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ss●アネモネが舞った時:前編

 クトゥルフ神話TRPGシナリオ 「蹂躙するは我が手にて」を題材とした二次創作ssです、御注意。 (https://booth.pm/ja/items/2075651) 「花に乞い願う」アンサーSS 「アネモネが舞った時」前編  セツナ視点、問題があれば修正/削除を行います。  ●  ●  ●  今日は、隣国である【淳天】から使者が来る。  その使者の中には、皇族とやらも居るらしい。  国民は、王族や皇族の言うことを聞かなければならない。それは、王族や皇族が頑張っ

    • ss●名無しの紀行_01

       終末紀行TRPG:ランダムプレイを題材とした二次創作ssです (https://booth.pm/ja/items/3685171)  ぷしゅ、と音を立てて、曲線的な棺のような容れ物が冷気が吐き出す。  ガラス製の蓋がのろのろと持ち上がる。  一匹の犬型ロボットが、その光景を眺めていた。 「…」  その棺は、冷凍睡眠装置と呼ばれる機械である。  硬めのクッションの中、ひとりの人間が沈み込んでいる。頬はふっくらとしていたが、生気が感じられず、人形のようだった。  やがて

      • ss●名無しの紀行_00

         終末紀行TRPG:ランダムプレイを題材とした二次創作ssです (https://booth.pm/ja/items/3685171) 【概容】  …  人間、我々と同じ人間である。  荒廃した世界を旅する存在。  この世界における、最後の人間かもしれない。病気や怪我で健康を崩せば死んでしまう、そんなところも我々と変わらない。  そして、ロボット。  我々より後の時代に作られた高度の知性を有する存在。  金属などで構成された肉体、人間に非常に近いメンタリティを有する。電

        • ss●太陽と月_09

           クトゥルフ神話TRPGシナリオ 「蹂躙するは我が手にて」を題材とした二次創作ssです、御注意。 (https://booth.pm/ja/items/2075651)  ●  ●  ●  エーリスは誰にも咎められないはずだった。  しかし彼は、淳天から帰国後、一年も経たないうちに命を落とした。  一瞬の出来事だった。  帝王家の人間の差し金があることは、明らかだった。  謀反の首謀者として捕えられたのは、金髪碧眼の軍人だった。  彼は視力が弱く、空軍と海軍には入

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        ss●アネモネが舞った時:前編

          ss●太陽と月_08

           クトゥルフ神話TRPGシナリオ 「蹂躙するは我が手にて」を題材とした二次創作ssです、御注意。 (https://booth.pm/ja/items/2075651)  ●  ●  ●  セツナが片腕を失くして目の前に現れた時、エーリスは苦しそうな顔をした。自分が守ってきた筈のオアシスに、初めて石を投げ込んだのが自分自身だったので、そういうエーリスを目の当たりにして、セツナ自身も沈痛な想いがした。  石は不躾に波紋を広げていき、オアシスの底からは砂が立ち上り、綺麗な

          ss●太陽と月_08

          ss●太陽と月_07

           クトゥルフ神話TRPGシナリオ 「蹂躙するは我が手にて」を題材とした二次創作ssです、御注意。 (https://booth.pm/ja/items/2075651)  ●  ●  ● 「戦争になるんですか?」  セツナがエーリスに問うのを聞いた他の少年兵たちは、背筋が凍った。エーリスは玉座の前で少年兵たちを自由にさせるのが好きだったので、彼等が追い掛けっこをしていても何も言わなかったが、この時は全員が脚を止めて、玉座の方を凝視していた。  正確には、玉座の横で胡坐

          ss●太陽と月_07

          ss●太陽と月_06

           クトゥルフ神話TRPGシナリオ 「蹂躙するは我が手にて」を題材とした二次創作ssです、御注意。 (https://booth.pm/ja/items/2075651)  ●  ●  ●  洞窟について考える時間は、不思議な時間だった。  誰しも、自分が怖いと感じるものについて、考えたり口に出したりしないようにしているのだ。自分が怖かったのは、洞窟そのものというより、恐怖を思い出すことだったのかもしれない。  と、セツナは考えた。  あの日エーリスと訪れた洞窟は、初め

          ss●太陽と月_06

          ss●太陽と月_05

           クトゥルフ神話TRPGシナリオ 「蹂躙するは我が手にて」を題材とした二次創作ssです、御注意。 (https://booth.pm/ja/items/2075651)  ●  ●  ● 「セツナ・デューン・オム=ヴィクトリア」  エーリスは小首を傾げて、味わうように呟いた。 「セツナ、不思議な響きの名前だ、是非ともご両親に由来を聞いてみて欲しい、淳天の言葉に似ているけれど少し違うね」 「……そう、なんですか」 「淳天には興味がある、私の父はあの国が大好きなんだよ。時

          ss●太陽と月_05

          ss●太陽と月_04

           クトゥルフ神話TRPGシナリオ 「蹂躙するは我が手にて」を題材とした二次創作ssです、御注意。 (https://booth.pm/ja/items/2075651)  ●  ●  ●  門廻りに辿り着くと、既に大分暗かった。  暗がりの中で、セツナの砂色の髪はよく映えて見えた。一方、エーリスの黒髪は闇に溶け込んでいたので、金色の髪留めだけが宙に浮いているように見えた。彼は軍人がするように、左側の前髪を鎖骨あたりまで長く伸ばしている。  門廻りまで到着すると、セツ

          ss●太陽と月_04

          ss●太陽と月_03

           クトゥルフ神話TRPGシナリオ 「蹂躙するは我が手にて」を題材とした二次創作ssです、御注意。 (https://booth.pm/ja/items/2075651)  ●  ●  ●  エーリスが近付いてくると、果物で作った炭のような不思議な香りがした。城下町に居を構える家庭以外で、香を焚く家庭はそう多くない。 (偉い人なんだ)  幼いセツナはぱっと顔を上げて、緊張した面持ちになった。  そんなセツナの様子を気に留めず、エーリスは小石を払ってから隣に腰掛ける。セツ

          ss●太陽と月_03

          ss●太陽と月_02

           クトゥルフ神話TRPGシナリオ 「蹂躙するは我が手にて」を題材とした二次創作ssです、御注意。 (https://booth.pm/ja/items/2075651)  ●  ●  ●  エーリスとセツナが初めて出逢ったのは、ベバイオン帝国のとある洞窟である。洞窟の空気は一年中澄んでいて、帝国では数少ない避暑地であり、それだけでも特別な場所だが、この帝国では更に特別な意味を持つ。  帝国の兵士たちは、この洞窟で、帝国の為に戦い続けることを誓う。祈るための手を捨てる代

          ss●太陽と月_02

          ss●アネモネが舞った時:後編

           クトゥルフ神話TRPGシナリオ 「蹂躙するは我が手にて」を題材とした二次創作ssです、御注意。 (https://booth.pm/ja/items/2075651) 「花に乞い願う」アンサーSS 「アネモネが舞った時」後編  セツナ視点、問題があれば修正/削除を行います。  ●  ●  ●   俺がルールを覚えて、それなりに遊べるようになってきた頃、皇女様は嬉々として新しいボードゲームを取り出した。皇女様はボードゲームのルールをいくつ覚えているのだろう、ひとつで

          ss●アネモネが舞った時:後編

          ss●アネモネが舞った時:中編

           クトゥルフ神話TRPGシナリオ 「蹂躙するは我が手にて」を題材とした二次創作ssです、御注意。 (https://booth.pm/ja/items/2075651) 「花に乞い願う」アンサーSS 「アネモネが舞った時」中編  セツナ視点、問題があれば修正/削除を行います。  ●  ●  ●   俺の視界の隅で、日傘が海の上に揺蕩っていた。  ハッとして、少女に声を掛ける。 「怪我…は…」   聞くより見たほうが早いだろう、と思ったらそれ以上の言葉が出てこなかっ

          ss●アネモネが舞った時:中編

          ss●太陽と月_01

          クトゥルフ神話TRPGシナリオ 「蹂躙するは我が手にて」を題材とした二次創作ssです、御注意。 (https://booth.pm/ja/items/2075651)  ●  ●  ●  太陽か月かで喩えるなら、彼のことは全員が月に喩える。  少なくとも、ベバイオン帝国史にはそう書かれるだろう。  彼…―――――先代帝王エーリスは、湧き立つ生彩の無い代わりに、無遠慮に砂漠の民を照り付けるような横風さも持ち合わせていなかった。帝王家の誰もが内外問わず振り翳してきた権力を

          ss●太陽と月_01