ウクライナとロシアの戦争に対して現在行われているサボタージュとレジスタンス(2)
ザ゠ファイナル゠ストロー゠ラジオ(TFSR)がウクライナとロシアそれぞれで活動するアナキスト゠グループにインタビューを行った。2回に分けて訳出する。二つ目のインタビューは、ロシアで活動する無政府共産主義戦闘組織(BOAK)へのものである。
原文掲載日:2022年7月17日
原文:https://thefinalstrawradio.noblogs.org/#BOAK
TFSR:自己紹介をお願いします。この場で使いたいお名前、リスナーとシェアしたい哲学的・組織的背景、大体どの辺の地域から話しているのか、といったことです。
BAOK:私達は、プーチンの権威主義体制や東欧のあらゆる圧政者に対抗する革命家で、戦闘員だと自認しています。連帯・自由・平等・ラディカルエコロジーに基づく水平型の自主管理社会を求めて戦っています。革命組織はこの目標を達成するために必要なツールだと確信し、長年アナキズム運動に参加してきました。私達は無政府共産主義戦闘組織のメンバーで、「アナキスト゠ファイター」情報チャンネルのコレクティヴです。
TFSR:無政府共産主義戦闘組織とは何ですか?何を行い、誰が参加し、その短期目標と長期目標はどのようなものですか?
BOAK:無政府共産主義戦闘組織(BOAK)は、特に今日のロシアやベラルーシのような明確な権威主義国家に対抗し、社会革命の目標を達成する最も適切な--唯一ではないにせよ--方法として直接行動とゲリラ闘争を支持しているアナキストのグループです。
ゲリラ闘争は、他の革命活動(最も「平和的」で合法的なものも含みます)同様、組織的で規律正しい軍事的なやり方で遂行されねばなりません。アナキストには戦闘能力を持つ献身的革命家の政治組織が必要です。ロシアとベラルーシでの広範な反対運動にも同じことが当てはまります。活動する中で、私達はこのヴィジョンを実行しようとしています。
私達の短期目標と長期目標についてお話ししましょう。短期目標としては、組織の発展・他の組織やグループとの連絡網の発展・中期計画(ロシアでの社会的アナキズム革命の構築)を効果的に実行できるだけ私達が充分な力を持つことが挙げられます。
長期目標は、この革命を達成し、私達の理念に沿った新しい自由で公正な社会を構築することです。
TFSR:ますますアナキズムが犯罪として扱われ、左翼運動が一掃されているように思える場所で、どのようにしてアナキズムの政治に至ったのでしょうか?西欧の「反帝国主義者」には、ロシア国家は帝国主義に対する防波堤なのだと宣伝している人達がいますが、これについてはどのように対応していますか?
BOAK:私達がアナキズム運動に至ったのは数世代前です。2017年の終わり頃から現在までの荒々しい弾圧のピークが来る前です。アナキズム思想に至った道はコレクティヴのメンバーそれぞれで違います。ただ、ある時に、私達の戦闘的姿勢が私達を団結させました。それ以来、分析と実践を集団的に行っています。
私達の運動が犯罪にされそうになったり、一掃されそうになったりしても、新しい世代の革命家の参加を惹きつけることができています。明確な実例は、戦闘的アナキズムに関心を持った青年達を秘密捜査官が起訴したシベリアのカンスク事件です。ロシア全土に潜在的同志達が数多くいると思います。アナキズムは、支配体制に対して一貫して断固として戦う人々の運動だというオーラを持っているからです。
反帝国主義の考えを持つ全ての人は、この世界には一人以上の帝国主義者がいると理解しなければなりません。プーチンのロシアは、間違いなく帝国主義勢力です。米帝以上に、この地方の諸民族にとって差し迫った脅威です(今年1月のカザフスタンや現在のウクライナを見てください)。
TFSR:あなた方の社会革命ヴィジョンについて、それがアナキストではない他の反対派運動とどのように関わるのかについて、もう少し話してもらえますか?言論と集会を犯罪と見なす抑圧的体制の下で組織を作るのは難しいように思えるのですが。
BOAK:とても一般的な言い方ですが、革命は、幅広い社会層の参加を得て、合法的手続きの外で行われる大規模な政治的変革プロセスです。それに加えて、社会革命は大規模な社会変革を意味します。単なる支配者の入れ替えでは社会革命にはなりません。今のところ、ロシアとベラルーシで政権を打倒しようとするあらゆる運動が、社会の大きな変化を約束しています。
もちろん、私達はこの変革がリバータリアンの軌道に乗ってほしいと望んでいます。そのためには、強力な革命組織がどうしても必要です。同時に、私達の国で権威主義体制を転覆することは、間違いなく、一つの政治政党や組織ではなく、幅広い大衆運動の課題となるでしょう。予想されるでしょうが、この運動の内部では、異なる政治グループとそのプロジェクトの間で激しい争いが繰り広げられます。アナキストが真剣にリバータリアン革命を起こそうとするのなら、私達はこの争いに関わる準備をしなければなりません。
少なくとも最初のうちは、全く異なる政治的イニシアチブの調整が行われ、共通の目標で団結すると思います。
そして、この目標を達成するプロセスの中で、それぞれのイデオロギーとアプローチが持つ長所と短所が見えてきます。私達は、アナキズムのイデオロギーは他よりも諸問題に上手く対応でき、旧社会の悪弊を排除した新社会構築の機会を民衆に与えてくれると信じています。
TFSR:ロシアではアナキズム理論と政治が盛り上がっているのでしょうか?それとも、アナキズムとは無関係に戦術や反国家組織が増えているのでしょうか?
BOAK:ロシアでアナキズム理論が盛り上がっていると述べるのは本当のところ正しくはないですね。実際には、危機的な情況で、トンネルの出口を照らす光を一生懸命探しているといったところです。ただ、こうした情況は、私達が関わっている劇的な歴史的出来事と共に、アナキズムの思想と実践を促す方法に新しいやり方と理解をもたらすことができます。もしかすると、リバータリアン型連邦の理念は何らかの勢いを得られるかもしれません。私達が現在経験している血生臭い恐怖は、帝国と国民国家という抑圧的で不公正な社会モデルの直接の結果だからです。
TFSR:あなた方は、2月のウクライナの戦争の激化と共に誕生したのですか?それとも、それ以前からあったグループなのですか?
BOAK:このグループは数年前からあります。「アナキスト゠ファイター」のページとチャンネルもそうです。私達の地域での戦争というこの正念場は、組織の存在と名前を公表する適切な時だと判断しました。
TFSR:ここ米国では大企業ニュースの報道が周期的にその焦点を動かすため、ウクライナに対するロシアの戦争のニュースがそれほどヘッドラインに上らなくなっています。ウクライナがさらに多くの西欧の武器を手にしている現在、紛争はどのような情況にあるのでしょうか?また、この紛争について人々はどのように見ていて、どのように理解していると感じていますか?
BOAK:戦争が激しい局面、おそらくは重大な局面にあるのは確かです。ドンバスではここ数週間大規模な戦闘が行われており、最高潮の段階にあるように思えます。西欧の大企業メディアがこの戦争を「忘れ」始めていますが、最初の数カ月と比較して激しさは変わっていませんし、この地方にとって決定的に重要であることには変わりません。
TFSR:ロシア連邦が統制する地域で反戦運動はありますか?私達が耳にしているのは、メディアの検閲・「戦争」という言葉のニュースピーク的犯罪化・モスクワとサンクトペテルブルクといった都市での抗議行動参加者の容赦ない逮捕です。こうした運動は今も続いているのでしょうか?それとも、公の抗議行動は暴力によって撃退されたのでしょうか?
BOAK:そうですね。弾圧は厳しいレベルです。ここでは、検閲・逮捕・拷問・懲役全てが行われています。開戦当初にロシアで行われていた明確な大衆抗議行動はほとんどが政府によって鎮圧されました。しかし、様々な個人的行動が、勇敢なアーティストや活動家によって行われています。今も、程度の差こそあれ、定期的に実行されています。
もっと重要に思えるのですが、開戦間もなく、多様な抵抗の潮流が現れ、様々な政府機関、とりわけ徴兵センターへの自発的で分権型のサボタージュが行われました。これは既に一つの現象となっていますが、私達は、近い将来、もっと組織的で大衆的で急進的な形になると期待しています。
ご存知の通り、私達はこの闘争の一翼を担う活動も行っています。
TFSR:ベラルーシとロシアの抑圧的政権への対抗行動のニュースをリスナーが知らないと仮定してみて下さい。あなた方を鼓舞しているアーティストや活動家の行動の一部を話してもらえますか?徴兵センターに対する行動についてはどうでしょう?どのようなもので、何回ぐらい行われ、人々からどのような反応が聞かれたのでしょうか?
BOAK:ロシアの抑圧的政権に対する直接行動には非常に長い歴史があります。
NRA(新たな革命的選択肢)が始まりでした。1999年にロシア連邦保安庁(FSB)の本館や幾つかの徴兵センターを爆破したのです。その後、「ブラックブロック」が数年にわたりアナキスト゠ゲリラ゠グループを率い、一度も捕まりませんでした。アルハンゲリスクで身を賭してFSBビルを爆破したミハイル゠ズロビツキー。2020年には4人のアナキストがベラルーシに戻り、ルカシェンコの弾圧と闘おうとしました。アナキスト゠パルチザン事件として知られています。枚挙にいとまがありません。明らかに、レジスタンスは常にここにあったのです。
ただ、プーチン政権の専制的性質が誰の目にも明らかになった今、直接行動は多様な人々の行動方法になっています。
過去数カ月、ロシア全土で18カ所の徴兵センターが放火されました。全てが上手くいったわけではありません。火が小さすぎた時もありました。
しかし、幾つかの場合、例えばモルドヴィアでは、強制的に入隊させられそうになっていた青年達のドキュメントが破壊されました。ニジネアンガルスク・ルホヴィツィ・オムスクでは、軍事センターの部屋を全焼させました。
人々の反応は様々です。例えば、軍のプロパガンダに従順な人もいます。しかし、多くは戦争が多くの人々を死に追いやっていると理解しています。息子や夫を死に追いやっているのです。プーチンの戦争で死ぬためにウクライナに送られようとしているのですから。
また、徴兵センターの放火以外の行動もあります。例えば、列車を脱線させたケースもありました。鉄道用電気設備や国境地域にある携帯電話中継塔の破壊もあります。
TFSR:他のグループや個人があなた方に近い行動をしている場合、そうした人々をどのように支援していますか?
BOAK:私達は、自由のために戦う側にいて現在の激しい闘争に参加している善意の人々を誰であれ支持しています。プーチン政権とルカシェンコ政権と対峙する全ての人、特にロシアとベラルーシ国内で闘争している人々がそうです。また、世界中で自由と公正のために闘っているアナキストの仲間達や反権威主義者も支持しています。
具体的な対応としては、私達の情報チャンネルで、直接行動に有効なスキルを共有し、私達に行動報告を送ってくれた同志達のグループの言葉や彼等の行動のコミュニケを広めています。開戦後、私達は様々な革命家やグループの必要な活動資金を支援するために寄付を募り始めました。既に、信頼に基づき、求めに応じて、少額ながら最初の支援金を送っています。
TFSR:情報チャンネルについてもっと話してもらえますか?また、それに関連してですが、抗議行動・直接行動・連帯活動に関する非公開のはずのテレグラム゠チャットに参加したために罰金などの刑罰を受けている人たちがいますね。テレグラムは、ロシア国家とベラルーシ国家の監視を避けるには安全な方法とは言えないと分かっています。レジスタンス゠カルチャーを広めつつ、セキュリティ゠カルチャーをどのように確保していますか?
BOAK:私達はbo-ak.orgのサイトを開設してプロパガンダ活動を始めました。
ただ、同時に、人々は情報入手のためにSNSを使うことが多いと分かっていたので、もっと多くのオーディエンスに訴えようとSNSアカウントを幾つか開設しました。vk.com(ロシアのSNS)・テレグラム・ツイッター・YouTubeなどです。
禁止されたチャンネルもあれば、あまり上手く行かなかったチャンネルもあった(さらに、ウェブサイトをダークウェブに移さざるを得なくなった)ため、今は次のプラットフォームに書き込んでいます:
boakor7dmr63zguccltp6nki56ou4oppirhyllfck7yd3sifywinhkyd.onion/ これが現在のメインサイトです。ここでは理論的記事が多いですね。最も重要なニュースや私達が行った行動のコミュニケもあります。
http://boakmirror.noblogs.org/ ここは、上記のサイトのミラーです。ダークウェブではありません。
https://t.me/BO_AK_reborn これが私達のテレグラムチャンネルです。直接行動の組織方法に関する有用なアドバイス・イデオロギーに関する記事・レジスタンスのニュース・行動のコミュニケを載せています。
・https://vk.com/bo_ak と https://vk.com/zloyancom vk.comでの私達のチャンネルです。
セキュリティについてですが、VKはプラットフォームの中で最悪です。残念ながら、未だに多くの人がVKを使っているので、その人達を失わないよう私達の主要なニュースを載せています。ただ、コンタクトを取ることはありません。VKでやりとりしている全ての人に、少なくともテレグラムに変更するよう強く勧めています。
もちろん、テレグラムも完全に安全ではありません。だから、私達の方法は、プリペイド式携帯電話の使用です(匿名で暗号通貨を使って買った仮想電話番号が望ましいですね)。また、テレグラムを使う際にはTORやVPNを必ず経由するよう勧めています。インターネット上の人を信用してはなりません。警察の手に渡っては困るような自分の情報を誰にも教えてはいけません。
私達は、できる限り、このやり方を読者に伝えています。
また、重要な対話をする際には、PGPによるファイル暗号化をした電子メールを使っています。他の人達にも使うよう勧めています。テレグラムより安全だと思います。少なくとも、対話の相手を気にするだけで、メールを転送している配達人を気にしなくてもいいのです。
TFSR:以前この番組でロシアからゲストをお招きしたのですが、その人の話では、多くのロシア人が徴兵を避けているため、兵士の多くが、ロシアとの貿易やロシア製品に依存している近隣の中央アジア諸国から来ているそうです。ウクライナにいるロシア軍で戦っているのはどういった人たちが多いのでしょうか?
BOAK:大雑把に言って、ロシアの占領軍には二つのグループがあると言えます。一つ目は、本物の「戦争の犬」・ワグナーの戦闘員・様々なスペツナズ精鋭部隊(特殊任務部隊)・戦争をライフスタイルにしている傭兵です。彼等は、政権の排外主義反動イデオロギーにかなり洗脳されています。第二のグループは、自発的に契約にサインしたものの、貧困で経済的に貧窮している地域で徴兵された兵士達です。社会的に這い上がるための数少ない選択肢の一つが兵役なのです。こうした人達も、プーチン一派の帝国主義的野望の犠牲者です。大抵、こうした人達はロシアの「国内植民地」出身です。未開発で首都に搾取されている、いわゆる民族共和国、ブリヤート共和国やダゲスタン共和国などから来ているのです。これは偶然ではありません。
ロシア軍に中央アジアの外国人がいるというのは初耳です。ありそうにないですね。ロシアが連邦構成国として認めた地域出身の兵士と混同しているのではないでしょうか。また、少し前に、ロシアがシリアで兵士を募集しているというニュースがありましたが、根拠は見当たりませんでした。
TFSR:制裁は一般市民に何か影響を与え続けていますか?ロシア資本主義は自給自足だという国家のレトリックと気候変動の現実(食物生産に影響を与えている旱魃など)の関係について話してもらえますか?
BOAK:制裁の影響は一般市民にすぐに及びません。最初は、何も問題ないかのように見えていました。ただ、しばらくして、店に行くと、必要な商品(高級品ではない)の値段が以前の三倍になっていたり、全く買えない物もあったりしています。
ロシアの人々は制裁の影響を受け始めていると言えますが、今のところ、「何でもかんでもこんなに高いのは何故だ?」と怒っているような感じですね。大部分の人が今も、どうにかして普通の状態に戻るだろうと考えています(具体的方法を考えていなくても)。だから、政府は今のところ反発があるとは感じていません。
しかし、情況は日々変わっています。
ロシアが自給自足になり得るかどうかという疑問についてですが、私達の答えは「この支配体制の下では、絶対にない」です。原油価格が高騰し、剰余金がある以上、制裁なしにそうはならないでしょう。従って、今、自給自足になる可能性はゼロです。ロシア社会がもっと自給自足型になるとすれば、草の根参加型経済アプローチを行った場合でしょうね。
現在のシステムでは、ロシアは食糧や衣服の一部をある程度賄えるかも知れません。しかし、もっと複雑なもの--電子機器・自動車・機械--は、賄えないと思います。中国などの国から買おうとするかもしれません(「グレー」マーケットというやつです)。ただ、ロシアは広大で、多種多様なものが必要です。グレーマーケットで全てカバーできるとは思いません。もちろん、ここでも時間が鍵となります。倉庫はもう満杯ではありません。ロシアには通商チェーンを構築する時間などありません。
だから、私達は、ロシアの民衆は間もなくソヴィエト連邦時代よりももっと強い欠乏感を感じることになると考えています。
TFSR:国家の弾圧によって人々が戦争賛成や中立的な立場から反戦の立場へと変化している大きな兆候はありますか?それとも、変化していないのでしょうか?また、変化しているのなら、国家のプロパガンダはこうした変化に応じて進化していますか?それとも、支配を維持するために恐怖などに頼っているだけなのでしょうか?(最近、軍の将校が兵士に暴力を振るって、実際に裁判所で判決を受けたというニュースがいくつか報道されています。ただ、もしかすると、米国で「司法システムは機能している」と証明するためにジョージ゠フロイドを殺害したデレク゠ショーヴィンが有罪判決を受けたように、「もちろん、私達はこんなことを許しはしない」と国家が示す例として利用されているだけかもしれませんが。)
BOAK:ロシアでは、仰っているようなプロパガンダの大きな変化はないと思います(システムの中に悪人はいるがシステム全体はうまく機能している、といった情況を国家が描こうとしている場合のように)。
ウクライナのブチャの出来事が明らかになった後でさえ、ロシアは「全て嘘だ、我が兵士は聖人だ」という立場を取っています。そして、残念ながら、多くの人がそれを信じたがっています。信じないのなら、何かしなければならないからです。「自分達の」国家は悪の権化なのですから。そして、このような時代に何かを行うのはとても恐ろしいのです。
だから、残念なのですが、国家弾圧の証拠そのものでは、ロシア大衆を反戦の立場に変化させられないのかもしれません。少なくとも、プロパガンダ機構が懸命に「全て嘘だ」と述べている時には。
ただ、これは他の事実と共に作用します。以前よりも自分の生活の質が悪くなったとか、息子が死んで戦争から帰ってきた(さらに酷い場合には、帰ってこず、指導者に聞きに行っても、指導者は何も知らない振りをして、目の前から消えてほしがっていた)といったことです。
こうしたこと全てが相まって、実際に人々の立場が変わるのです。
TFSR:米国などの場所では、プーチンが辞任したり解任(以前、ジョー゠バイデンが脅したように)されたりすれば、ロシアは自由資本主義共和国の愉快な仲間達の仲間入りできると考えられています。社会革命は別として、ロシアやベラルーシの「絶対的指導者の交代」は何を意味するのかお話いただけますか?
BOAK:ロシアでの「絶対的指導者の交代」はとても多様な背景で起こり得ます。最悪の場合、支配派閥内で権力者を挿げ替えるだけになり、システムはほとんど変わらないでしょう(そして、さらなる暴動を喚起するかもしれません)。もう一つの選択肢は、支配エリートを打倒したり、少なくとも、その方向性を何らかの形で変えたりすることです。ソ連崩壊後の時代に、私達はエリツィン大統領の実例を目にしました。自由主義経済政策は、かなり独裁的な政治手段と結び付きやすい。従って、現体制派からであれ、反対派からであれ、新しく「もっと自由主義的な」指導者が現れたからと言って、本物の社会-政治的変革は保証されないのです。
本物の変革には、「絶対的指導者の交代」ではなく、あらゆる絶対的指導者からの解放が必要です。自治の実践が行われねばなりません。ただ、何らかの「暫定期間」を考慮しないわけにはいかない。政府の変化が国家全体の弱体化を引き起こし、さらなる社会変革に道を譲るようになる期間です。リバータリアン革命家は、この期間に出来るだけ多くの社会基盤を奪取する準備をしておかねばなりません。
いずれにせよ、「西欧世界」にロシアの居場所はありません。グローバルエリートも、グローバル市場の諸条件も、グローバル都市圏外の大衆福祉を許さないからです。だから、ロシア社会は、「自由資本主義共和国の愉快な仲間達」が提案する誤ったレシピの外に、その繁栄の道を見つけるという課題に否応なく直面することになります。
ベラルーシに関して言えば、現在の政治システムは、ロシア以上にたった一人の人間に依存しているように思えます。ルカシェンコが国を去れば、ベラルーシは、ロシアの帝国主義者に完全に飲み込まれようとするか、軌跡の書かれていない激しい変革の道を経験することになるでしょう。
TFSR:過去十年間、米国では偽情報が家族とコミュニティを分断してきました。「ナチスを排除し、ウクライナの同胞を解放する特別作戦」と「失われた帝国を再建するための帝国主義的侵略」との違いについて同じような効果を目にしていますか?個人間のレベルで(食い違いが有害で克服できないものにならないようにしつつ)国家プロパガンダに対処するための戦略・リソースはありますか?また、国家権力は、ソ連時代のように国の部局を関与させて、対立し合う個々人に力を及ぼしているのでしょうか?(この疑問を提起したのは、ロシア系米国人アナキスト同志です。)
BOAK:そうですね。ロシアでも、家族や友人達がいる近隣諸国でも同じことが起こっています。多分、年配の世代の方が政権の政策を遂行したがっていると言えるかもしれません(もちろん、例外は数多くありますが)。これは個人間のレベルで向き合わねばならないと思います。国家プロパガンダを消費している人達は皆、自分の目で見ねばなりません。拒絶しているのは、自分の愛する人達であって、テレビに映る邪悪な肖像ではありません。冷静に、説得力ある議論をしながら、優しいやり方で、最終的には愛を持って、自分の立場を擁護すれば、耳を傾けてくれる充分な可能性があります。
TFSR:ロシア・ベラルーシ・ウクライナの外にいるリスナーは、ルカシェンコに、プーチンに、そしてウクライナの戦争に対するレジスタンス運動に連帯して、どのように行動し、発言すればいいでしょうか?直接行動を行っている人々や犯罪者とされた人々をどのように支援できるのでしょうか?どうすれば情報を常に入手できるのでしょうか?
BOAK:東欧の権威主義政権に対する直接行動は世界中で行えます。ロシア新興財閥の自宅を西欧の同志達が占拠した行動は、私達をとても鼓舞しています。この文脈で、新興財閥の事業利益・不動産・西欧の提携企業は全て正当なターゲットです。連帯のための公的活動・象徴的活動も大歓迎です。どんな表現も重要で、刺激的で、価値があります。
とりわけ、情報の流れが重要です。同志達にはそれぞれのサークルやスペースで私達の言葉を広めていただきたい。「ウクライナのナチスとNATOに対する反ファシスト闘争」などというクレムリンのデタラメなシナリオと戦うために、特に重要です。また、東欧のリバータリアン組織のための寄付キャンペーンと支援物資の収集とは、私達がここで行っている闘争を継続するための強力な基盤です。
ある程度定期的に英語でアップデートされている情報リソースをいくつか紹介します。ロシアについては avtonom.org、ウクライナについてはレジスタンス委員会、ベラルーシについては Pramen です。私達も、「無政府共産主義戦闘組織」として、重要なニュースとテキストを英訳しようとしています。