見出し画像

「現代経済学の直観的方法」

「現代経済学の直観的方法」長沼伸一郎著・講談社

著者は「物理数学の直観的方法」の著書で評判を取った物理学世界の住人。本書は理系から見た現代経済学入門である。物理学的思考だが、図表が多用され、読みやすくなっている。

資本主義の本質を一種、自転車操業的に走り続ける宿命を持つとみなす。そして定常経済の存在を否定する。資本主義の基本構造を鉄道網=銀行と徴兵制=労働者・消費者にみなし、近代軍事戦と規定する。

「貿易はなぜ拡大するのか?」貿易のメカニズムと歴史では、イスラム商業市場貿易からオランダによるバルト海穀物仲介貿易、大英国植民地貿易、そして最強の米国IT経済国家の成立への歴史的過程を述べる。グローバル経済とIT化は、従来の南北問題の対象国である途上国を細分化し、貧困を先進国へ向けて逆流をもたらすと言う。

興味深かったのは仮想通貨とブロックチェーンの章。ビットコインを「金本位制」に類似させ、ブロックチェーンを中小型機タイプと超大型機タイプに分けて説明する。理科系独特の直観的考え方、解説で理解しやすい。暗号資産と言わずあえて仮想通貨と言う意味も理解できる。更に仮想通貨の将来性、限界も解説する。

最終章「資本主義の将来はどこに向かうのか?」は序論の繰り返しがかなりある。資本主義の将来は「縮退」としての宿命がある。その解決策は物理学のブラックホールのような「コラプター化」の解決と同様であると言う。解かったような解からないような抽象論に終わった点には多少不満が残る。

400ページ以上とかなり厚く、内容も多い本だか、案外さらと読める。小難しい経済学入門書よりずっと読みやすいと思う。

いいなと思ったら応援しよう!