ニューカレドニア:カナック反乱とニッケル産業
英語原文:https://freedomnews.org.uk/2024/06/27/new-caledonia-the-kanak-insurrection-and-the-nickel-industry/(仏語原文)
英文掲載日:2024年6月27日(仏語原文は2024年6月8日)
著者:サン゠ノン
(訳註:翻訳に際しては、適宜仏語原文を参照し、英文の不明点を補いました。)
弾圧が続き、フランス植民地当局が正常な状態に戻ると発表したが、ニューカレドニア(カナキー)の情況は解決から程遠い。カナック族の若者達による反乱勃発から4週間、ヌメア国際空港は「追って通知があるまで」閉鎖されたままだ。6月5日以降、マジャンタ飛行場だけがリフー島・ウベア島・マレ島方面の国内便向けに再開され、500人近くのフランス人旅行者が人口27万の群島に3週間足止めされている。カナキー北部に関しては、はしけでコネに到着するコンテナを軍が管理し、店舗への供給を(したがって配給も)直接担っている。
島々に派遣された3500人の警官と兵士が圧力を掛けているにもかかわらず、カナック反乱者は、ヌメア地区や空港に繋がる50キロの道路沿いで解体された路上バリケードの一部を元に戻し、時にはガスボンベを使って罠を仕掛けたり、警官に向けた手作りサプライズを用意したりすることも忘れてはいない。例えば、6月4日にダンベアでは歩行中の憲兵がマンホールの底に落ちた。マンホールの穴が枝で隠されていたのである。
5月13日以降、合計212人の警官と憲兵が負傷した。多くのカナック人も負傷したが、当局は数の公表を拒否している。反乱者の中には警察によるフラッシュボールの発砲で片目を失った者や顔の骨を粉々にされた者、銃で撃たれて昏睡状態の者がいる。
最近の2つの出来事を挙げよう。一つ目は5月29日。午後8時頃、ダンベアで警察が路上バリケードを攻撃している際、警官達は多数の投石だけでなく、ライフルの銃撃も受けた。国家憲兵隊治安介入部隊(GIGN)がこれに応戦し、狙撃者に「向けて」6発発砲した。1人の反乱者が重傷を負った。「外科的処置をしたが、予後は依然として危ぶまれている。法医学の所見では胸部と肩に2発の弾丸がある。」
次は6月3日。午後4時頃、国際空港に通じる戦略的道路沿いにあるコル゠ド゠ラ゠ピローグのサンローラン部族ダムで、憲兵隊がカナック反乱者達に発砲した。1人が肩を撃たれ、もう1人が頭を撃たれた。6月8日(土)に、頭を撃たれたリオネル゠パイタが病院で死亡したと分かり、この地域での死者は8人になった(5人がカナック族で、出身地は2人がカナラ、1人がマレ、1人がポインディミエ、1人がパイタだった。1人はカアラ-ゴメンのカルドシュ族で、路上バリケードに対して発砲していた。2人の憲兵も殺されたが、そのうち1人を殺したのは同僚だった)。
言うまでもなく、このような情況で、8人の公式死者数を遥かに超える「失踪者」の数について荒唐無稽な噂が渦巻いている。ヌメアとコネの刑務所は溢れんばかりの満杯で、カナック族の囚人はポリネシアとフレネスに強制追放されている。公式報告書によれば、5月13日以来、726人が警察に拘留され、115人が裁判所に送致され、60件の収監令状が出されたという。
ニッケル産業
カナック青年による今回の反乱の根底には、植民地化・人種差別・屈辱・苦難だけでなく、ニッケルの問題もある。簡単に言えば、世界のニッケル埋蔵量の1/4がカナキーにあり、露天掘り鉱山で採掘され、3カ所の乾式冶金処理工場に供給されている。現在は世界生産量の5%しか供給していないものの、乾式冶金工場は群島の人工的冨の全て(群島の輸出の90%、雇用の25%)を提供している。反乱の前から既にこれらはほぼ破産状態だったか、破産寸前だった。3つの主な派閥--分離主義者・体制支持者・国家--それぞれが主要工場の1つを所有している。
最初の工場(コニアンボ゠ニッケル、KNS)は、北部のカナック分離主義者の手にあり、2024年2月から閉鎖されている。主要株主であるスイスの原材料取引大手グレンコア社が撤退したからだ。それ以来、この工場は溶鉱炉の完全性を維持するためだけに動いている(冶金工場の溶鉱炉が止まり、鉱石や電力が供給されていない場合、突然の停止が恒久的損傷を与えかねないだけでなく、再稼働するまでに数カ月掛かる)。
2つ目は1880年創業の歴史ある工場で、フランスのエラメット社グループが56%を保有するSLN(ソシエテ゠ル゠ニッケル社)に属し、工場自体をフランス国家が27%保有している。この工場はドニアンボにあり、反乱以前から既に支払い停止状態だったが、昨年2月に6000万ユーロの国家融資のおかげで人為的に存続している。エラメット社は、ニューカレドニアでの冶金活動から手を引きたいと思っている。ハルマヘラ島(インドネシア)のウェダ湾にある原生林のど真ん中で、中国資本と提携して世界最大のニッケル鉱山を操業しているからなおさらである(インドネシアは実際、世界のニッケル生産の55%を占めている)。中国資本との提携は、破格の労働力と電力価格のお陰で、2023年だけで43%近い価格暴落を引き起こした。
さらに、同社はチリとアルゼンチンで巨大なリチウム採掘権を獲得したばかりである。カナキーでこの工場は、フランス国家による複数の反乱鎮圧作戦の目標となった。工場から数百メートル離れた場所で暴動が起きたのは言うまでもなく、鉱石を供給していた5つの採掘場全てが4週間封鎖され、鉱石の在庫が底をついたのである。
ゴロにある南工場と呼ばれる第3の工場はプロニー゠リソーシズ社の合併企業が所有している。こちらも支払い停止状態で、3月にフランス国家から1億4千万ユーロの融資を受けたおかげでやっと存続している。主要株主であるスイスの商社トラフィグラは、何カ月も前から株式を転売したがっており、2021年にテスラ社と締結した有名な「世紀の契約」にはほど遠い。SLNと同様、鉱山と工場でのプロニー゠リソーシズの活動は、その湿式冶金処理が群島の他の2つの工場と異なっていても、反乱開始以降止まっている。
この事態に直面し、国家は、何としても手放したくない植民地を正そうと何カ月も努力してきた。エネルギー補助金として2億ユーロを拠出する「ニッケル協定」を地元政府(体制支持者と分離主義者で構成され、後者が主導している)と交渉しようとしている。それには幾つかの条件が付いていた:工場は、電気自動車用バッテリーを優先的に欧州市場へ供給すると約束すること;地元政府は大幅増税を行うこと;より多くの原料鉱石の輸出を許可すること;鉱業法の管轄権を一時的に国家に戻すこと。
つまり、この「ニッケル協定」は、2023年11月以来8つの改定を経ながらも未だに調印されていないが、大都市向けにニッケル採掘を強化することを目的としたプロジェクトで、カナキーを、疑いもなく新植民地主義の枠組みに組み込まれた純粋な採鉱領土へと変貌させようとしている。これは、社会平和を買うとされていた1998年の有名なヌメア協定とは違う。ヌメア協定は、鉱業収入を使ってカナキーの発展を促し、独立を可能にする計画だった(だから、2019年から2021年まで独立に関する住民投票が3度行われ、カナック族のブルジョア階級に鉱山と工場が譲渡され、地元政府が設立されたのである)。
だから、「ニッケル協定」は、この資源を当てにして自分達の経済的自立を図ろうとしていたカナック族の政治家達も(「国家は私達のニッケルを盗もうとしている」)、腐敗した政治家達を以前から糾弾し、群島に注ぎ込まれた金を一度も目にできない都会化したカナック族の青年達も怒らせたのだ。同時に、採掘主義の激化がもたらす荒廃(川の汚染・健康被害・地滑り)を増々目の当たりにするようになったカナック族の集団も怒り、フランス国家だけでなく、鉱山も駆逐した独立を提唱し始めた。
ここから、4月2日に上院で、5月15日に下院で行われた投票が、群島の植民地化をデジタル的に永続させる効果を持つニューカレドニアの選挙権(1998年以降凍結されていた)の凍結を解除するものであり、島の首都の事業と産業を組織的に破壊する反乱の火種となった理由が分かる。6月7日に公表されたルイ゠ル゠フラン高等弁務官(知事)の最新報告によると、570の事業が破壊され、直接的被害は15億ユーロ以上にのぼったという。
ニッケル産業の破壊
反乱開始以降、ニッケル鉱山・工場の情況について破壊されたのか(されていないのか)疑問に思うのは当然であろう。カナック族の反乱青年達による封鎖・略奪・放火が頻発する首都ヌメアは別として、例えば、人口の半数(主にカナック族)が暮らす周辺部はどのような情況なのだろうか。情報のフィルタリングが難しいと仮定しても、主に攻撃されたのはSLN(国家が保有)で、プロニー゠リソーシズ社の工場(体制支持者が保有)も攻撃されているようである。
東海岸のティオでは、海辺で鉱石運搬船を積み込むためのコンベヤベルトが損傷した。プラトーとカンプ゠デ゠サパンの鉱山も襲撃され、略奪と破壊が行われた。
同じく東海岸のクアウアでは、6月1日時点で、入江の荷積みドックに向かう長さ11キロメートルの「サーペンタイン(蛇紋石)」と呼ばれる鉱石コンベヤが10日間で12回の火災に見舞われた。
6月2日、西海岸の中央に位置するネプーイ村に鉱石運搬船が緊急到着し、19000トンのニッケルを積み込んですぐにヌメアに持ち帰った。3週間の在庫がなくなり、炉に「修復不可能な損傷」を受ける危険に晒されていたドニアンボのSLN工場に供給するためである。しかし、不幸なことに、真夜中に、コンベヤの一部が炎上し、約100メートルのコンベヤベルトに影響が及んだ。結局、積み荷の鉱石は1日遅れ(6月4日)で安全に到着した。ドニアンボ工場が操業するためにはこうした運搬船が3~4日に一度到着しなければならないと分かった。それ以来、SLNは2隻目の鉱石運搬船を派遣したが、今回は遥か北側(クマックのティエバギ鉱山方面)だった。カナック青年達がそれほど敵意を持っていないと期待してのことだった。
東海岸のウアイルー村では、ポロ鉱山にある「採掘・採石技術訓練センター」(CFTMC)が跡形もなくなった。「訓練用具・採鉱機械・訓練教室・運転シミュレーターが略奪され、破壊され、燃やされた。」ここでは、鉱業セクターで働きたいと思っていた若者を訓練していた。
ヌメアでは、5月9日午前4時頃、岸壁に配置された警備員が何者かに鎮圧された。その後、プロニー゠リソーシズ工場の従業員輸送専用フェリー「プロニー゠エクスプレス」の係留が切られ、フェリーは漂流してしまった。そして、5月23日、首都から車で1時間半ほど離れた島の南部にあるゴロで、プロニー゠リソーシズ工場が直接襲撃され、2台の車両が失われた。それ以来、民間警備グループ「エリス」の警備員35人が昼夜を問わず警備しているが、工業・鉱業複合体の再稼働には今も至っておらず、6月7日に外部の脅威に直面した際の警備強化を目的とした「特別介入計画」(PPI)が発動されたほどだった。この件について、この巨大産業は数日前に「現在の混乱により、私達は操業停止を余儀なくされています。ヤテ湖からの原水供給を中断しているだけでなく、6月4日以降、電力供給も行っていません」と述べながらも、破壊工作についてはあえて語ろうとしなかった・・・
反乱が死なないためには内部の矛盾を深め、克服しなければならないが、同時に、酸素も、大量の酸素も必要だ。それをできるだけ供給するのは、ここ、フランス植民地の大都会にいる全ての人次第である。フランスはカナック反乱者達を鎮圧している最中だが、彼等は未だに武器を(自分達の対抗手段も)放棄していない。連帯から、あるいは単に自国への憎しみから。