は78.4 %です。

おお。
これはまあ、「Aさんの方が強い」という実力を反映している気がします。
10先を10回やったら8回くらいは勝つわけですからね。

一般化

AさんとBさんの1試合当たりの勝率(要は1先の勝率)を色々と変化させ、それを元に2先~10先の勝率を計算した結果を下図 fig. 1 にまとめました。

fig.1 1先の勝率から2~10先の勝率を計算した結果

試合数を増やすほど強い弱いの差、つまり「実力」が明確になることがわかりますね。

2先の運ゲー感

2先は、まあ1先と比べてマシですが、まだまだ運の要素が強い気がしますね。

1先の勝率が70%の場合。
1先を10回やったら7回は勝つが、3回は負ける、と言うことです。
これを2先にしても勝率は78.4%。
2先を10回やったら2回は負けます。

このことから、2先はまだ運要素が少なからずあるという感じでしょう。

10先の実力反映

一方、10先は実力が明確に出るようです。

同様に1先の勝率が70%の場合、これを10先にすると勝率は96.7%!!
10先を10回やったとしたも、ほぼほぼ負けません。

やはり10先は運ではなく実力がかなり反映される、と言って良いでしょう。

まとめ

「試合数を増やせば実力の影響が増え、運要素が減る」はその通りですが、実際に確率を計算してみた結果、その数字感が得られましたね。

2先は少なからず運要素が残ります。
よってランクマで負けてもそれは運です。仕方の無いことです。

一方、10先はかなり実力が反映されます。
10先で負けたら、それは素直に実力での負けを認める方が良いでしょう。



おまけ

実力が拮抗している場合

fig. 1 では1先の勝率が0~100%と大きく振った場合の計算結果を示しました。
しかしながら、トッププロ同士は実力が拮抗しており、勝率にそこまで差がつかないと思われます。

例えば10先で10-7だった場合(かつこれが順当だった場合)、1試合当たりの勝率は10/17×100 = 58.8% です。
10-8で55.6%、10-9で52.6%です。
1試合当たりの勝率に直すとほぼほぼ50%で、差が小さいです。

1試合当たりの勝率が50~60%のときの計算結果を下図fig. 2 に示します。

fig. 2  1先の勝率が50~60%の場合の2~10先の勝率

fig. 1 と見比べると、試合数を増やしてもあまり勝率が変わらないことがわかりますね。

実力が拮抗している場合では、2先や3先の結果はかなり揺れます。
プロ同士の2先や3先は"時の運が強く反映されるエンターテイメント"として見るのが良いでしょう。

2先トーナメントを勝ち抜く

昔の闘劇は「全てが1先で決まる」という狂った方式のトーナメントでした。
それに対し、現在は「2先(TOP6から3先になることが多い)で、かつダブルエリミネーション方式(2敗したら負け)」のトーナメントが主体です。

2先は運要素が強く残ると言いましたが、それでもトッププロはそこをかなり高い確率で勝ち残ってきます。
トッププロはどれだけ強いのか。ザックリ計算してみましょう。

例として、EVO 2024を考えてみます。
この時のスト6の参加者が5265人でした。
Winnersでベスト32に残るには2先を7連勝する必要があるわけです。

2先の勝率がaだった場合、n連勝できる確率はaのn乗です。
これでベスト32に残る確率を計算してみましょう。

2先の勝率が78.4%(1先で70%)だとしても、7連勝できる確率は18.2%です。
残るのはかなりキツイ・・・

2先の勝率が89.6%(1先で80%)で、7連勝できる確率は46.4%。
これでざっと半々。

2先の勝率が97.2%(1先で90%)で、7連勝できる確率は82.0%。
これでまあ安定かな。

以上より、ベスト32に安定的に残れるようなトッププロは、おそらく一般プレーヤーと1先したら勝率90%以上となるような圧倒的強さがあることが予想されます。
やっぱりプロは強いってことですね。

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