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「仕立屋銀次」本田一郎著

「仕立屋銀次」本田一郎著・中公文庫1994年3月発行

本書は明治20年代から、銀次が逮捕された明治40年代まで日本スリ史の全盛期と言われた時代の東京のスリ事情を詳細に記載している。

著者本田氏の経歴詳細はよくわからない。しかし出所後に銀次自身から直接面談し、聴取した話が元になっている。

仕立屋銀次は全盛時代、500人の子分がおり、全国のスリ仲間も彼には頭が上がらなかった。その銀次も明治42年と大正6年の2回牢獄に繋がれ、10年余りで出所した。当時64歳の高齢だった。

本書は昭和3年11月秋季特別号サンデー毎日から「探偵実話・仕立屋銀次懺悔録」として連載された記事の文庫本である。「人、必ずしも、その性、悪ならず」の気持ちで記された。

最近は、オレオレ詐欺、凶器と暴力による強盗など、年寄弱者を被害者にしたり、素人的な凶暴事件が続発する。スリも犯罪に違いない。しかし懐かしい日本文化的な匂いがする。古き良き時代のスリ物語として読む価値ある本である。


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