「ヨルダン難民救援への旅」小山内美江子著
「ヨルダン難民救援への旅」小山内美江子著・岩波ジュニア新書1991年6月発行
著者は1930年生まれ、シナリオ作家。「3年B組金八先生」「翔ぶが如く」が代表作。長男は俳優の利重剛、94歳。先日死去された。
本書は、1990年11月末から12月初めまで1週間、ヨルダン難民キャンプのボランティア支援活動の報告書。当時、イラク・フセインがクウエート侵攻し、米国との湾岸戦争開始直前の混乱期である。
テレビ脚本家・当時60歳のおばさん、もう一人のおばさん仲間と息子とその友達ら7名が個人としてヨルダンに向かい、難民を支援する。ドタバタの素人経験が難民との人間的交流とともに描かれている。
戦前生まれのおばさんが平和への願望、戦争が招く市民の悲惨さを訴える。ヨルダンは石油資源もなく、決して裕福ではないが、「中東のホスピタル」として近隣パレスチナ、イラクの難民の受入れ拠点であった。
当時日本の海部内閣は米国より単なる金銭支援から自衛隊による軍事支援を求められ、イラク自衛隊派遣が課題となっていた。憲法9条を盾の拒否も後退し、自衛隊海外派遣が進んでいった。
世界の火薬庫、中東がパレスチナガザ侵攻、イランのイスラエル攻撃で緊迫化している。日本の外交立ち位置は当時から大きく変化した。
現在、対米従属、欧米寄りの外交姿勢が明確化されている。今こそ戦争放棄日本の独自性を有する外交力が問われている。当時からの日本国民の戦争への視点がどのように変質したか?を振り返るにも良い本である。