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「なるほどそうだったのか!ハマスとガザ戦争」高橋和夫著

「なるほどそうだったのか!ハマスとガザ戦争」高橋和夫著・幻冬舎2024年4月発行

著者は1951年生まれ、放送大学名誉教授。専門は中東研究。

2023年10月から始まったイスラエルのガザ攻撃はもう1年になる。死亡者は4万人を超え、半数以上が子供と女性である。ハマスはパレスチナ抵抗組織であるが、ハマスを壊滅させてもハマスはイデオロギーであり、次のハマスが生まれるだけである。

本書はイスラエル・パレスチナ問題の本質を探り、現在のガザの惨状を明らかにする。問題の本質は宗教、民族の問題でなく、シオニズムに基づく政治問題である。

アラブ諸国は多くが君主国、独裁国である。彼らの国家利害と市民統治支配のためイスラエルの諜報、軍事技術を求める。同時にアメリカの経済支援を求める。結果、アラブ、イスラムの民族的結合は薄れていく。

ハマス、ヒズボラ、イエメンフーシ派は非国家組織。イスラエルは人口1,000万人の国家組織。軍事力は戦闘機458機(世界第5位)戦車は6,075両(世界第4位)を保有、軍事予算は世界17位の軍事国家である。

ガザ地区は東京23区の6割の広さに200万人以上が居住する密集地帯。ハマスは2006年パレスチナ議会選挙で勝利し、政権握るも、イスラエル、米国の妨害工作でガザ地区に押し込められる。

その後、ガザ地区は2007年からイスラエルによって完全封鎖され「天井なき監獄」と呼ばれる状態が27年も続き、産業、市民生活も破壊されてきた。今回、イスラエル攻撃で生活インフラ、建物も破壊され、地区全体が飢餓状態にある。まさにジェノサイドである。

イスラエルはイランと戦争を開始し、米国を戦争に巻き込もうとする。ネタニヤフ首相は戦争状態にある限り、現在の地位が保持できるからだ。イラン、米国とも戦争は回避したいが、レバノン侵攻でネタニヤフを止められない。ネタニヤフは戦争拡大で米国大統領選でトランプを有利にする目的がある。

米国の政治状況、イスラエル政治主導権争いの中で、多くの市民の命が失われる。国連の監視機能も無力化し、歪められた民主主義の限界が明らかになってきた。日本政治の「裏金問題」も先送りして、辻褄合わせの選挙で全て水に流そうとする。

柳田国男は「考えない文化・日本人とはなにか」で、日本の民主主義は実質「寡頭政治」と断言する。その原因は国民の智慧の欠乏、思考力の不足にある。つまり考えることなく、過剰に同調する心理に傾斜しがちな民族特性を批判する。

柳田国男が1962年死去して60年以上経過も、日本の民主主義、世界の民主主義ともに進歩、発展はなく、戦争が繰り返される。AIが進歩しても人間の進歩は追い付かない。「人間とは何か」をもう一度考え直さざる得ない。


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