イラク゠クルディスタンへのトルコの軍事拡大
原文:https://freedomnews.org.uk/2024/09/04/turkeys-escalation-in-iraqi-kurdistan/
原文掲載日:2024年9月4日
トルコは最近イラク゠クルディスタンでの軍事駐留を飛躍的に増やしており、地域の安定に対する懸念を引き起こしている。往々にして民族グループにまとめられてしまう地域において、この危機は政治体制の重要性を示している。
直近の軍事配備は6月に始まり、クルド民族会議(KNK)は7月1日に報道声明を発表し、トルコの行動をイラク゠クルディスタンを占領しようとするものだと非難した。これは1991年以来続く越境攻撃の文脈で行われているが、2018年以降激化している。軍事行動監視グループ「コミュニティ゠ピースメーカー゠チームズ(CPT)」によれば、これはイラクとトルコ間に「緩衝地帯」とされるものを創り出すことを目的とした一連の作戦だという。
こうした作戦が民間人に与える影響として、この地域から大量の避難民が生まれ、より広範な紛争が生じるリスクをもたらしている。現在まで、トルコはイラク゠クルディスタン内に74の軍事基地を建設し、少なくとも170の村から数千人を立ち退かせ、さらに602の村が危機に瀕している。トルコは軍事基地や検問所の設置、入植地の暴力的根絶によってこの占領を長期戦へと導いてきたのだ。
外部の観測筋によれば、軍事活動の圧倒的存在を足掛かりに、トルコ軍はクルディスタン地域の長期的併合の先陣を切ろうとしているという。この併合は、PKKゲリラという「外的脅威」を無力化する目的の「緩衝地帯」として示されている。ただ、トルコ国防相によれば、「緩衝地帯」の規模はイラクとシリアの土地の30~40キロメートルまで及ぶという。その結果、クルド系住民の大規模な民族浄化を引き起こしかねない。
KNKは、7月1日の報道発表で国際コミュニティの支援を呼び掛けたが、何の反応もなかった。この発表によれば、「トルコはイラク゠クルディスタン領土の奥深くに戦車・兵士・検問所を展開し、明確にイラク゠クルディスタンを占領しようとしている。」これはこの地域の長期的紛争を激化させるだろう。CPTによれば、トルコは今年すでにこの地域で800回以上の攻撃を行っている。そして、PKKゲリラとの戦闘を口実に、その存在を拡大し続けている。これを最も顕著に示しているのが、トルコ軍の配備が最も増加したドホーク(イラク゠クルディスタンの)である。
KNKによれば、6月中旬に南部のクルディスタンに対する攻撃が急増した。空爆と地上攻撃と共に、これまで約1250人の兵士と300台の戦車が配備された。2020年以来、新たな攻撃の波が指数関数的に増加している。その結果、381回の砲撃が行われ、6万8千ドゥナム以上の農地と森林が焼失した。こうした攻撃で多数の民間人も死亡した。
イラク゠クルディスタンでは、保守的なクルディスタン民主党(KDP)のようなグループがトルコ軍と協力しているため、事態は複雑になっている。このために、イラクの様々なクルド人軍事勢力が分裂し、同時に、民族的方針に沿った統一戦線もない。KDPと北部及び東部シリア自治行政区(AANES、リバータリアン社会主義志向の幅広い連合体)は、あからさまではないものの頻繁に対立している。クルド人の統一という理念よりも、政治組織の形態の方が明らかに重要なのだ。
加えて、この紛争拡大も、トルコによる北部シリアへの侵攻全般も、国際的に全く注目されていないため、この民族浄化キャンペーンは弱まることなく継続できている。人権ウォッチなどの団体が、特に北部シリアにおけるトルコ政府の戦争犯罪を継続的に非難してきたが、何の効果もなかった。トルコはNATOの一員であるにもかかわらず、西側メディアは、この継続的侵略と民族浄化について完全に沈黙し、エルドアンをこの地域の重要な同盟国だと見なし続ける。隣国に対するトルコの軍事的アプローチは増え、トルコ国内の報道の自由はますます制限されているにもかかわらず。