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「島はどうしてできるのか・火山噴火と島の誕生から消滅まで」前野深著

「島はどうしてできるのか・火山噴火と島の誕生から消滅まで」前野深著・講談社ブルーバックス新書2024年7月発行

著者は1978年生まれ、東大地震研究所准教授。専門は火山学。西之島で上陸調査を実施。

本書は海域火山で何が起きているのか、火山島はどのようにできるのかを探る。前半第1章から第9章までは国内外の火山を挙げ、火山噴火による島の誕生、成長のプロセスを見る。後半第10章から第14章で噴火活動による災害、人間社会の関係を見る。

火山は温泉など私たちに多くの娯楽、楽しみを与えてくれる。しかし江戸時代の浅間山噴火では村が全滅した。九州雲仙眉山崩壊による津波発生では1万5千人の死者が出た。「島原大変、肥後迷惑」と言われた。直近では御嶽山の登山客で多くの死者が出た。

本書は西之島噴火調査で島の誕生プロセスを明らかにした。日本の活火山の2割が伊豆諸島、小笠原諸島、さらにサイパンのマリアナ諸島に続く海域火山、薩摩硫黄島の海底カルデラの海底活火山の噴火である。

海域火山は数千年、数万年の時間を経て、島が誕生し、その後海流にさらされ、更に山体崩壊によって島が消滅して一生を終える。

1741年徳川吉宗の時代、松前半島沖の日本最大の無人島・渡島大島の噴火、山体崩壊で江刺、弘前へ10メートル以上の大津波が発生した。ギリシャのエーゲ海の島・活火山サントリーニ巨大噴火では紀元前1610年頃に繫栄したミノア文明が消滅した。

2022年フンガ・トンガでフンガ・ハアパイ火山の大規模噴火による海底噴火が発生した。噴火灰は成層圏近くまで届き、航空機の飛行が困難になった。今後は地球環境を破壊する規模での海底噴火が発生する。

富士山噴火など陸上火山の噴火より海底火山、海域火山の噴火による災害の方が津波など地球的規模で大きな影響を与える。日本周辺で地震活動期に突入しており、火山への関心は今まで以上に高まるだろう。


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