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生活の建築知識.64

おはようございます。

仕事を通じて、これまで多くの住宅を見てきました。
新築はあまり多くないことが理由ですが、年に十数件は手掛けているため、おそらく100件以上の物件を実際に見てきたことになると思います。
一つ一つ資料を見返せば、実施当時の思い出も蘇りますが、正直すぐにパッと思い出せる物件というのは数軒しかありません。
そしてやはり最後に印象に残るのはデザインであり、デザインには人の心を動かす力があるのだと改めて思わされます。
今回は、そんな印象に残っている物件の共通するデザインの特徴を思い返しながら説明をしていきます。

まず、いくつか共通点を挙げてみます。
・統一感(意匠のルール)
・メリハリ(見せたいものと見せたくないもの)
・照明計画
・こだわりと割り切り
では、順に説明していきます。

統一感(意匠のルール)
簡単そうな聞こえますが、これが1番肝心であり、むしろ他の項目は上級者の戯れだと思ってもらって構いません。
ただ、そうであってもなかなか出来ないんです。
頭ではわかっていても、つい部屋ごとであったり場所ごとに違った内容を盛り込んでしまうものです。
実際には部屋ごとに機能や役割も変わるので当然な違いが生じる部分はあるのは否めません。
しかし、一つ統一感から逸脱する内容を盛り込むと、新しくルールが増えるようなもので、その連鎖で徐々に統一感から離れていくことがあります。
また、住宅となればどうしても強い思い入れも出てきて全体の統一感を考慮せずにこれだけは設けたいという何かが出てきたりします。
もちろんご自宅なので何をしようが構いませんが、あくまでアドバイスとしては、徹底的に統一感を重視することをお忘れなく計画を進めていくと意匠的にまとまりが出ます。

・メリハリ
統一感を出した方が良いと話したすぐですが、メリハリは何か違った素材や雰囲気を出すために統一感を崩すことになります。
あくまで統一感は第一に守ってもらえるとよろしいかと思います。
それが出来て初めてメリハリも効果的に取り入れることが可能です。
なぜならメリハリと言ってもあまり極端に浮くような差異をつけずに、むしろ似てるけど違う、はたまた同じだけど見え方が違うくらいの方が全体を考えた時にまとまってるように思えます。
色味は違いが素材が違う、同じ仕上げだが照明の明るさが違うなどでも十分メリハリは付きます。
また、全体を構成する中であまり強調したくない箇所というのは必ずで出来ます。
その時に簡単な方法は目隠しをしてしまうことがあります。
これもアリだと思いますが、一方で手間とお金をかけてわからないようにする方法もあり得ます。
収納などであれば隠すことも可能ですが、設備類であると隠し切るのは難しくなります。
それをいかにデザイン性を確保しながら計画していくかを行った物件ほど全体の調和を崩すことなく成立させていたように思います。

・照明計画
メリハリとも共通する部分はありますが、照明計画で照度を確保するのは絶対条件となりますが、意匠性を向上させるためにはバリエーションのある照明があることで空間に奥行きや揺らぎのようなものが生まれます。
また、よくある円形のシーリングライトは照度を確保するには優秀な器具となりますが、器具の存在感は結構なものとなり、違和感となってしまいがちです。
照明器具は高額なものも多いため安易におすすめもできませんが、メリハリを付けることも合わせて検討しながら、しっかり明るくしたいところや暗くても良いところをエリア分けしながら照明にバリエーションを設けることをおすすめします。

・こだわりと割り切り
こだわりというのは放っておいても湧いてくるものですが、割り切るのは覚悟が要ります。
綿密に計画をしてこだわりを出そうとすると不都合な事柄はどうしても発生してきます。
何かをなくせば不都合もなくなる時にどこまで割り切れるか大切な決断になります。
場合によりますが、こだわりを突き通したいために不都合も許容することで全体の調和が崩れてしまうこともあります。
方法を変えれば解決することもあり得ますが、まずは冷静に全体の調和が崩れるということを把握することが大切ですし、そこから何を優先するか、違う方法はないのかを検討していくことで優先したいことを考えてもらうことを推奨します。

数点説明を行なってきましたが、最終的にはクライアントが満足することが目標なのは変わりありません。
しかし、多くのクライアントは初めて建築デザインに触れる機会が住宅になると思います。
そのため良い物件が何かを判断することも難しく、やりたいことと設計提案の差に違和感を覚える方もいらっしゃると思います。
まずは多くの物件を写真で見てもらいお気に入りのデザインを見つけてみましょう。
そしてそれを構成している何が空間を良くしているのかを設計者に尋ねてみてください。
それをヒントにバランスの取れた住空間を考えるための第一歩になると思います。

では、また。

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