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コミュニティ所有権とアナキズム的住宅供給の途

原文:https://freedomnews.org.uk/2024/07/15/community-ownership-and-the-anarchist-path-to-housing/
原文掲載日:2024年7月15日
著者:アイザック゠ベル゠ホームストロム(Isaac Bell Holmström)

(訳註:コミュニティへの公共資産委譲については、『英国のコミュニティへの公共資産委譲(Asset Transfer)にみる市民主導型都市再生政策と取組』『コミュニティへの公共資産委譲と自律的な地域運営の可能性の研究』を参照しました)

選挙公約が何であれ、建設は住宅危機の特効薬にならない

英国の住宅価格が高騰し続ける中、乱立する薄っぺらで不可解なほど高価な新築物件が都市住民の手に届くとは思えない。内向きになり、既に持っているものに目を向ける時が来たのだ。

住宅危機によりホームレスの人々が高級マンションの戸口で寝泊まりしている一方、何十万もの住宅が空き家になっている。空き家は記録的な数に達しているが、住宅の分配はかつてないほど不平等だ。しかし、コミュニティへの公共資産委譲が、こうしたスペースの解放という解決策を提供する。地主であること・不動産を所有すること・コミュニティで共有することの意味を再考する。これは、顔の見えない賃貸仲介業者や企業地主とはかけ離れた分権型で共同体的に組織された生活システムを通じて、アナキズム的住宅供給の道筋を見出すことである。

去る者は日々に疎し

市場の浮き沈みに伴い、無数のアパート・住宅・オフィス・倉庫が空いたままになっている。その価格がさらに1000分の1%上昇するのを住宅開発業者や投機家が爪を噛みながら待っているからだ。コミュニティが自分達の住宅ストックについて決定を任されるなど滅多にない。市場から生じる社会問題は利潤と株価が上昇する限り無視される。住宅開発業者は、既存の建物を修理したり改装したりするのではなく、一から建てるよう奨励されている。減税が適用されるのは新築住宅だけだ。

空き家の統計は常に概算だ。国勢調査員は、困っている家族が使用できる空き家を特定するのに最も相応しい人物ではない。多くの場合、相応しいのはコミュニティそのものであり、地元住民である。しかし、調査によれば、資本主義の住宅流通により、英国では31万3千戸の空き家が放置され、その内約2万戸が10年以上空き家のままである。

「人類の生息地(英国)Habitat for Humanity GB」の調査では、16万5千の民間商業施設が空き家のまま放置され、さらに地方自治体が所有している7千の地所も空き家である。英国で放置された建物は膨大な数にのぼる。しかし、成長・解体・建設が私達の住宅政策を支配している。建物の全耐用期間で排出される炭素の30~50%は、既に、建設段階の終わりに発生しており、非効率的で高度に中央集権化された建築業界では気候適応ニーズを満たせないと証明されている。

新しい建物が公共的で利用しやすい空間であることなど滅多にない。その代わり、ガラス張りのオフィスビルと民間の学生向け住宅を目にする方が多い。貸別荘や短期賃貸を巡る問題を考えると、コミュニティ自治を巡る諸問題はさらに明確になる。地域への感情移入もなく、地域を支援するつもりもない一時的居住者や、絶望した地域住民の手からアパートを人質に取っているセカンドハウス所有者(イングランドとウェールズで17万人程)は、個人的利益のために空間を搾取している。明らかに、コミュニティ自体の意見は反映されていない。

手の届かない場所

住宅危機の焦点は、労働者階級への供給を制限し、富裕層の所有権を最大化する再配分である。タンストールによる世帯構成分析によれば、1911年には人口の49%が過密状態(1部屋に1人以上)だったが、2011年には4%へ減少した。しかし、空間利用の格差は劇的に拡大した。同じ期間で、人口の中で最もゆとりある住宅を持っている10%は、1人当たり平均約2部屋から5部屋へと増加した。逆に、1911年に最も少ない居住空間を持っていた人口の10%は、「1991年までに1人当たり1部屋を達成しただけ」で、それ以降、空間消費の増加は記録されていない。居住空間は特定階級のためだけに建設され、住宅危機は社会的弱者に直接集中している。建設と住宅割当制度は、それを最も必要としている人々を助けようとしない。コミュニティのレベルで私達がこれを行わねばならない。

市場は所有権を中央集権化し、搾取に向かわせ、コミュニティ自体から遠く離れていく。2023年の建設数と解体数を合わせると、単年で1万2千戸の公営住宅が純損失した。国家は何年もの間貧困者の住宅ニーズを無視してきた。「購入権」が公営住宅ストックの40%を民間地主に譲渡し、資本主義市場の短期的需要に圧力を掛けられた個人に所有権を与える危険を証明した。しかし逆に、所有権をコミュニティが取得し、市場原理にとらわれず、より人間的な観点で運営されるようになれば、その効果は変革をもたらす可能性がある。

解決策は?

コミュニティへの公共資産委譲は強力なツールだが、充分活用されていない。だが、英国の住宅事情を根本的に変える可能性がある。このプロセスは長期にわたるが、一時的資産委譲でも恒久的資産委譲でも、建物がその役割を果たすよう、所有権を住民・使用者のグループやコミュニティそのものへ移すという考えは、こうした格差を是正する驚くべき可能性を秘めている。現在、委譲交渉における力関係は国家と地方議会に有利だが、借家人と住宅所有者が自身の建物を完全所有する機会は依然として存在する。組織の単位が直接コミュニティに移れば、地元のニーズが満たされ、地元のスキルが訓練される可能性が急激に高まる。

空き家を引き継ぐために人を団結させる力が街路にはある。維持管理や改修のプレッシャーは高いものの、時間と共に制度が整備され、こうした取り組みを支援し、地元住民に有意義な仕事を生み、1200ポンドの保証金を払える人ではなく、家を必要とする人々が使えるようになると期待できる。

この分野では驚くべき取り組みが行われている。「人類の生息地 Habitat for Humanity」は放棄された商業施設を介護離職者が利用できるようにしている。「空き家対策アクション Action on Empty Homes」はコミュニティが地域の空き家を引き継ぐ支援をしている。利用のバランスを取り戻す強力な一歩だ。それでも、未来に目を向ければ、高層ビル群全体が団結して自身の不動産を管理し、必要としている人々に空き室を開放できるようになるかもしれないのである。

ロンドンでは「公営住宅の建築士 Architects for Social Housing」の支援を受けて、760戸の住宅団地がコミュニティ委譲プロセスを進めている。この選択肢はもっと注目されるべきだ。解決すべき課題もある。将来的にこのモデルの潜在的脆弱性として、例えば、排他的でほぼゲート化されたコミュニティが誰の入居を許可するか偏見に満ちた判断をする可能性がある。地所の委譲は、責任とリスクの委譲でもある。資本主義の下で、資源に乏しく時間もない住民により多くの負担を強いてはならない。それでも、住宅協同組合・コミュニティへの公共資産委譲・地所管理に対する共同支払いや共同作業の実例を目にすればするほど、将来は明るいものに見えてくる。

サービス提供が個人や企業の家主からコミュニティへ移行すれば、地域を知り、近隣の歴史を知っている人は、その知識によって信頼され、尊敬されるようになる。コミュニティ資産が私的に売却される際、コミュニティは「第一拒否権」を持つ。では、コミュニティが第一購入権を持てばどうだろうか?空き家から始めるのは理に適った選択だが、アナキズムの住宅供給の基本は、住宅ごと・通りごと・ブロックごとにコミュニティが集まり、住宅と隣人の世話をする分権型で人道的な住宅形態なのである。

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