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ホラープロデューサーがこれから見据える「生」と「死」のコンテンツづくりとは

クリエイティブカンパニーであるBAKERUには、「クリエイター合衆国」を目指すべく様々な分野のプロフェッショナルが所属しています。

今回はそんなクリエイターの中から、ホラープロデューサーの夜住アンナさんにお話を伺いました。

2018年ごろの夜住

直談判で飛び込んだホラー業界

-これまでの経歴を教えてください

私自身は「生まれつき」とほぼ同義なくらい幼い頃から怖い本や写真集、戦争の漫画、理科室の人体模型など、死を連想させるようなモノや事象に対しての興味を強く持っていました。そのため日常的にそうした情報に触れていたのですが、あくまで「ホラー」を趣味で楽しんでいた程度だった記憶です。

仕事として「ホラー」や「死」にまつわることを意識し始めたのは学生時代にホラーイベントを運営する会社を見つけた頃でした。はじめこそ就職できるとは思っていなくて、趣味の領域の業界として認識していたくらいです。あくまでホラー業界にはお客さんとして関わる程度でした。それが変化したのは地元で企画されていたお化け屋敷の運営スタッフとして数件関わるようになってからです。ホラーの空間で生きていけることが幸せすぎて、せっかくならこの世界で働いてみたいと思うようになりました。あとは学生時代にアルバイトでお客さんを楽しませるエンターテインメントや体験づくりなどをしていた影響も大きかったです。結果的には社長に直談判でホラーのイベント会社に飛び込みました。上京したのはこのタイミングでした。

ちなみに、「ホラー」といえば“怖がらせる、怖いものをつくる”といった印象を受けることが多いのではないでしょうか。もちろんそうしたニーズもありますが、実際にコンテンツをつくっている立場からすると、「ホラー」はただテーマとして利用しているだけなんです。根本的にはお客様を幸せにするため、お客さんに楽しんでもらうためで、そのために「ホラー」を軸にしているといったイメージです。他の企業と変わらず、誰かの幸せのためにエンターテイメントを届けています。

ホラーへの捉え方が変わった若手時代

 -そこからどうしてBAKERUへジョインしたのでしょうか?

純粋に、自分でホラーに関するイベントや企画を形にしてみたいと思ったのがきっかけです。当時からBAKERU(当時はasobiba社、現在は東京ピストルと合体しBAKERUに)はサバイバルゲームフィールド「ASOBIBA」を運営していたほか、店舗や土地などの場所を使った体験作りを実施していたので、そこでなにかできないかと飛び込みました。実際社内はベンチャー感が強く、やりたいことは任せてくれる雰囲気で早速イベントを仕込めることになりました。

ちなみに第一弾は「ASOBIBA」のサバゲーフィールドを使ったホラーイベントでした。ガスマスクをつけた殺人鬼に襲われるシチュエーションで逃げ切るミッション系のゲームで、参加者は200人程度だったと思います。初めて1から見様見真似で企画したイベントにはお客さんからの反響もあり、喜んでもらえたのは嬉しかったです。

翌年には同じホラーでも、「綺麗」、「美しい」といったテーマの企画をつくるようになりました。これは業界で働く人男性比率が高かった影響も大きいです。女性の業界仲間が増えたり様々な経験をしたりする中で、自分がつくりたいものやホラーへの捉え方が整理されて確立されていきました。このあたりから自身を「ホラープロデューサー」と名乗り活動するようになりました。

物語やストーリの体験を提供する新しい挑戦

-コンテンツづくりで何を大事にしていますか?

届けたい人たちのことを思って企画やイベントをつくるように心がけています。あくまで自分がやりたいことを実現するのではなくて、お客さんありきで考えるように、ですかね。その分いつも葛藤していますし、失敗することもあるのですが。

というのも、イベントなどの体験エンターテイメントは、お客さんがいないと完成しないんです。例えば私が実現したいのは、映画のように芸術性の高い作品としての素晴らしさを担保するより、物語やストーリを体験してもらうエンターテイメントを届けたいといったイメージです。参加すればどう楽しんでもらえるかまで設計する必要があるのが私の仕事ですし、ここが一番こだわっているポイントでもあります。ホラーだとどうしてもいかに怖い声をつくるかとか、どこで驚かせるか、といったある種「正解」があるのですが、そんな業界に新しい体験を生み出すチャレンジをしたいんです。

これはホラーにまつわる色んなイベントや企画をつくっていきながら生まれた感覚です。過去につくってきたものからもっとこうすればよかったと思うことも、言われて気づく反省点もあって、それらをよりよくしていくにはどうすればいいかと考え続けたことがいまの原点にもなっているんだと思います。

目指すは「ホラーで人を幸せにする」こと

-これから挑戦したいことはありますか?

私自身は昔から「ホラーで人を幸せにしたい」と言い続けてきました。というのも、私は「死について考えることは“生”を実感すること、“生”を考えること」だと考えていて、実はホラーはライフスタイルに非常に近いテーマではないかと捉えているんです。そこで今後は、ホラーにまつわる仕事やプロジェクトをエンターテイメントの領域に限らず生み出したり関わったりしたいと考えています。生きてる人に対して長く使えることもエンターテイメント以外の体験も考えてみたいといった感覚です。

あくまで私が幼少期から興味が強かったのは「死」や「生」で、それらがエンターテイメントの領域では「ホラー」というジャンルとして認識されているのではといった仮設に近いのかもしれません。私自身はホラーも好きですし、すでに十分エンターテイメントとして成立していると思うんです。ただ、その経験を通して感じた学術的な死や芸術的な死など、より生を意識するホラーの体験づくりができたら嬉しいです。

あとそれ以外でいえば、女性向けのホラー体験もつくりたいと考えています。もちろん男性に参加してほしくないといった意味ではありません。私自身が女性で、これまでのイベントや作品で女性からの共感を得る機会が多かったので、得意な分野で得意なことを形にすることが誰かの幸せや喜びに繋がるなら嬉しいなと思っています。これからも色んな活動に力を入れていけるように頑張ります。

夜住アンナプロフィール

体験エンターテイメント業界でお化け屋敷・ホラーイベントに携わり、
お化け屋敷の枠を飛び越えた独自の感性で“美しく怖いホラー”の世界を創り出す、唯一無二のアーティスト兼イベントクリエイター。

その他体験型イベント、イマーシブ、オンライン体験コンテンツの企画プロデュースを通じ、ストーリー性のあるエンターテイメントを提供している。

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