見出し画像

「バック・トゥー・ザ・ドリフ」


「あっ、いらっしゃい!」

「ど〜もー」

「朝晩、ずいぶん涼しくなりましたね」

「ホントだよ。涼しい通り越して肌寒いくらい 笑」

「今年は暑かったですからね〜」

「夏と冬だけの日本。
これから夏も冬も長く感じるようになるんだろうね」

「秋の夜長なんて言葉、死後になるかもですね 笑」

「そうだな。マスターはどんなことしてるの?秋の夜長 笑」

「最近はテレビもあんまり観なくなっちゃったし、
これといってすることないですねー」
「お客さんはテレビってどんなの観てますか?」

「テレビね〜。俺もあんまり観ないなぁ。
ニュースくらいでさ。つまらないもん」

「昔はもっと面白い番組あったんですけどね」

「そうそう。こんな事言ったら怒られちゃうかもしれないけど、
今のテレビは芸人と食べ物ばっかりじゃない?
どこ回しても食べ物が出てくるし、芸人がワイワイ騒いでるだけで、
本人達は楽しいかもしれないけど、観てるこっちはちっとも面白くない。
うるさいだけでさ 笑」

「ドラマとかも面白いのないですね」

「あぁ。どれも前に流行ったものの焼き直しでしょ。
NHKの朝ドラや大河にしても、
昔のそれを超えるようなものはまぁ、ないな」

「限界なんですかね、もうテレビって」

「うん。昔と違って出来る事、やれる事にも限りや縛りがあるし、
特にお笑いなんかはその縛りってかなりのダメージだと思う。
だからこそ、Youtubeのようなものに逃げ道を求めるんだと思うよ」

「チャンネル開設してる芸能人、多いですもんね」

「それに従うように視聴者側もテレビを見限って
動画共有サイトなんかに流れてるんだと思う」

「番組内容をもっと工夫しないと本気でテレビ、終わりかねないですね」

「そうなんだ。
僕らが若い頃はドリフターズが圧倒的な視聴率を取ってた。
今、バラエティーでやってることの土台は、
全てドリフが作り上げたと言っても過言じゃない。
いつかドリフのインタビューで聞いたことがあるけど、
ドリフのコントっていうのはすべてが緻密に計算されていて、
完璧に作り上げられたものなんだそうだよ。
ここでお客さんが笑うからこの間でっていうような、
お客さんの笑いの場所まで完全に計算されていた。
まさに芝居であり、舞台演劇なんだよね」

「しかし長い間それをやり続けることで、観る方も飽きは来る。
それがテレビの大きな転換点だった。
当時フジテレビが’’オレたちひょうきん族’’の放送を開始した。
これも聞いた話だけど、初めはドリフに勝てるわけなんかないから、
自由に好きなことをやる番組にしようって始めた。
ドリフと違って台本なんか作らず、その場その場で、
言わば行き当たりばったりで内容を作っていった。
しかしそれこそが新鮮で、何が起こるか分からない面白さを生んだんだ。
これはまさに今のバラエティーのスタイルだよね。
ウケた。ものすごくね。
ドリフの8時だよ全員集合を終わらせたのは’’オレたちひょうきん族’’だった」

「わかります、わかります!今考えると、本当にテレビの一大転換点でしたね!」

「その転換点がまた来てるんだよ、今。
物事っていうのはみな、円を描くんだ。流行りでもなんでもね。
正確に言えば、全く同じではないから螺旋を描く。
1周回ってまた少し違った形で同じところに戻る。
その場で起こるハプニングのような面白さから、
また作り上げられたお芝居のような完成された作品にね。
ドリフに戻るんだよ」

「なるほどね〜。やかましいだけのテレビは終わりってことですね」

「観ていて面白いかい?
ギャ〜ギャ〜騒いでいるだけのテレビなんて。
そんなものを観るために、
わざわざ時間が来るまでテレビの前で待ってるなんてありえないだろ?
そんなものこそ、Youtubeでいいさ」

「昔のいい番組、みんな終わっちゃいましたもんね」

「そうなんだ。
旅番組一つとっても、どれもみんなゲーム形式だったりしてさ。
あんなの旅番組じゃないよな。観光してないもん 笑」

「笑 ホントですね。まぁ、スポンサーがいるわけで、
どうしたって視聴率優先にならざるを得ないっていうのもわかるんですけどね」

「そうだな。でもそんな番組ばっかりだから、その視聴率すら危ういわけで、
なんとかもっと頑張らないとテレビは本格的に終わるさ」

「面白いテレビの復活、期待したいですね」
     「はい、コーヒー入りましたよ」

いいなと思ったら応援しよう!