キャントシングマイドリームズ
プロローグ
物語の主人公になりたい。
そう思ったぼくがノートにオリジナルの小説を書き始めたのは小学校五年生の国語の時間からだ。
小説の書き方、としてオリジナルの小説を作る課題。
原稿用紙に書きなぐり、きれいに半分に折れなくて、製本うまくできなかったのを覚えているが、あの本の中にはまぎれもなく当時のぼくが思い描くことのできる最強にかっこいいぼくがいた思い出があると確信している。
物語の中の自分はいわば夢の中と一緒だ。
なんでもしたいことが出来る。
あるときはとてつもなく大きな反社会勢力のような人とも戦えたし、なんなら教師にだって反抗した。
親にもモノを言えたし、ときには世界の救世主にだってなった。
友達を見送るために授業を抜け出して走って空港まで行ったりもした。
まるで「ノッティングヒルの恋人」のように最後の最後に盛りだくさんで大団円な終わり方が好きだった。
ぼくはこの物語を上に満天の星空が見える広い湖畔のほとりで書いている。
目の前には仲良くなったリスのリュカがいる。
リュカはクルミを両手に持ちながらぼくをじっと見つめてくるときがある。そのときのぼくは、どうしようもなくリュカにこれまで経験した話をゆっくりと聞かせるのだ。
リュカでもわかるように丁寧に丁寧に……。
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