新聞が読めるようになるニュース解説#3「今さら聞けない森友問題」
こんにちは。あひる編集長です。今回は森友問題について解説したいと思います。文書改ざんの過程をまとめたファイルの存在を国が認めた、とのニュースです。
・国有地売却問題→決裁文書改ざん問題→財務省元職員の自殺
まずは記事を見てみよう。
森友学園への国有地売却問題に関する決算文書の改ざんを強いられ、財務省近畿財務局の元職員赤木俊夫さん=当時(54)=が2018年の自殺に追い込まれたとして、妻雅子さん(50)が国側に損害賠償を求めた訴訟で、国側は6日、赤木さんが改ざんの過程をまとめた文書「赤木ファイル」が存在していると初めて認める意見書を雅子さん側に出した。<5月7日付山陽新聞1面>
森友問題ってなあに? と聞かれても、一言で答えるのはなかなか難しい。そこで、以下のように三つの段階に分解して考えてみたい。
第1段階 国が森友学園に格安で土地を売った問題。安倍晋三首相(当時)の関与があったのでは疑惑
第2段階 土地を売る際に財務省が作成した「決済文書」が改ざんされた問題
第3段階 文書改ざんをするよう強いられた財務省職員が自殺。妻が国に損害賠償を求め裁判
今回のニュースは、第3段階でのニュースだが、第1段階から順を追って問題を振り返りたい。「難しい」という方は、まずは目次と太字の部分を流し読みして、それから本文をしっかり読んでいただければ、理解しやすいと思います。
・(第1段階)なんと8.5割引きで国有地を売却
発端は、国有地の売却問題だ。2016年6月、学校法人「森友学園」に対し、国が大阪府豊中市の大阪空港近くの土地を安価で販売した。土地の評価額は9億5600万円だったが、実際の販売価格はなんと8億2200万円引きの1億3400万円! 格安というより、むしろ激安価格といえる。
さらに、森友学園の籠池泰典理事長は、購入した土地に「安倍晋三記念小学校」を建てようとしていたこと、さらには安倍昭恵夫人を名誉校長に据えようとしていたことから、「安倍首相夫妻の関与で土地の価格が不当に安くなったのでは」と野党が疑惑を追及した。
国は値引いた理由として「土地にコンクリートなどのごみがあり、撤去費用分を値引いた」とのことだが、本当にごみがあるのかどうかについてはきちんと確認されておらず、国民共有の財産ともいえる国有地を特定の人物に安く払い下げることに批判が起こった。
また、籠池理事長が記者会見で「口利きではなく、忖度」と言ったことから、「忖度」と言う言葉が当時流行語となった。ちなみに籠池理事長夫妻は、国の補助金をだまし取った容疑でのちに逮捕されている。
・(第2段階)首相を「忖度」して決裁文書を改ざん
さらに2018年3月、財務省が国有地の取り引きについて記した決裁文書を国会に提出した際、文章を改ざん、つまり書き換えることをしたことが分かった。
財務省は内部調査に取り掛かり、安倍首相夫妻の関与が疑われかねない記述を削除した、との調査結果を公表した。そのほかにも、複数の国会議員の名前を削除するなど、文書14件の改ざんが認められた。
この改ざんを主導したとされるのが、当時財務省理財局長だった佐川宣寿氏。佐川氏は「このままの文章が出ると安倍首相夫婦と森友学園との関係が疑われてしまう、やばい!」と首相を忖度し、部下たちに文書の改ざんを指示したという。
公文書とは、文字通り「おおやけの文書」で、後世にも残るもの。それを国の役人(または政治家)の都合で勝手に書き換えるのだから「民主主義を揺るがす問題だ」との批判が起こった。
・(第3段階)職員の自殺
そんな中、財務省近畿財務局に勤める一人の男性職員が自殺した。冒頭の記事の中で登場した赤木俊夫さんだ。赤木さんは生前、決裁文書の改ざんを命じられた。自分を責め続けた結果、うつ病を発症し、自ら命を絶った。
赤木さんが実際にどこまで改ざんに関与していたのかは、明らかになっていない。妻の雅子さんは、夫の死の真相を明らかにするため、国と佐川氏を相手に約1億1000万円の損害賠償を求め、裁判を起こした。
裁判で争点となったのが、今回のニュースの主役である「赤木ファイル」が存在するかどうかだった。妻側は「あると聞いている。夫の死の真相解明のために裁判で出してください」と主張し、国側は「確認されていない」「あるかどうか答える必要がない」などと避け続けた。見かねた裁判所が国に対し「探してみて、実際にあるかどうか回答しなさいよ」と提案。今回、国側が初めて存在を認めた。
・ファイル提出で真相明らかになるか?
赤木ファイルは、6月に開かれる裁判で国が提出する予定だ。ファイルの中身がどこまで公表されるのかは不透明だが、公表のされ方によっては、実際にどのようにして改ざんがされたのかが明らかになる可能性がある。
仕事で精神を病んで、自ら命を絶つということが、家族にとってどれだけつらいことか。真相を知りたいというのは当然の思いだろう。まず赤木さんに対し、謹んで冥福を祈りたい。そして、公文書改ざん問題の真相がどこまで究明されるのか、注目していきたい。