花巴の美吉野酒造社長さんの言うことには
実は私、そこそこ日本酒にどっぷりなのである。私の酒の師匠と仲間たちが、関西遠征に来まして、合流してある程度土地勘あるため、アテンドしておりました。
今回いくつか回った中で、花巴の銘柄でお馴染み、奈良の吉野にある美吉野酒造さんにお邪魔してきた。そのメモを残したいので書く。
最近は、地ビールブームが数年前にあったりして、日本でのビールの固定概念が少し崩れたかなというとこだけど、やっぱピルスナーがビールの大衆イメージ。同じような感じで、日本酒て銘柄沢山あるのに、目指される良い味ってほぼ同じ感じがする。
私個人は、師匠や仲間たちのお陰で、日本酒が懐深く様々な食べ物と合わせることができる幅広味を持ってることを知ってるし、その時々に合わせて銘柄を選べることを知ってるけど。
そこで、今回の美吉野酒造さんで橋本社長さんに聞いた話がグッときたので残しとく。
昔から吉野は農業をする土地が限られるため、林業が主な産業だった。お酒造りは奉納用として少量だけだったと。
誇れるものは吉野杉と雨量だそうで、酒樽用の木材を作ってた。
なんやかんやあって、この地で一般消費用の酒造りを始められたのが明治45年頃だそう。
社長さん曰く、
・吉野でお米は貴重品で無駄にはできない
・湿度の高い環境だから、きちんと発酵させることが保存として自然な方法
・水はいくらでもある
・蔵付き酵母が丈夫
・協会酵母などを使うと、単一酵母だけを生き残るようにしないと失敗になる
・花巴らしさが出れば、酒の個性は年ごとに違って当たり前で、厳密に味は狙ってない
印象的だったのは、農家さんにはお米作りをお願いしているが、農地が狭いためお米作りは効率が悪いらしく、生計を立てられるように、他の収入とお米の収入のバランスをきちんと取ってもらえるよう無理強いは出来ないと。
なので、あまりお米を磨きまくるのももったいないと。選定外となるお米で甘酒をたくさん作ってるのも試飲させていただき、旨さに絶句、購入してきました。
また、樽も吉野杉の知名度への貢献のためにも、吉野の杉樽を使ってると。
吉野杉は需要の激減によって産業として衰退してしまっているらしい。手入れをしている杉と檜の里山が、荒れた山になるのは悲しいが現実は厳しいですね。
そんな、地域の共同体として持ちつ持たれつという考え方もあってか、酒の仕上がりにも、市場に求められる味を作るのではなく、吉野で作るとこういう酒になるという考え方だそう。
農家がお米を作ってくれて、その出来を見極めて酒造が酒を作る。その後は、酒販店さんがお酒の良さを伝えて、飲食店、飲み手がお酒に合う飲み方で飲むと。自分にできることには限界があるから、他の役割の方を信頼して任せているそうです。
これほど地酒という言葉がマッチしている考え方はないと思いました。お米が取れないというのは酒造りの地域としては珍しい特徴だが、美味しいという価値観を押し付けないのが、物凄く印象的でした。
モデルケース、ロールモデルを追う生き方が正道な日本は価値観の均質化がエグいと常々思うけど、それは大手が強くなるだけで、面白くないです。
デザインの世界でウィリアムモリスのアーツアンドクラフツ運動から始まる大量生産による均質化へのアンチ運動と類似を感じました。
楽しいや美味しい、かっこいい、かわいいなど、状況で変わるものに対して、皆異口同音にGOODという世の中が変わっていくと良いですね(BUMP OF CHICKENのレムを思い出した)。
最後に、奈良では柿の葉寿司が有名だが、花巴の酸味は柿の葉寿司と相性が良い。帰りにお土産で電車の中で柿の葉寿司と定番酒を頂いたが、最高に美味しかったです。
こういう、地元に根付き、外でも面白さを受け入れられるお酒が増えると面白いなと思った訪問でした。
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