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洗えない帽子

10年ほど前に、雑貨屋でアウトドアテイストなワークキャップに一目惚れして衝動買いをした。

ひさしに芯が入っていないのでクルクル丸めてポケットに突っ込めるのも、大変使い勝手がよかった。

そして汗や汚れを落とそうと手洗いをして、日陰で干そうとしたところで洗濯表示が目に入った。

『洗濯禁止』の表示だ。

俺は、“洗えない帽子”が嫌いだ。

特別、潔癖症でもなんでもないのだが。
そもそも帽子に限らず、洗えない“表示”がそもそも嫌いだ。

俺調べではあるが、

  • フォルムが崩れる

  • 水で縮んで小さくなってしまう

  • 破損や色移り

  • 金属部分が錆びる

  • 中の詰め物が偏ったりする

といった理由で『洗濯禁止』となっている製品が存在するらしい。
しかも、この帽子は『ドライクリーニング』も受け付けない表示になっていた。

なんだよ、洗濯禁止って。

人間が身に着けるものなのに。

汚れてしまったら捨てろってか。

少し悪態をつきながらも、型崩れしない様に新聞紙を詰めたが、乾いた後に被ると非常にキツくなっていた。

どうやら縮む素材だったようだ。

非常に悔しくなった俺は、納得がいかないまま被れない帽子をゴミ箱にスローインした。



それからというもの、服や帽子を買う時には洗濯表示を見るのが癖になっている。
最近は『洗濯禁止』の表示も見なくなったが、バッグやぬいぐるみには相変わらずある。

やっぱりおかしいよ、洗濯が出来ないって。

人間が作ったのに。

人間が扱うのに。

汗水垂らして稼いで、ようやく買ったモノが『洗濯禁止』だったら救いようがないじゃねーか。

最近流行りのSDGsとかにも悪いだろうに。

何故に『哀しみ』を作り出すのだ。

こんなアパレル産業こそ、“洗濯”が必要じゃないのかね。

そう思いながら酒を飲もうとして、盛大に部屋着代わりのジャージに酒をこぼした。

あーあ、洗濯しなきゃ。

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