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「退職代行業者が今すぐ伝えたい!Z世代が辞めたい会社」退職代行モームリ著
「退職代行業者が今すぐ伝えたい!Z世代が辞めたい会社」退職代行モームリ著・リビックブック㈱2024年8月発行
著者は「退職代行モームリ」で、退職代行業は2022年6月設立。親会社は人材コンサルを業とする㈱アルバトロス、代表者は谷本慎二氏。当社は1.5万件余りの退職代行に関与したという。
退職代行サービスという業務が流行っている。退職を代行する商売。本来、退職という自分ですることを第三者が代行するサービスである。
表題Z世代とは、1996年~2006年に生まれた世代、現在18歳から28歳の世代をいう。この世代は、個性、多様性を重視し、ネット時代に育ち、即時性を優先する。同時に自己実現と強い承認欲求を持ち、安定志向で、チャレンジを避ける傾向がある。基本的な考え方は現実主義で、パフォーマンスを重視する世代である。
退職代行モームリの2024年4月1か月間の取り扱い件数は1,397人、5月は1,780人。うち新卒は15%、男性40%、女性60%、業種はサービス業、医療関連、営業関係が多い。退職理由は①就業内容、社風が事前説明会と違っている、②パワハラ、いじめの人間関係、③教育制度、仕事を丁寧に教えてもらえない、が上位を占める。
2019年統計によると、就職後3年以内離職率は、大卒33%、短大卒43%、高卒40%。退職理由は、①職場になじめない。②家庭環境の変化。③労働条件、職場環境の変化が上位を占める。
現代若者の大きな特徴は出世を望まない。安定志向、チャレンジが苦手、レベルの高い職場での自己の成長より、失敗しない無理のない職場で働きたいと思っている。
年長者は我慢強さがないと若者を批判する。しかし視点を変えれば、終身雇用崩壊の現在、見切りが早いとも言える。それに対処できる企業の姿勢、対策が必要だろう。
若者を長期間雇用する方法は、①ウソをつかない。入社前説明会で現実の会社事情を説明する。②時代の変化を受け入れる。「上司の背中を見て、仕事を覚えろ!」の昭和的教育は通用しない。③法令を守る。労基法は最低限守るべき法令である。この三つは最低限必要だろう。
退職代行業者を利用される会社は、従業員の真実の退職理由を把握できない。社員から直接退職申出があっても、そこでは本当の退職理由を言わないが普通。常日頃、社員の不満を聞く上司であること、いつでも相談しやすい職場風土を作ることが第一歩である。
人口減少、人手不足の日本、特に中小企業経営者に読んでもらいたい本である。大手企業も単に若者批判するだけでなく、現代の若者の特質を把握することが必要である。それなくば、企業成長も業容拡大も不可能だろう。