【2024版】勤め先選びで爆損するなかれ(「小売」編)
こんにちは、日本爆損防止委員会です。
当会は、ここ数年でにわかに盛り上がりを見せる株・暗号資産・FX等の金融取引により、取り返しのつかない爆損をしてしまう人を無くすことを目的とし、発信活動をしています。
2024年第4発目の本稿も金融取引関係ないのですが、投資や投機をしていなくてもあらゆる人が関係のある話、会社選びの話をさせていただきます。
前回は、上場企業の中で最多数派である「情報通信・サービスその他」セクターの企業の決算情報を分析し、働きたい会社を探しました。
今回注目するのは「小売」セクターです。衣料品、スーパー、薬局などが思いつきやすいと思いますが、今やどの小売チェーンもオンライン進出しているように、ITエンジニアの活躍の場も多くある業界です。ユニクロで有名なファストリ (9983)、衣料品オンライン販売のZOZO (3092) もこの業界に分類されます。
個人的にですが、企業分析をする場合、以下の理由で小売は多分一番面白いセクターです。
身近である(店舗に行ったことがある or サービスを使ったことがある)
業界的にスケールメリットが大きく、株価が上がりやすい
有名な例だと100円ショップのセリア (2782)ですね。かつてのテンバガー(株価が10倍になった銘柄のこと)ですが、最初は中部地方のローカルチェーンでした。地方で評判になり、都内に進出できれば、基本的には店舗を出せば出すだけ売上が増えていきます。スケールするビジネスなんですね。
一方で、真似されやすく競争が激しい業界でもあるので、もし小売業界に就職する場合は会社選びが非常に重要になります。今回も企業の決算情報を定量的に分析することで、フィーリングだけに頼らずに、爆損しなそうな会社を見つけていきましょう。
株価・決算データの定量分析
これから示すグラフは、出典があるものを除き全て筆者が独自に作成したものです。
勢いのある産業か?
まず、「小売」のセクターは勢いのある成長産業なのでしょうか?会社選び以前に、衰退産業に入ってしまったらその時点で築けるキャリアや金融資産はたかが知れてしまいます。
去年(2023年)の小売セクターETFのリターン(騰落率)と、市場平均としてTOPIXのリターンを比較してみましょう。
以下plotしているのは累積リターンで、青がTOPIX、緑がセクターETF、赤がその差(Spread)です。
TOPIXにセクターETFが負けていますね!去年だけのデータではありますが、市場平均に負けているわけですから、少なくとも勢いのある産業ではないかもしれません。
「情報通信・サービスその他」と同様の傾向ではありますが、やはり勝ち組、負け組の企業があるのでしょうか。個別のデータを見ていきましょう。
売上・利益は出せているのか?
日本の株式市場には、ざっくり企業規模別に「プライム」「スタンダード」「グロース」に分けられます。
「小売」セクターの決算データ(2023年当期純利益)を集計したところ、黒字率は以下のように
プライム > スタンダード > グロース
と企業規模順に収まりました。プライムは90%を超える企業が黒字なのに対し、スタンダードやグロースはやや厳しいですね。競争が激しいので勝ち組と負け組がはっきりわかれていそうです。
企業比較のため二次元空間にマッピングしましょう。当期純利益 (Profit)を横軸、売上高 (NetSales)を縦軸に、データを取得できた「小売」339社をマッピングしてみます。縦軸はlog scaleにしています。
赤がプライム、青がスタンダード、緑がグロースです。
売上も利益も、比較的綺麗にプライム > スタンダード > グロースになっていますね。ただし、大事なのは横軸の当期純利益ですね。売上から諸経費を引いたものですが、この利益を積み上げられる会社が成長している会社です。
利益が3,000億円近いぶっちぎりの会社(F社)が右上にありますね。
貴方は自分が勤める会社がこの図のどこにいてほしいですか?
そういった視点で会社選びをするのも、フィーリングだけにならずいいかなと思います。
稼ぐ力は?財務の健全性は?
生の売上と利益を見るのもいいですが、企業の稼ぐ力をより標準化された形で定量化するために、ROA (Return on Assets: 総資産利益率) を見てみましょう。
ROAは以下のように、資産に対する当期純利益の%として計算されます。資産をどれだけ有効に活用して、利益を作っているか、すなわち企業の稼ぐ力を標準化した形で定量している指標です。
我々の給料は企業の稼ぎから来ているわけですから、企業の稼ぐ力は高い方がいいですよね。
また、企業の財務健全性を図る指標として、自己資本比率を見てみましょう。自己資本比率は、負債含む全体資産のうち、純資産が占める割合です。
自己資本比率が高いということは、金融機関等に返さなければお金の割合が少なく、財務が健全であると言えます。50%を目安にしている方も多いでしょう。
以下は、横軸にROA、縦軸に自己資本比率をとって「小売」の企業をマッピングしたものです。
ROAは5%を超えると優良と言われますが、グロース(緑)企業でもROAも自己資本比率も高い企業が数社ありますね!こういった企業はどういうビジネスモデルでプライム企業と戦っているのか(あるいはプライムと戦う必要のないオアシスを見つけているのか)、気になりますね。
ROAがマイナスで自己資本比率の小さい会社も多くみられます。入社しようとしている会社がそういう場合、本当にその会社でいいのか一考の余地があります。
本業で儲けられているか?
稼ぐ力をROAで定量していましたが、例えばIT企業が不動産を持っていて、そこからの賃料でIT以上の利益を上げているかもしれません。もしかしたら本業自体は赤字だけれども、金融取引等の黒字で補っているのかも知れません。それはそれで会社経営としてはいいのかもしれませんが、成長する会社というのはやはり本業が伸びていないといけません。
本業で稼ぐ力を定量するため、営業利益率を見てみましょう。売上高から、売上原価と販売費及び一般管理費を引いたものの割合です。
ROAを横軸、営業利益率を縦軸にとった図を見てみましょう。基本的には正の相関が見て取れます。
少数ですが、ROAがマイナスなのに営業利益率がプラス(図左上)だったり、ROAがプラスなのに営業利益がマイナス(図右下)の会社もありますね。
図右上にポツンと、稼ぎすぎている会社がありますね…。衣料品オンライン販売のZ社です。圧倒的です。サービスを使われている方も多いかもしれませんね。
決算から見る働きたい企業ランキングTOP100
以下の5つのポイントの合計でランキングを作りました。
「売上成長率」:過去5年で何回増収があったか (0 ~ 5回)
「利益成長率」:過去5年で何回増益があったか (0 ~ 5回)
「稼ぐ力」:直近ROA (6分位: 0 ~ 5)
「本業で稼ぐ力」:直近営業利益率 (6分位: 0 ~ 5)
「財務健全性」:直近自己資本比率 (6分位: 0 ~ 5)
どの指標も高ければ良いです。
投資判断をしたいわけではないので、PBRなどの割安指標や、配当利回り、配当性向といった指標は考慮に入れてません。あくまで、こういう会社で働いたらキャリアも金融資産も爆益が期待できるであろう会社を選ぶことが目的です。もちろん「小売」セクターに属する企業限定です。
以下の会社実名が含まれるコンテンツは有料ですが、株式投資のためのデータを出しているWebサイトは多数ありますので、そういったところを見てご自身で集計されても同じような結果は得られるかと思います。
本稿としては、求職者の貴方に上場企業は企業の通信簿ともいえる決算データを公開しているのだから、その定量的なデータを見て会社選びの参考にしようというメッセージが伝われば嬉しいです。
それでは無料パートはここまでです、会社ランキングと投げ銭勢以外の方は、次回の記事でまたお会いしましょう。
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