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「強い通貨、弱い通貨」宮崎成人著

「強い通貨、弱い通貨」宮崎成人著・ハヤカワ新書2024年8月発行
著者は1962年生まれ、財務省入省、国際機構課長、副財務官歴任、現在東大客員教授。

題名は「強い通貨、弱い通貨」だが、内容は基軸通貨ドルの歴史から1971年ニクソンショック、ブレトン・ウッズ体制崩壊後のドル覇権が生き延びた理由、ユーロの限界、国際通貨・円の夢も崩壊、人民元とドルの将来を展望する。

第一次・二次世界大戦の結果、国際通貨英ポンドは金本位制を維持できず、基軸通貨の地位から陥落。戦後、ケインズ案と米国案の対立の末、戦争被害の少ない米国の経済的優位から金・ドル本位制の固定相場のブレトン・ウッズ体制が成立した。

ブレトン・ウッズ体制も「国際金融のトリレンマ」により、1971年、金交換停止、変動相場制へ移行により崩壊する。しかしその後、基軸通貨ドルは危機を乗り越え、対抗できる通貨もなく、不完全ながら慣性的に基軸通貨の地位を維持してきた。

基軸通貨ドルは誰に殺されるのか?これが本書のテーマ。ドルを殺すのは、米国自身。これが結論である。国内の二極対立、政治的不安、国際社会のブロック化、米中対立の激化への米国の対応次第によって、基軸通貨ドルは崩壊する。

ドル崩壊後の基軸通貨となるべき通貨はなく、世界が多様化、多元化するように、基軸通貨が存在しない世界になる。混乱と不透明な世界である。日本も米国追従戦略だけで生き残れる時代は過ぎた。

通貨はその国の経済のファンダメンタルズを示す。その意味では日本経済の将来は厳しい。過去の栄光に頼る自律性なき姿勢では生き残れない。変革が待ったなしの時期が来てることを知るべき。総選挙の結果はその意味でも良い機会かもしれない。


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